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第26話「始まる4人の旅 ~憧れの水の都を目指して~」

「やっぱりこの辺は穏やかな景色が続いてますねぇ」

 エマは深呼吸をしながら小鳥のさえずりや風に揺られる木々の音を楽しむ。

 ブドウ畑で作業をしている麦わら帽子の農民を見つけ、ファブリスが手を振るとその農民が笑顔で手を振り返してくれる。 

「ふあぁ……。ルル、なんだか眠くなってきたよぉ……」

 心地の良い陽ざしと、のどかな景色にルルがうとうとする。


 ファブリスいわくこの辺りの街道は整備が行き届いており、人通りも多いらしい。

 マリナはふと、道端で花を摘む子供たちを見かける。

 おそらくは先ほどまでマリナたちがいたマルクの子供たちだろう。大人の姿は見えず、子供たちだけであることからも、この道がいかに安全ななのかがわかる。

 道から逸れなければ野生動物や魔物、野盗や山賊に襲われる心配も少ない。

「道を外れるなよ。外れたら道案内の保証はできん。……なぜなら俺は方向音痴だからな!」

 ファブリスが愉快な笑い声を上げる。

 マリナは、自慢するように言われても、と少し呆れたように返すものの同じように笑うのだった。


「今向かってる町は、ヴェラッツィアっていう水の都と呼ばれる海上都市なんだ。対岸まで行けば小舟が出ているから、それで渡ればすぐに町につけるはずだぜ!」

 ファブリスの言葉に、マリナは目を輝かせた。

「まぁ! 噂に聞く、水の都ヴェラッツィア!! 立場上、一生訪れられないと諦めていた場所ですの! まさかこんな形で訪れることができるなんて……!!」

 ヴェラッツィアへ行けることがよほど嬉しいのだろう。

 マリナのテンションは上がりっぱなしだ。

「ふふ、よかったですねマリナ様! 絶対に美しいところですよ! 私も楽しみです~!」

 彼女のテンションに呼応するように、エマもまた嬉しそうに声を上げる。

「ルルは1度行ったことがあるんだけど、着いたら2人ともビックリすると思うなぁ」

 ルルはニコニコとしながら話す。


「楽しみですわね! ……さて、そうと決まれば早く行きましょう!」

 マリナは笑顔でうなずくと、急かすようにファブリスの背中をふざけて押した。

「あっ! ちょっ! 押すなって! もうちょっとの辛抱だから!」

 ファブリスはそんなマリナに戸惑いながらも、楽しそうに笑う。

 その様子を見て、ルルもケラケラと笑いながら、マリナの真似をして軽くファブリスの腕を押す。

「わっ! ルルちゃんっ!? ふぉおっ!? ふ、二人ともぉ……!」

 ファブリスは慌てたふりをして手を振るが、顔は少し照れている。

「ふふ、まったく……」

 エマは呆れたようにため息をつきつつも、優しい目で3人を見守っていた。

(でも……こうして笑っていられる時間があるのは、本当に素敵なことですね)

 そんなエマの想いが伝わるかのように、ファブリスの笑みがさらに和らぎ、マリナもルルも声を上げて笑い出す。

 その空気は自然と4人に広がり、パーティーとしての一体感が深まっていった。



 それから数時間。

 和気あいあいと進んでいると、道から少し逸れたところに大きな木と、その下にベンチを見つけた。

 しばらく歩きっぱなしだったこともあって、少し休憩をしようということになり、4人は腰を下ろす。

「ふぅ……日陰になっていて、心地よいですわね」

「ですね! 風も気持ちいいです!」

 マリナとエマが口々に言う。

「そうだな……。あ、そろそろ昼食にしないか? 遅めだけど、腹減っただろ?」

 ファブリスの提案に、ルルは目を輝かせた。

「うん! ピクニックみたいで楽しいね! ルルは賛成!」

「そうですわね。では、昼食にしましょう」

 マリナもうなずき、4人は準備をして食事を始めるのだった。


「ふぅ、食った食ったぁ~! 俺ちょっとあっちの方でトイレしてくる。すぐ戻る」

 満足げにお腹をポンポンと叩いた後、ファブリスは立ち上がり歩き出した。

「ええ、ではここで待ってますわね」

 マリナはコクッとうなずき、ファブリスを見送る。

「……それにしても本当にのどかなところですわね。平和そのものって感じで……穏やかな気持ちになりますわ」

 マリナが小さな声でつぶやく。

「確かにそうですね! なんだかのんびりしちゃいます。さすが帝国。治安がいいです」

 エマも笑顔でうなずいた。

「アルセィーマ地方は、ロストなんとかに面してる北東地域以外は、どこも治安がいいって聞くよ。帝国は北も南も、東も西も、どこ行っても治安がいいんだって!」

 ルルがニコニコとしながら言う。


 ルルの言うロストなんとか、というのはロストクリムゾングランドのことでしょう、とエマが付け加える。

 このアルセィーマ大陸の北東の海域を挟んだ先にある、真っ赤な地面と真っ赤な植物が特徴的な大陸だ。

 500年前に一度独立国を勝手に宣言した武装国家が誕生した以外は、文明らしい文明もなく、国と呼べるものもない。

 かつても今も、未開拓の部族、強大なモンスター、かつての事件で誕生した無数のアンデッドが跋扈(ばっこ)する、世界屈指の危険地帯である。


「ロストクリムゾングランド……。わたくしもいずれ腕試しに行ってみたいですわ」

 マリナがそう言うと、ルルは首を横に振った。

「うーん、でもあそこは世界中の協議で不介入・上陸禁止になってるから、行っちゃダメなんだよ。それに、あそこはすっごく危ないって聞くし……」

 ルルがそう言うと、マリナは少し残念そうにため息をついた。

「そうなんですのね……残念ですわ」



 と、その時だった。

「うわああああっ!!」

 というファブリスの叫び声が、彼がトイレに向かった森の奥の方から聞こえてきた。

「ファブリスさん!?」

 3人とも立ち上がると、声のした方に視線を向ける。

「マリナ様とルルちゃんはここにいてください。危険があれば知らせますし、大丈夫そうならファブリスさんを連れて戻って来ます」

 エマは駆け出しながら、2人にそう告げる。

「ええ、わかったわ。気を付けて、エマ!」

 マリナがそう言ってうなずくと、ルルもまた心配そうな様子でエマの背中を見送る。


 先日のベルフェゴールの一件のように、またしても何者かの罠の可能性があるため、全員で行動するよりもよいと判断してのことだった。

(この間のような邪悪な気配は感じないけど……)

 マリナは、ファブリスの声のした方に向かって走っていくエマを見つめ、ギュっと手を握るのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

ファブリスに何があったのか!?

次回もよろしくお願いします!

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