1話 クエストを受けるのは間違っているだろうか
こっちも同時で載せていきます。
良ければ感想、評価をよろしくお願いします
僕には幼馴染がいた。
それも美女三人。
小学校の頃は、毎日のように遊んでいた。放課後になれば自然と集まって、公園に行って、日が暮れるまでくだらないことで笑っていた。
いつも僕の後ろを、当たり前みたいについて来ていたっけ。
……思えば、あの頃が人生の最盛期だったのかもしれない。
それから引っ越して、両親が離婚して、苗字も変わった。
連絡先もいつの間にか消えて、気づけば完全に疎遠になっていた。
そして今日は高校の入学式。
新しい教室の扉を開けた瞬間、ざわめきが耳に入った。
視線の中心。
そこにいたのは――。
「……え」
思わず声が漏れた。
三人。
間違えるはずがない。
昔、毎日一緒にいた幼馴染たち。
けれど、記憶の中の面影はほとんど残っていなかった。
背は伸び、髪は綺麗に整えられ、制服の着こなしすら様になっている。
そして何より――綺麗だった。
教室の中心で自然に人が集まり、笑顔が生まれている。
入学初日だというのに、もう空気が出来上がっていた。
姉妹みたいに仲良く並ぶ三人。
そして、その隣にいるもう一人の少女。
気づけば四人組として、完全にクラスの中心に立っていた。
高嶺の花。
そんな言葉が頭に浮かぶ。
……もう話しかけられない。
彼女達は、雲の上の存在になってしまったから。
僕は静かに視線を逸らし、空いている席に座った。
当然のように、誰とも話さないまま時間が過ぎていく。
小学校の頃は、普通に人と話せていた。
いつからだろう。
コミュニケーションに苦手意識を感じるようになったのは。
気づけば、入学初日は何事もなく終わっていた。
誰とも話さずに。
一人暮らしのマンションの部屋に入る。
鞄を床に置き、そのままベッドへ倒れ込んだ。
天井を見上げる。
「……すごい美人になってたな。」
三人とも。
同じ時間を生きていたはずなのに、まるで別の世界の住人みたいだった
それに比べて俺は友達すらできていない。
このまま三年間ぼっちかもしれない。
住む世界が違う。
そう思うと、胸の奥がじわっと重くなった。
俺は、一体どこで間違えた?
最近のラノベなら、ここでゲームみたいにクエストを受けて、報酬をもらって、強くなれるのに。
なぜ僕はそうじゃない?
「……開けよ。」
思わず呟く。
「開け!クエスト!クエスト!開けよ!」
気づけば叫んでいた。
当然、何も起きない。
当たり前だ。
そんな都合のいいもの――。
ベッドに倒れ込んだ、その瞬間。
視界の中央に、青色の画面が現れた。
クエストを開始しますか?
▶はい
いいえ
「……は?」
瞬きをする。
消えない。
手で払っても、画面はそこにある。
これが妄想でもいい。
どうせ誰も見ていない。
僕は指先を伸ばした。
▶はい
画面が静かに切り替わる。
クエスト1
髪を切れ。
報酬
・ゴールドカード1枚
それだけだった。
「……雑すぎない?」
思わず呟く。
だが、逆にリアルでもある。
妄想にしては都合がいい。
少し考えて、財布を手に取った。
どうせ暇だ。
試してみるか。
外に出て、駅前の美容室の前で立ち止まる。
値段を見る。
カット ¥4200
高い。
普段なら絶対入らない。
帰ろうとした瞬間、画面が追記された。
2000円以上の店舗で切ること。
「圧が強いな……」
小さくため息をついて、扉を開けた。
人生で初めて、ちゃんとした場所で髪を切った。
鏡の前。
整えられた髪。
軽くなった頭。
「……これが、僕?」
髪型が変わっただけで、印象がまるで違う。
その時。
再び青い画面が現れた。
クエストをクリアしました。
報酬を受け取ってください。
受け取る。
一枚のカードが表示された。
金色の縁取り。
中央の文字。
ゴールドカード
効果:視力が2.0向上する
「……え?」
僕の視力は0.1。
半信半疑で呟く。
「使う。」
カードが光り、消えた。
一瞬、視界がぼやける。
眼鏡の度が合わない感覚。
外す。
――世界が、鮮明になった。
遠くの看板の文字。
道路の細かな傷。
空の輪郭。
小学生の頃に見ていた景色にそのまま戻ってきたみたいだった。
「……すげぇ」
思わず笑った。
翌日。
このクエストが本物だと確信した僕は、少しだけ軽い足取りで学校へ向かっていた。
もう決めた。
クエストの言うことは、全部やろう。
そう思った瞬間視界に画面が現れる。
クエスト2
1時間目の1対1自己紹介において、
三人全員を名前呼びする。
「無理だろ。」
即答だった。
コミュ症には厳しすぎる。
心臓が嫌な音を立てる。
だが画面は消えない。
ゆっくりと、次の行が表示された。
難易度:★☆☆☆☆
絶対嘘だ。
僕にとっては最高難易度なんだが。
教室の扉が見える。
その向こうには、雲の上の存在になってしまった幼馴染たちがいる。
僕は深く息を吸った。
そして――扉を開けた。
クエスト2、進行中。




