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てゃにぇてゅ

作者: 一草 箱

 とある脳科学者が、ある偉大な発見をした。「てゃにぇてゅ」という言葉を聞く事で脳の成長が促進する、というものである。

 しかしこの脳科学者、この発見を公表しなかった。実は脳科学者の奥さんは妊娠しており、もうすぐ子供が生まれるのだが、そこで自分の子供にだけ「てゃにぇてゅ」と聞かせて優秀な子を育てようという魂胆であった。

 さて、そこで効率よく子供に「てゃにぇてゅ」と聞かせるにはどうすればいいか?これに対して脳科学者が思いついたのが、子供の名前を「てゃにぇてゅ」にすることだった。名前にしてしまえば常に耳にすることになる。


 こうして、脳科学者は生まれた息子を「てゃにぇてゅ」と命名した。

 てゃにぇてゅは、すくすくと成長し、勤勉で頭の回転がとても速く、多くの人に慕われ、優秀に育っていった。


 そして、てゃにぇてゅはついに20歳の誕生日を迎えた。脳科学者は息子が立派に育って鼻高々であったが、突然、てゃにぇてゅは父の目の前に来て、頭を深々と下げ、「父さん、一生のお願いがあります」と言いだした。

 脳科学者は、こんなに立派に育った息子がこんなに頼んでいるのだ、どんな願いでも聞いてやろうと思い、「何でも言ってみなさい」と応えた。

 そして、てゃにぇてゅはこう言った。

「父さん、僕は改名したいんです」

 脳科学者もこれには流石に狼狽した。

「ちょっと待て、何を言いだすんだ。前にも言ったが、お前がそこまで優秀になったのはなぁ、その名前のおかげなんだぞ。それに、脳の成長は何も20で止まるものではない。その名前でいれば、お前はもっと優秀になれるんだぞ。一体、何だってそんな事を言いだすんだ?」

 てゃにぇてゅは静かに口を開いた。

「父さん…この名前は…」

 脳科学者は息子が何を言いだすのか気が気でなく、思わず唾を飲み込んだ。

 そして、てゃにぇてゅはそれを言った。


「言いにくいんです」

「確かに」


 こうして、てゃにぇてゅは改名した。

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