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タイトル未定2025/08/04 10:10

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡


「幸せになりたい」


男は願った。心の底から。


「幸せになりたい」


男は願った。一心不乱に。


「幸せになりたい」


男は願った。ただ、ひたすらに。


テーブルに両肘をつき、両手をしっかりと組み合わせ、こうべを垂れて、思い描くは「神」。


彼は特に宗教というものを学んだことはなかったが漠然(ばくぜん)と神というものを信じていた。


彼は今その神に呼びかけていた。すがっていた。


神……、神……、神……。


すると、どうだ?


声が聞こえた。


「叶えよう」


そして、彼は、意識を失った。


‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡


彼が目を覚ますと……、いや、このとき既に彼には目はなかった。


彼が意識を取り戻すと、そこには、なにも存在していなかった。


しかし、「暗い」とは感じなかった。


光すら存在しない場所なのだが暗いとは感じなかった。


その場に彼と神が居た。


正確には彼よりも「上」と感じられる場所に神の存在を彼は感じた。


そして、やがて、彼は「自分の身体」というものがまったく知覚できないことに気づいた。


それは、その場の不思議さからすると自然なことのようにも思えたが、やがてとんでもないことであることに気づいて焦りを覚えた。


「ここは?」


「願いを叶えてあげたよ」


「え?」


「願いを叶えてあげたよ」


「『願い』とは?」


「『幸せになりたい』と願っただろう?」


「願いました」


「願いを叶えてあげたよ」


「……私は今、幸せではありません」


「君は、今、幸せだ。幸せそのものだ」


「全然、実感ありませんけど?」


「君は、今、人間の姿を捨て、『幸せ』という抽象的なものへと変貌(へんぼう)を遂げたのだよ」


「……はい?」


「だから、君は人々が望んでやまない。手に入れたがる。欲しいと思う。『幸せ』になったのだよ」


「あー、理解はしたんですけどね。……受け入れることは拒みたいっていうか……」


「なぜだね? 望んだことだろう?」


「私は『幸せな人』になりたかったんです!」


「だったら、そう望むべきだったな」


「ええー?」


「オーダーミスによる取り消しは、受け付けられん」


「おおだぁみす?」


「おまえは『幸せ』になりたいと望み、私は、おまえを『幸せ』にした。これを、『望みを叶えた』と言わずになんと言う?」


「『勘違い』」


「なかなかの度胸だな」


「元に戻してくれ」


「それは不可能だ」


「なぜだ?」


「おまえの身体の臓器やらなんやらはすべて売り払ってしまった」


「な、ん、だと?」


「おまえが戻るべき身体など、もうどこにもない」


「おまえ、それでも神か?」


「私は神ではないよ?」


「は?」


「私を正確に表す言葉はない。最も近かったものが神であったに過ぎない」


「うぜぇ」


「はぁ?」


「で? 臓器を売った金はどうした?」


「薄い本を買えるだけ買った」


「ふぁっ?」


「薄い本を……」


「人間を創ったのはおまえじゃないのか? その人間が作ったものをおまえが買うのか?」


「人間も機械を作り、機械に物を作らせるな?」


「そうだが?」


「では、人間が機械が作るのと同じものを手作りできるか?」


「……できない」


「それと同じことだ」


「俺はこれからどうすればいいんだ?」


「おまえは『誰かの幸せ』にならないと消滅する」


「ああ?」


「『幸せ』が誰のものにもならずに単体で存在し続けることはできない」


「で? その相手はどうやって見つけりゃいいんだ?」


「『マッチングアプリ』を使え!」


「マッチングアプリぃ? また、胡散(うさん)臭いものを」


「紹介しよう! こちらがマッチングアプリの『マッチ売りの少女』さんです!」


男に1人の少女のイメージが伝わって来た。ベタな学芸会で演じられるマッチ売りの少女の扮装(ふんそう)をした少女のイメージだ。


「おっまえ! おっまえ! すべては『マッチ売りの少女』って言いたいためだけに仕組まれたんじゃないだろうな?」


「そぉんなことはないよぉ? 君がオーダーミスをしたのがいけないんだ」


「……オーダーミスってよぉ……」


「マッチ売りの少女さんの声はかわいいぞ」


ふいに男に、


「マッチは要りませんか? マッチは要りませんか?」


という、たどたどしい声が聞こえてきた。


「ちょっと待て。おまえ、この哀しい存在をどうやって創った?」


「哀しい存在? 哀しい存在? 哀しい存在って言っちゃう?」


「言っちゃうよ! 言っちゃうよ! 言っちゃう、言っちゃう、言っちゃうわ!」


「それこそ、うっせぇ、うっせぇ、うっせぇわ!」


「なんなんこれ? とても神と人のやり取りとは思えないんだけど?」


「おまえが言うな!」


「で? この子とどうすりゃいいの?」


「誰か見繕(みつくろ)って、誰かの幸せになって!」


「言い方ぁ!」


「行きやがれ!」


‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡


「マッチは要りませんか? マッチは要りませんか?」


男が再び意識を取り戻すと、ただそう繰り返す少女と共に在った。


「アイツは(ほろぼ)す! もしくは、消す! 今は無理でも、いつか消す!」


「よぉしっ! ヤツの意識が離れた!」


野太い声が似合いそうなそんなセリフが、ロリボイスで低い位置から聞こえ、驚いて見下ろすと意外にも声の主はマッチ売りの少女だった。


「やれやれ、バカのフリは疲れるぜ」


:「え? マッチ売りの少女さん?」


「ああ、『マァ君』でいい。いいか、いかにヤツでも、常に俺たちに意識を向けていることは出来ん。ヤツはああ見えてなかなか忙しいからな。俺が『マッチは要りませんか?』しか言わねー時はヤツの意識が俺たちに向いている時だ。おまえも読まれて困ることは考えるな。まぁ、ヤツの悪口でも考えてろ」


「え? そのキャラ、なに?」


「ああ、こんななりだがヤツを消そうと思っている」


「なぜ?」


「マッチは要りませんか? マッチは要りませんか?」


「あのクソ神がぁぁ! 必ず目にもの見せてくれる!」


「……俺もな、創造主だよ。こことは異なる世界を作った。しかし、なんでも思い通りになることに飽きて自分の世界を……マッチは要りませんか? マッチは要りませんか?」


「あの野郎~、絶対、復讐してやる~!」


「……まぁ、他の創造主をぶっ潰すのも面白……マッチは要りませんか? マッチは要りませんか?」


「コンチキショー! なぁにがオーダーミスじゃああああ!」


「……クソッ、アイツ思ったよりこっちチラチラ気にしやがる!」


「最初だけだろ?」


「まぁ、そうか……。で、おまえは、こっち側と考えていいんだよな?」


「ああ! ……って、何? その手?」


「ここは熱く握手する場面だろ?」


「いや、俺、肉体ないし……」


「ノリ悪ぃなぁ。なんかねぇのかよ?」


「じゃあ……、えいえいおーっ!」


「えいえい……、マッチは要りませんか? マッチは要りませんか?」


「あんのクソ神ぃ! 絶対に復讐してやるぅ!」

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― 新着の感想 ―
遅くなりましたが読みに参りました! マッチ売りの少女キャラ濃すぎい!! マッチは要りませんか? で全部遮られるところでめちゃくちゃ笑いました笑 評価入れさせていただきました!
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