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【ケース3】伊豆『め』踊り子

日本語において『め』という言葉は色々な活用があり、言葉の後に付けると『貧乏人め』とか『悪党め』などと、相手を非難したり卑しめる言葉になる。

または『私めにお任せ下さい』などのように、自分を下げる形として使われる場合もある。


後は、『女』という漢字を『め』と読ませる場合もあり『端女』や『采女』などの例がある。

更に形容詞に『め』を付けると形容詞の言葉を若干強調する事になる。例を挙げると『大きい』の場合は『大きめ』となり、『辛い』の場合は『辛め』となる。


なので『ヤバめ』という言葉は、ちょっとだけヤバイという意味だと思う。

そう、若者言葉もちゃんと活用形の基本を踏んでいるのだ。


それら以外にも、マ行下一段活用として動詞+『め』で連用形となる。

例を挙げると『進む』の活用形は


進め(すすめ):連用形

進める(すすめる):終止形(言い切り)

進めて(すすめて):連用形+接続助詞「て」

進めない(すすめない):未然形+助動詞「ない」

進めよう(すすめよう):未然形+助動詞「よう」

となる。


なので伊豆『め』踊り子は運用形となりそうだが、そもそも『伊豆』は動詞ではないのでこの解釈は間違いとなる。

当然『伊豆』は形容詞でもないので若干の強調でもない。まぁ、『伊豆さん』という名の相手を卑下する言葉として名前+『め』で使われる事もあるだろうが今回は違う。


となると伊豆『め』はどのケースになるのかというと、女性を表すケースだ。つまり漢字で書くと『伊豆女』である。

うん、なんか微妙に似たような言葉に『小豆』があるな。『小豆女』ってあずきを売り歩く行商人の事なのだろうか?


で、伊豆の女と言えば『伊豆の踊り子』である。ただ『女』というには彼女は少々幼過ぎる。なんせ物語内の彼女の年齢は14歳らしいのだ。

もっとも今の感覚だと14歳はかなり大人寄りに近いと感じられるだろうが、これが書かれた時期って大正時代の終わり頃だからね。


なので14歳は立派な労働年齢ではあったけど、女性としてはまだまだ子供扱いされていたはずです。

いや、昔は結構女の子って早婚だったらしいから14歳はそうでもないのか?


まぁ、なんにしても現代のロリコンたちにとっては『伊豆の踊り子』はバイブル的存在だろう。

なんせ文中に少女の入浴シーンがあるんだぜっ!これは大正時代のピュアな男の子たちには刺激が強過ぎだろうっ!


とは言え、現代は無数のエロ情報が氾濫しているからロリコンたちはそもそも文学作品なんか読まないかもね。

あらら、しょうがねぇやつらだなぁ。そんなんだから盗撮なんかするようになるんだよっ!


で、話が反れたので戻すが、『女』という漢字の読みには『おんな』と『女』以外にも『め』と『おみな』があるらしい。

注:『海女 あま』という漢字は最初に呼び名があって後で漢字を当てはめたと思われる。なので『海女』はセットで『あま』と読む事になっているはずだ。


更に『女』を『め』と読ませる言葉は大抵古語が起源のはず。なので春日神社・大原野神社で神に奉仕する未婚の女性の事は『斎女 いつきめ』と呼ぶ(他の神社では『さいじょ』と読むらしい)し、古文などでは若い女性を親しんで呼ぶ言葉として『郎女 いらつめ』などがある。


また、宮中の行事である大嘗祭 (だいじょうさい)や鎮魂祭などで庶務を担った女官たちは何故か『猿女 さるめ』と呼ばれていたらしい。

まぁ、この辺りは猿というものに対する現代と古代の違いがあるはずなので、昔は決して貶める言葉ではなかったのだろう。


で、現代でも京都辺りでは大原女 (おおはらめ)というその昔、柴 (しば)を頭に乗せて大原から京の町へ行商に出かけた女性の事を指す言葉がある。

また白川女 (しらかわめ)は北白川から京の町で四季の草花を売り歩いた女性指す言葉だ。更には京都の西郊にある桂という地から桂川の鮎や飴を町に売りに来る女性の事を桂女かつらめと言ったらしい。


そして采女 (うねめ)は、古代日本の朝廷において天皇や皇后に仕えた女官の役職名らしい。

尚『女』を『め』と呼ばせる言葉で忘れていけないのが、若い女性の事を指す場合が多い『乙女 おとめ』であろう。


このように『め』という言葉が語尾に付いた場合、その意味はその土地の女性を表している事が多い。なので『伊豆『め』踊り子』とは、伊豆にいる踊り子となるはずだ。


この結論を持って今回の話を終わりたいと思う。御清読ありがとうございました。


-伊豆『め』踊り子 完-

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