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第46話「紅蓮の聖域」

 ちょうどその頃。

 マリナとベラの戦い。

 左腕を黒い光の槍へと変化させたベラは、マリナに向けて黒い一筋の閃光を放つ。

「ごめんね……マリナ姉……」

 猛毒を含んだ一点集中の光線でマリナの衝撃波のバリアを撃ち抜こうというのだ。

 黒い光は空気を震わせ、触れた木々や地面の草木を枯れさせていく。

 Toxic Accelerationトキシックアクセラレーションの水流を防ぎ続けるマリナにその黒い光が迫る。

 その威力は今までのベラのものとは異なり、明確にマリナを倒すための一撃だ。

 黒い閃光が彼女を貫いた瞬間、毒と彼女の炎が混ざり、大爆発を起こす。


「マリナ姉……ごめん……でも……」

 ベラは悲しそうな声で、呟く。

『ベラ、こっち来てごらん。ほら、カラフルな蝶々! 派手好きなベラみたいね♪」

 在りし日のマリナの声が聞こえてくる。

 かつて、彼女が自分に見せてくれたもの。その思い出が、今のベラを苛む。

「でも……あたしは……あたしは“弱い妹”のままじゃいられないんだ……!」

 爆風が彼女のカラフルな髪を揺らし、悲し気なその呟きをかき消していく。

 ベラは光線を放つ力を弱めた。


 だがその時だった。


「戦場で感傷に浸るだなんて、フォスター家失格。……お父様に追放されますわよ、ベラ」

 その声は、先ほどまでマリナがいてたった今爆発が起きた場所ではない、太い木の枝の上からだった。

 彼女に、ベラの一撃によるダメージと思わしき傷はない。

「分身自爆!? こんな子供騙しに今さら引っかかるなんて!」

 それを視認した次の瞬間、マリナは衝撃波で自分を超加速させてベラへと突っ込んてくる。

 すぐさま左腕を元に戻し、毒で迎撃しようと手を構えるベラだが、それよりも早く腹部に衝撃が走る。


「がはっ……!」

 衝撃波を纏ったマリナの拳がベラの体を捉えたのだ。

(……くっ、接近戦に持ち込まれた!)

