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第42話「勇者と従者、王子と対峙す」

 一方その頃。

 ファブリスとエマは、大斧を操るサイラスと戦闘を続けていた。

 だがその大斧を軽々と振り回す怪力に、ファブリスはなかなか近づくことができない。

 サイラスの一撃が地面を抉るたび、空気が震えた。

 まるで大地そのものが彼に跪いているかのようだった。

(あんな一撃、まともにもらったら一撃でダウンだ……)


「なっはっはっはっは! 勇者とやらの実力はその程度か?」

 サイラスはその巨躯に見合わない俊敏さでファブリスに接近すると、大斧を振り下ろす。

「くっ……!」

 ファブリスはすれすれで避けたが……地面に叩きつけられた一撃が炸裂し、猛烈な地面の揺れに体勢を崩しかける。

 隙あり、と言ったように口の端を吊り上げると、追撃を叩きこもうとする。


「させません!」

 その叫びと共に、サイラスとファブリスの間の地面を隆起させるエマ。

 土の壁を形成してサイラスの一撃からファブリスを庇う。

「ふん、小癪な……!」

 サイラスは巨大な斧を振り回し、壁を叩きつける。

 エマがとっさに作り出した土の壁はその攻撃に対してはあまり意味を成しておらず、ただの一撃で粉砕されてしまう。

 だが、その僅かな間にファブリスは剣に魔力を込めていた。

 彼の持つ勇者の剣が眩い光を放つ。


「助かったぜ、エマ! いくぞ筋肉野郎! くらえ、『シャイニングアタック!!』」

 剣先をサイラスに向け、突きを行うファブリス。

 それと同時に光の一撃が、サイラスに襲い掛かった。

「ぬぅ!」

 サイラスは大斧でそれを防ぐが、ファブリスはそのまま剣を振り上げた。


 マリナの兄であるということは現在の自分よりも、圧倒的な強者であることは間違いない。

 そう考えたファブリスは、相手の出方を見る前に強力な攻撃を叩きこんで一気に勝負を決めようと考えたのだ。

「うおぉぉお! 『シャイニングスラッシュッシュ!』」

 振り下ろされたファブリスの光の斬撃が2つに増え、サイラスに襲い掛かる。

 だが……。


「ずいぶんと軽い剣だ。トレーニングにもならん!」

「っ!?」

 その一撃も大斧で軽くいなされてしまう。

 サイラスはファブリスの腹部に鋭い蹴りを入れて、彼の体を弾き飛ばしてしまう。

「ぐはっ!」

「ファブリスさん!」

 うめき声をあげるファブリスに視線を向けるエマだが、そんな彼女にサイラスが迫る。


 斧による一撃を跳躍して躱したエマ。

 彼女の着地に合わせて攻撃を加えようとしたサイラスだが、地面が隆起して彼女の足場を形成する。

「ククク、反逆者の召使いの分際でフォスター家の王子たるこの俺を見下ろすとは……不敬だぞ?」

 形成された足場に立つエマを見上げながら、サイラスは不敵な笑みを浮かべる。

 言葉とは裏腹に怒りは感じられず、むしろどこか余裕すら感じさせる。


「マリナ様と国を出た時から……私はすでにグレイトバースの人間ではありません。ですからあなたが王子であろうとなかろうと、私には関係ない」

 静かだが強い意志を感じさせる口調でそう言うと、エマは釵状の二対の武器を構えてサイラスを見据える。

 ファブリスも体を起こすと、呼吸を整えて剣を構えた。



「ククク、その目、その言葉、その意志……。やはりお前は私の召使いになるべきだ。マリナを捨て、私のモノになるのだエマよ」

 サイラスは口角を吊り上げると、大斧を握る手に力を込めた。

「私が仕えるのは未来永劫マリナ様ただ一人。決してあなたではありません」

「ほぉ、これは手厳しい。だが、お前が俺のモノになるのも時間の問題だ」

 エマの断固たる誓いに対し、サイラスは余裕を崩さない。

 まるですでに定められたことであるかのように語る。

 一瞬だけ、エマの手が震えた。だがその震えは恐怖ではない。

 誇りを傷つけられた怒りを、掌に押し込めているだけだった。

 2人のにらみ合いが続く。

 すると……。


「へっ、エマから聞いたんだけどよ。あんたの弟のマシューは、実の姉であるマリナに結婚を迫ったらしいな。それも強引に。それに……あんたも今同じことしてる」

 口を開いたのはファブリスだった。

 サイラスは彼に視線を移し、エマに向けるものとは違い、心底不快そうな表情を浮かべる。

「……何が言いたい?」

 低く唸るような声でサイラスが問うと、ファブリスは鼻で笑って見せた。

「フォスター家の男ってのは、嫌がってる女に無理やり迫るような礼儀知らずのクズ野郎しかいないのか?」

 挑発的な口調に対し、サイラスの眉間に皺が寄る。

 ファブリスの言葉に、肩を震わせて怒りを顕わにしていた。


 だが、次の瞬間サイラスは大きな笑い声をあげた。

「なっはっはっはっは! まさかフォスター家の王族に向けてそんな口を叩く輩がいるとはな。……気に入ったぞ、勇者。貴様は私自らの手であの世へ送ってやろう」

 怒りを通り越し、最早楽しいとすら感じているようなサイラスの表情。


「どんだけ偉かろうが強かろうが、女を泣かす奴だけは絶対に許さねぇ」

 ファブリスは鋭い眼差しで剣を向ける。


 ファブリスとエマはお互いに視線を合わせるとうなずいた。

 黒雲を見てからサイラスと出会う前での間、2人は僅かながら戦闘になった場合の話し合いをしていたのだ。

 何度かグレイトバースで実際に見たことがあるため、黒雲を見た瞬間に、あれはサイラスが発生させたものだと直感でわかったエマ。

 もしもマリナたちと再会する前に彼と遭遇した時のために、ファブリスに情報を共有していたのだ。


「何やら企んでいるようだが……しょせんは無駄な足搔き」

 不敵に笑うサイラスだが、ファブリスとエマは動じることなくサイラスを見据えた。

「無駄かどうかはやってみてからにしろっての」

「マリナ様たちに合流するためにも、ここは押し通らせていただきます!」

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

次回もよろしくお願いします!

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