旅立ち
夢から醒めると、ぼくは勇者になっていた。夢の中には綺麗な女性がいた。辺りは白に包まれた空間で、その空間の中で、ぼくは女性に勇者だと言われた。世界は魔界の脅威に晒されていて、近々勇者の神託を受けるものが現れるだろう、ということらしかった。
夢から醒めたぼくはベットから降り、幼なじみの元へと向かった。
よく晴れた冬の日のことだった。
「おっ、ダイン! どうしたんだよお前、そんな嬉しそうな顔して」
因みにぼくは至って無表情。
「勇者になった」
「まじかよ⁉︎ じゃあ、早速旅に出ないとな! 俺の腕が鳴るぜ!」
こいつはバカだが力は強い。剣の稽古はしているようだが、つくのは技術ではなくいつも力だけだった。連れて行けばなにかの足しにはなるだろう。ぼくが勇者だということを二つ返事で信じるほどだ。きっとぼくの言うことは全て鵜呑みにして、ぼくに付き従うに違いない。
そう思ったぼくは、こいつを旅に連れて行くことにした。
ぼくの住んでいる村長にそのことを話すと、村長もまた二つ返事でぼくの言うことを信じた。どうやらこの村にはバカしかいないらしい。これも神託の効果かも知れないが。
親に村長から旅の許可を得た事を話すと親はぼくを少し疑いながらも、村長には逆らえないということで、この家に隠してあった財宝をくれた。
日が昇り寒さが和らいで来た昼のことだった。
ぼくは幼なじみでバカで力の強いガイと旅に出るのだった。
「勇者になれよ! 俺が全力でサポートするからな!」
「分かったよ」
冬の寒さなど忘れるほどの暑さだった。ガイは麻で織ったような半袖を着ていた。