第30話「輝け、ミラクル・ルル! ~星の光が導く正義~」
「おじさんたち……。絶対に許さないからね!」
マリナは離れた木陰から2人を見守っていた。
2人に迫ったケンタウロスたちは斧や槍を手にして、それぞれルルに飛び掛かるが彼女はそれをなんなく躱している。
「あれが……ルル? 普段とはまるで別人ですわ……」
マリナはそう呟くと、エマから聞いた言葉を思い出していた。
『ルルちゃんはアンとチェルシーの光の拘束を一瞬で解くパワーと光弾を避けるスピードを発揮していました……。そして彼女の能力は……』
エマの言葉を思い出しているマリナの目の前で、ルルの体が光に包まれていく。
「"ミラクルスターライト・チェンジアップ♪"」
ルルが元気よく叫ぶと光が広がっていき、ケンタウロスたちは眩しそうに目を背ける。
「変……身……」
目の前の光に圧倒されたマリナが呟く。
光の粒が弾け飛び、ルルの髪先を彩る。
まるで星屑が舞い散るように衣装が形を成し、キラキラとしたリボンとブーツが現れた。
ルルはその中心で眩しいほどの笑顔を浮かべていた。
最後にその光が晴れると、キラキラした可愛らしい衣装を身にまとったルルが立っていた。
「ミラクル・ルル♡スターフォーム!」
ルルは目元でピースをして可愛らしいポーズを取る。
「か、可愛い……」
マリナは口元を手で覆いながら目を輝かせる。
「な、なんだ? あのガキは……!」
ルルの様子を見ていたケンタウロスの1人が驚きの声をあげるが、その隙を見逃さずにルルは一瞬で間合いを詰める。
そして腹部にたった1発のパンチを食らわせると、そのケンタウロスは地面に叩きつけられてしまった。
「ぐはっ……」
それを見た他の3人は驚いたが、すぐにルルを取り囲むように陣形を整える。
「てめぇ! 今なにをしたか知らないが……ただじゃおかねぇ!」
リーダーはそう叫ぶと槍を手にしてルルに迫る。
1人目の攻撃を躱すと2人目が斧を振り下ろしてくるが、それも難なく躱す。
そして3人目のリーダーが槍を突き出してきたところをジャンプで回避し、空中で体を捻って槍を持っているその腕を蹴り上げた。
「ぐわっ!」
腕を蹴り上げられたリーダーは、槍を手放してしまう。
そして空中でクルッと体を回転させると、落下と同時にリーダーの顔面に回し蹴りを叩き込んだ。
「がはっ……」
リーダーはそのまま倒れ込んでしまう。
残る2人が弓矢を放ったが、ルルは放たれた2本の矢を、拳を振るって発動させた突風で矢を軽くたたき落として無効化する。
彼らは、次の矢をつがえる手すら震えていた。
あれほど数で勝っているはずなのに、目の前の少女はまるで星の化身のように輝き、恐怖が彼らの心を縛っていたのだ。
自分たちの攻撃が通じないとわかるや否や、2人は慌ててルルから逃げ出した。
「ま、待てっ! おめぇらっ!!」
リーダーがそう叫ぶが2人が止まることはなく、そのまま逃げ去って行ってしまったのだった。
ケンタウロス2人は気を失っており、残るは地面に倒れているリーダー1人だけになった。
「こ、このガキ……。よ、よくも……」
リーダーはなんとか立ち上がるとルルを睨みつけた後、マリナに向けて突進する。
「こっちの女を人質に取りゃあ……」
「とりゃ~~~っ!」
リーダーがマリナを人質に取ろうとした瞬間、ルルは地面を蹴って飛び上がるとそのままケンタウロスのリーダーに飛び蹴りを食らわせる。
「ぐはっ!!」
ルルの強烈な飛び蹴りをくらったケンタウロスのリーダーはそのまま吹き飛ばされてしまい、泉に水柱を上げながら沈んでしまうのだった。
「……ふぅ」
戦闘を終えて一息ついたルルは変身を解くと、マリナのもとに駆け寄ってその手を握る。
「マリナちゃん! 大丈夫だった?」
ルルが手を差し伸べてくるのを見て、マリナはようやく全身から力が抜けるのを感じた。
本当なら助太刀したかった。
だがマリナは拳を握りしめ、ルルの背中を見届けた。――信じる。
任せて欲しいと言った仲間を信じるのもまた、勇気なのだと。
「ええ、ルル。あなたのおかげで助かりましたわ」
マリナは笑顔でそう答えると、ルルはニッコリと笑った。
倒されていた2人のケンタウロスたちは意識を取り戻していた。
「……う……く……」
リーダーがゆっくりと水から上がってくる。
他の2人もそれに続いて立ち上がる。
そして5人全員が武器を構えて2人を睨んだ。
「まだやるつもりなの? もう諦めて帰ったらどうかな?」
そんなルルの言葉に、リーダーは武器を捨てて両手を上げる。
「降参だ! もう手出しはしねぇ!」
リーダーがそう言うと、他の2人も武器を投げ捨てた。
そして3人はマリナとルルの前に跪く。
「嬢ちゃんたち……いや、お2人さん! この度は本当に申し訳なかった!」
リーダーに続いてケンタウロスは口々にそう謝罪する。
「もういいよ。でも、相手が嫌がってるのに無理やりなんて絶対にダメだから!」
「ああ、肝に銘じておくぜ」
ルルの優しくもはっきりとした口調に、リーダーはもう一度深く頭を下げた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
次回もよろしくお願いします!




