幸せな家庭
短編です
父親は厳格な人だった。高校生になっても門限は18時。一分でも過ぎると、頬を平手打ちされた。勉強ができても、出来なくても、平手打ちをされ、テストは100点以外は認めてもらえなかった。
母は、父の暴力に耐えかねて、俺が大学に上がるころに出ていった。今となっては、大学まで入れてくれたことには感謝するけど、息子を置いて逃げるのが親のやることか?と少々疑問を持つ。
俺はあんな父親にはならないと、決めていた。絶対に。
会社に就職後、俺は結婚した。息子も生まれて、夫婦生活も、親子関係も良好だ。
門限だって、設定はしているけど、その時間を越えたからって平手打ちなんかしない。息子が理解できるまで説教するだけだ。
「うちの門限は何時だった?」
「17時です・・・」
「そうだ、お前はまだ小学生なんだから、遅い時間に家にいないと、俺たち親は心配になるんだよ。わかるか?」
「はい・・・」
息子は物わかりの良い子で、俺は今までに激高するような説教はしていない。親父のような理不尽な怒り方はしないから、うちは幸せな家庭だ。
もちろん、妻にだって、暴力は働かない。でも、妻は要領が悪い。
「あ、また洗濯物」
「あぁ、ごめんなさい」
「まったく、大人なんだから、ちゃんとしないと」
「そうですね、すみません」
まぁ妻もかなり貞淑なほうだと思う。俺の言うことをちゃんと聞く。うちの母とは大違いだ。
ある日、息子が宿題を済ませると言って自室に行ったと思ったら、タブレットを使って遊んでいた。今まで嘘なんてついたことがなかったのに、なぜそんな親を悲しませるような嘘をつくんだ。俺の中の何かがぷつんと途切れたような気がした。
「おい!何をやっている!」
自分でも驚くほど、部屋を震わせるような大声がでた。俺、こんな風に大きな声が出せるんだなぁ、なんて、少し冷静な自分もいたが、今はそんなことどうでも良い。息子が俺に嘘をついていたことの方が重大だ。
「なぜ嘘をついた!宿題するんだろう!?なぜこんなもので遊んでる!!」
息子からタブレットを取り上げる。画面にはなにやらキャラクターが描かれていた。
小学生とはいえ、もう中学年にもなるのに、いまだにアニメのキャラクターにハマっているのか!?そう言えば、妻が子育て中、料理や手が離せない時にアニメを見せていたな。やはり悪影響だったか。このままオタクになってしまったら、この子の未来はお先真っ暗だ!
「いいか!?こんな、ガキの見るものをいつまでも見ていては立派な大人になれないぞ!!」
「ちが、それ学校の・・・」
「言い訳をするな!これは没収、いや、二度と使えなくする!お前が勉強を頑張るためにタブレットを与えていたのに、これは重大な裏切りだ!二度と嘘をつくなよ!!」
俺はタブレットを床に叩きつけて、バキバキに割ってやった。息子の顔から血の気が引けていく。これでよくわかっただろう、嘘をつくことがどんなに愚かで、浅ましい行為か。
さて、息子の次は妻にもよく言っておかねばならない。息子の成長の妨げになるようなものを持ち込まない様にしなければ。
あぁ、まったく、俺がちゃんとしないと、この家は崩壊してしまう。俺がこの家を守るんだ。父親の様にはならない。妻にも、俺の母親のように、息子を置き去りにして逃げない様に、息子の成長を最後まで見届けるように、と言い聞かせなくては。
俺はなんてできた男なんだ。みてるか!?親父!お前のような理不尽に厳しいだけの父親は、今の時代では生きていけないんだよ!
——幸せな家庭——
ざまぁみろ!親父!!