「"Poison(ポイズン) Fang(ファング)"!!」

 ベラは爪に毒を宿してマリナを切りつけるが宙がえりで躱され、再び距離を詰めたマリナの拳、蹴りの連続攻撃を受ける。

「うぐぅっ! うああっ!」

 攻撃を受けたベラから苦し気な声が漏れる。

 だが……。

 ベラは口元に笑みを浮かべる。


「いいねぇマリナ姉……。やっぱこうでなくちゃ!」

 次の瞬間、ベラの体から黒い霧が放出され、マリナは一度距離を取る。

 マリナが衝撃波を周りに放出しているように、ベラも自身の周囲に毒の霧を発生させたのだ。



「…………」

「…………」

 2人は無言で視線を交わす。どちらも笑みを浮かべている。

 まるで戦いを楽しんでいるかのようだ。

 森に僅かな静寂が戻る。

 だが、次の瞬間。

 同時に2人が相手に向かって行き、森に再び突風が吹く。


「はあっ!!」

 マリナは衝撃波を宿した拳で、ベラは毒の爪で互いを攻撃し合う。

 衝撃波の拳と毒の爪がぶつかり合い、辺りの木々がザワザワと揺れる。

 拳の応酬は近接戦闘を得意とするマリナが圧倒的に優位かと思われたが……。


「あーしはあの頃までとは違うよ! マリナ姉!! Scorpion(スコーピオン) Tail(テイル)!」

 5本の爪の先を手の中央に集めると、黒く太い光による高速連撃をマリナに向かって繰り出す。

 衝撃波を纏った拳で弾こうとするも、その素早く何度も繰り出される連撃に対処が追いつかず、距離を取らざるを得ないマリナ。


「ほらほらいくよっ!」

 Scorpion Tailによる連撃を繰り出しながら、左手からは毒の光弾を放つ。

 さらには毒の沼から襲い来るToxic Accelerationによって、マリナに反撃の隙を与えない。


 森は黒い光と水、霧に包まれていく。

 マリナは直線的な攻撃も、毒の水流による流動的な攻撃もひらひらと躱していく。

「さっすがマリナ姉! でも、いつまでも避けられるかな!?」

 ベラは躱し続けるマリナを試すように叫ぶが、すぐに何かに気付いたように左手で毒の水流を用いた防御壁を張った。

「避けるだけじゃない。ベラ、あなたこそいつまで避けられるかしら?」

 マリナは躱しながら両手から炎の光弾をベラに連射する。


 一進一退の攻防が繰り広げられる。

 ベラはマリナとの久しぶりの戦闘に夢中で気が付かなかった。

 ベラの攻撃を躱しているマリナの動きが、まるで大きく円を描くように周囲を回っていることを。


「ベラ……わたくしは間違っていましたわ」

「え? 急に何?」

 足を止めて衝撃波で攻撃を受け続けるマリナを警戒しつつも、攻撃の手は休めずにベラが聞き返す。


「森を巻き込まずにあなたを倒すことなど最初から不可能だった、ということ。強くなったわね、ベラ」

 そう呟くと同時にマリナの周囲に炎が噴き出す。

「な、何する気……!? まさか森ごと燃やす決心でも着いた?」

 一瞬驚きながらも、全力で戦えるかもしれないことに僅かに笑みを浮かべるベラ。

 マリナは首を横に振って言う。

 この森をこれ以上傷つけることはしたくない、だから少し全力を出せる場所で一気にケリをつける、と。



 マリナの体からあふれ出た炎が地面をの一部を伝っていく。

 それは先ほどマリナが円を描くように躱していた時に通った場所だった。

「こ、これは……なに?」

 ベラは左右に広がっていく火の手を目で追いかけていく。

 そしてあっという間に炎が自分とマリナを囲うように燃え広がったことに気付いた。

 ただ燃え広がっただけではない、マリナが上空に向かって手をかざすと炎の勢いは一気に高さを増し、森の木々よりも高い位置にまでなった。

 上空の炎に気付いたグランローズが炎を消そうとするが、その熱によって手が出せないようだ。


「これで少しは全力を出せますわね。わたくしのリング、"Crimson(クリムゾン) Sanctuary(サンクチュアリ)"へようこそ、ベラ。悪いけどお遊びはここまでよ」

 マリナは辺り一帯を炎で囲むことで、そこをフィールドとしたのだ。

 本来この技は相手を閉じ込めてそのまま焼き尽くす技なのだが、今回は自分もその中に入ることで周囲と隔絶されたマリナとベラだけの戦闘空間にしたのである。

 ベラはこの技を見るのは初めてだった。

 だが、マリナが閉じ込めて倒すのではなく最後まで戦うことを選んでくれたことに気付き、喜びと感謝を覚えていた。


「さぁベラ。周囲はわたくしの炎、毒の沼も炎の外、そしてこの狭さではわたくしの得意な近接戦闘がメイン……。それでもやる気?」

「……アハハハッ! サイコーだよ、マリナ姉! そういうとこも大好き! やるに決まってんじゃん! ピンチの方が燃えるっしょ♪」

 ベラは破顔一笑すると、両手から毒を滴らせる。

 そんな妹に、マリナは微かな笑みを零すのだった。



 サイラスの指令を受けて合流場所へと向かっていたナタリーたちグレイトバース軍に、連れられているルル。

 すると凄まじい轟音と共に、少し離れた森の上空に巨大な円形の炎の柱が形成される。

 その瞬間、離れているその場所にまで凄まじい熱風と爆音が襲い掛かってきた。

 グレイトバースの兵士たちは、突然のことに思わずうろたえる。

 最強国家の兵士を名乗っているとはいえ、そのような光景を見るのは初めてだったのだ。


「な、なんだ!? 何が起きている!?」

「ナタリー様! あれは……!」

 そんな兵士に、ナタリーは冷静に返答する。

「えぇ。あれは私の姉、……いいえ、元姉の反逆者マリナ・フォスターによるもので間違い、ありません」

 彼女の知る限り、あれほどの規模は初めてのことではあったが。


(マリナちゃんが……ベラちゃんと戦ってる……。大丈夫、マリナちゃんならきっと……)

 彼女が負けるわけがない、とルルは信じていた。

 だから……今は前を向いて歩くしかない。


「行きますよ」

 視線を上空から、前方へと戻したナタリーはさして興味なさそうに呟いて歩を進める。

 呆気に取られていた兵士たちだったが、その言葉に我に帰る。

 彼らに連れられてルルも歩き出した。


(あれほどの炎を……。それなのになぜあなたは試練に失敗したのです……?)

 前方だけを見据えながら、ナタリーは心の中で呟き目を細めるのだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

次回もよろしくお願いします!

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