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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第6章 あの子のお母さんもAV女優!?
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瑞希と彩奈のオタ活サマー 4話

「次はー上野ー、上野ー。」


私たちは電車で渋谷から上野に向かいます。

実は私は外出はあまりしないので東京住みのくせに初めて上野に来ました。


そして、電車では座れる席はまばらだったので私と彩奈ちゃんは別の席に座っています。


彩奈ちゃんは距離感の作り方が本当に絶妙です。

ずっとコミュニケーションをとる訳でなく私はのんびりとTikTokを見ることが出来ました。


「えっほえっほ…伝えなきゃ。」


妙に頭に残る動画を見てしまいました。

フクロウが二足歩行で走ってるのです。

それでなんかどうでもいい事を伝える健気さを表現する音声が入っていて、とても癒されてます。


私はふと前を向くと彩奈ちゃんは私の顔を見てにんまりとしてました。


そして、上野に着いたことに気がついたので急いで電車をおります。


………。

やばい、独り言聞かれてたよね。


「私もその動画好きー!なんか口ずさんじゃうよね!」

「そうなの!ネットってこういうのばっか流行るよね〜。」


彩奈ちゃん可愛いから、独り言とか言わなそうです。

こういう時に私の奇行を受容してくれるから彩奈ちゃんは安心します。


「私なんかさー、アニメのジョジョ見てからいっつも独り言言うよ〜。…螺旋階段…カブトムシ…廃墟の街…イチジクのタルト!…カブトムシ。ってね。」


思ったよりもニッチなセリフで吹き出しました。

確か…6部のラスボスのプッチ神父という人物が中盤で呟いていた14の言葉です。

妙にカブトムシを4回くらい言うところが特徴なんです。


「おお、いい反応!やっぱジョジョラーは最高だね!あとで一緒にジョジョ立ちする?」

「は…恥ずかしいから大丈夫。」


多分彩奈ちゃんは私の50倍くらいはジョジョが好きなのかもしれません。

わたしは意外とセリフを鮮明に覚えられるほど頭は良くないのです。


気がつくと、上野にはふたつの長蛇の列が出来てました。

1つが美術館に向かうための列であり、2つ目は上野動物園への列です。

そうか、ここに並ぶのかな?

そんなことを思っていましたが違ったみたいです。


「よーし!まずは上野東照宮でも行きましょ!」

「ふえ?」

「旅に出る時はお参りはしていくもんよ!行くってだけでもいい事ありそうだし。」


私は言われるがまま歩いていきます。

すると、金箔のある宮殿が目の前にありました。


「すごい。」


語彙力の欠けらも無い感想ですが、わたしは誰かとどこかへ行くこと自体が滅多になかったので宮殿の雰囲気に圧倒されてました。


特に外国人たちは物珍しいのかたくさん写真を撮ってました。


「Excuse,me?」


すると、彩奈ちゃんは突然英語で外国人に話しかけます。

何を言っているのか分かりません。

しかし、とても流暢な英語を話していて私は唖然としてしまいました。


「あはは!Thanks.瑞希ちゃーん!この人写真撮ってくれるって!」


え、初対面の外国人に写真撮ってって言ってたの!?

コミュ強すぎる…てか、なんでそんな英語喋れるの?


私は言われるがまま前に立たされる。

え、ポーズ何撮ろうか?


「せーの!ジョナサン・ジョースター!」

「はい!」


私たちは左手のひらを顔の前に広げ、右手を円を描くように下に向けた最もポピュラーなジョジョ立ちをしていた。

確か、1部のジョナサン・ジョースターはこのポーズを撮っていた気がします。

もちろん、彩奈ちゃんも同じポーズを取ります。


「Oh!Cool japan!」


外国人はそのポーズを見てこれが日本なのかと驚いてましたが、恐らく私たちは日本の少数派ですよと心のツッコミを入れます。


その後は、彩奈ちゃんも写真を撮ってあげてました。


もう、すっかり外国人とお友達です。

ちなみに外国人の方はじっくり話を聞くとアメリカではなくフィリピンからきたとの事で、好きなアニメはドラゴンボール…というところまでは理解出来ました。


☆☆


「いや〜たのしいねぇ!」

「急にジョジョ立ちはびっくりしたよ。」

「えー!私夢だったんだ!ジョジョラーの友達が出来たら一緒にジョジョ立ちするって!」


意外です。

スクールカースト上位っぽい彩奈ちゃんにしては割と大きくない夢なのです。

すぐにかなっちゃいそうなのに…なんて思います。


「えー!でも彩奈ちゃん友達多いじゃん!いないの?」

「これがいないの!普段の友達とは…うん…男の事とか…化粧品とか…ブランドがどうかって…意外と仲良いようでマウント戦争ばかりで…あはははは。」


急に闇を見せる彩奈ちゃんを見て私はドン引きしてしまいました。

どうやら私の見えてる女社会は、男が居ないと動物園と化すのですが、男がいたらいたで競争社会になっているそうです。


そんな中でジョジョの話ができないのも容易に想像できます。彩奈ちゃんは本当は少数派だけど、多数派に馴染める機転をもっていて、密かに努力をしているからこその彼女なのでしょう。


「そういえば、さっきの英語喋れてる彩奈ちゃんかっこよかったよ!直輝くんも英語得意だけど、彩奈ちゃんは更にその上を行くというか…。」

「えへへ〜直樹くんは私の弟子だからね〜。実は英語のTOEFLって言うものも持ってるんだ!」


彼女は胸をポンと叩く。

何言ってるかはわからないけどきっと凄いのでしょう。


「彩奈ちゃんは…夢とかあるの?」


突然そんなことを聞いてしまいました。

私にはこれといった目標や夢なんてありません。

ただ、AV女優以外の仕事はしてみたい…それだけです。

そのため、まずは選択肢を増やすために進学を考えてるのです。

誰かの夢を聞いてみるのも、もしかしたらいいキッカケになるのかも知れません。


「私はね、留学したいと思ってて…その中でたくさんの文化に触れてみたいの!そしたら…色んなところを飛び回って誰かの役に立つ…そんな仕事をしてみたいかな!」

「すごい!…でもどうして世界に旅立ちたいのかな?」


「…私は昔両親に旅行に連れてってもらったことがあったんだけど、その時子供たちがマネー、マネーって話しかけてきたんだよね。私はね…お金が無いんだなって思ってお金をあげようとしたら両親に止められたの。」


「なんで?」

「このお金は、この子を幸せにすることが出来ない…これらは全てこの親の酒や薬に言ってしまい、この子どもはもっとこんなことをやらされてしまうから。」


私は言葉を失いました。

貧富の差とは簡単に教科書とかで聞くのですが、そのエピソードを聞くだけでもよりどす黒く…リアルに貧富というものに重みがかかってきます。

そう考えると…私は親が支えてくれるだけでも相当幸せなのだと考えされられます。


「私は、そんな事を聞いて泣き出して…。でも、せめてもと子どもたちに飴を上げてみたの。すると、嬉しそうに舐めて…ほんのちょっぴりだけど幸せにできることが出来たの。」


私は、きっと凄い子と親友になれたのかもしれません。彼女だけのその経験がきっと行動的で人に与え続けられるマインドを作ったのか。そんな事をおもうと…自然と涙が流れてきました。


「ああ、ごめん!泣かせるつもりはなかったわ。」

「…彩奈ちゃんはすごいね。」

「ううん!でね…私の夢は、貧富の差は私一人では無くせないけど…少しでも関わることで幸せになれる人が出来る…そんなことを仕事にしたいと思った時にまずは英語と思ったの!そんだけ!」


彼女が…また大きく見えてきました。

私はこの子をもっと信頼してもいいかもしれない…むしろついて行きたいと思いました。


「ねえ、彩奈ちゃん?」

「なに?瑞希ちゃん。」


私は、恥ずかしいけど…勇気を振り絞りました。


「また、ジョジョ立ち一緒にやろ?」


彩奈ちゃんは…嬉しそうに目をキラキラとさせていました。


「もち!次は…DIOでもやろっか。Wryyyy!って!」


私たちはほんのりとコンクリートのジャングルを歩いていきます。未知の道を彼女と歩むことは、見た事ない景色や世界に導いてくれます。


木漏れ日が少し目に差し込んできて、風と共に流れてくる草木の香りは…どこか私の心を暖めていました。

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