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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第6章 あの子のお母さんもAV女優!?
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あの子のお母さんもAV女優!? 10話

私は上原瑞希うえはらみずき、AV女優の母親がいるごく普通の女の子です。


今は夏期講習で知り合った直輝君と、中学の頃の顔見知りだった飯田君を初めとした人間関係の中に混じってBBQをしています。


目の前のカルビやランプはとても美味しいです。

人と食べるご飯は久しぶりだから尚更美味しいと感じるんですけど…まだぎこちない感じがします。


直輝君は…確かに私と似てるけど、私よりも一歩先を行っていて頑張り屋だから直輝くんの周りにはたくさんの人が集まってきます。


ふと、思います。

私は…直輝君と一緒だけど、直輝君とは違って人から逃げてきたから疎外感を少し感じてしまいます。



「瑞希ちゃん、隣り…いい?」

「遥香さん、大丈夫…です。」


直輝君にはタメ口を聞けるけど、普段は私は人前に強く出れないし、敬語は当たり前です。

それだけ、人が苦手なのかもしれません。


ちなみに、私のお母さんは彼女の過去のAV女優としてのライバルでいつも遥香さんが1位で、私の母親は2位でした。

それからは母親は彼女に執着して30代後半になってもAVをつづけ、歳をとることで一定の需要はありますけど若い子の魅力には勝てません。


次第に2位から3位、3位から4位と人気は転落していき…SNSでも引退をした方が良いとの声を聞きます。


学校でも母親が原因で虐められてました。

クラスの男子に

「やーい!お前の母ちゃんAV女優〜。」

とか

「勉強なんかしないで、AVに行った方が儲かるだろ?」


などの心無い言葉があって、私は男性に恐怖心を抱くようになっていました。


言うなら、私にとっては彼女はある意味仇なのかもしれません。


でも、私の今の感情は…ひどく反比例しています。


「……。」

「チーズあるわよ。食べる?」

「食べます。」


しまった。

私はどうにも「おやつ。」「チーズ。」と好きな物に反応をしてしまいます。

そんな時、恥ずかしくなり頭に血が上るのを感じます。


「やっぱり…私のことは苦手かな?」

「そんな事は…ないですけど…。」


苦手というわけではない。むしろこんなにも優しく接してくれる遥香さんは好きなのかもしれない。

今もきっと、少し疎外感を感じてる私を察して隣に座ってくれてるのだから。


「直輝くんって、不思議な人ですよね。わたし…男の子に母親絡みで虐められてから、生理的に男性が無理になっちゃって…。」

「……うん。」



「私は、男がいやで女子高にも逃げました。

そして、私は母親とは違う道に行きたくて、とにかくいい会社に入って見返そうと勉強を頑張ってます。

…彼はそんな私を応援してくれるから、私も苦手だった男性が少し慣れてきました。」

「そうなんだ。」


遥香さんは、しっかりと私のことを聞いてくれます。

大人って何かと自分の意見を割って話すけど…この人は最後まで聞いてくれます。

正直、私の母親とは正反対でした。

きっと、彼女が1番だったのは美貌では無い…こういった人柄もあるのかもしれないです。


「……私もね、直輝には沢山迷惑をかけたわ。

8年直輝の為にやってたけど、気がついたら頑張る事だけに目がいって……直輝の事全然見てあげられなかったの。」

「そうなんですか?」


「あの子、人に虐められても笑って帰ってくるからさ。大丈夫かとも思ったら全然大丈夫じゃないんだなってわかって……26の時に辞めたの。」

「そうだったんですね……。」


確かに遥香さんは人気絶頂で突如引退をしました。

不可解だった事の背景には……直輝君への愛でいっぱいでした。


「ねえ?瑞希ちゃん。お母さんのことは……どう思ってるの?」

「嫌いです。」

「……即答ね。」


私の母親は、私の事なんて気にしていない。

いじめられてることも知らないし、誕生日だって忘れてオーディションに行くくらいなのです。

なんで、そんなものに執着するのかは理解が出来ないです。


「確かに、あの人はいつも一生懸命で気が強いところはあったわ。でもね……あなたを愛してないことは無いんじゃないかな?

知ることが出来ないくらい不器用な人だったのよ。

もし、機会があったらもう少し話してもいいんじゃない?

だって、男子が嫌いなのに今は男子の友達がいるのも小さな奇跡よ!向き合えば奇跡は何度でも起きるわ。」


遥香さんの言うことも、ご最もです。

私は先入観に囚われて男子をガードしていたけど、実際には男を色眼鏡で違うものに見過ぎていました。


もしかしたら、今見えてる母親は……別の形をしてるのかもしれません。


「そうだ!折角だし線香花火でもやりましょ!やった事ある?」

「ないですね。」


正直花火で遊ぶことは無かったです。

家ではティックトックを見るくらいしか楽しみがないものですから、外に出る事もほとんどありません。


私と遥香さんは、線香花火をつけます。


じり……じり……と重力に逆らって昇ってきます。

そして、バチン!と小さく弾ける火に驚いて私は落としてしまいました。


「あ!」


……ちなみに遥香さんも失敗してました。

線香花火とはもしかしたら相性が悪いのかもしれません。


「……難しいですね。」


しかし、遥香さんは明るい顔をしています。


「もっかいやってみましょう!」

「え……あ、はい。」


少しだけ……持つ時間を長くできましたが3.4回弾けたあたりで落としてしまいました。


「あぅ……。」

「難しい〜、直輝ー!あんた線香花火得意でしょ!一緒にやろ〜?」


すると、遥香さんは直輝君たちを呼んでみます。


「お!懐かしいな……やってみるか。」


今度はみんなで線香花火をつけます。

私は、自然とさらに落とさないように気をつけると、さっきよりも長く持てました。


やった!線香花火できた!

そんな達成感が込み上げてきます。


周りを見ると……さらに景色は大きく変わっていました。

闇夜にみんなの線香花火が照らしていて、それがひとつの光だと儚くとも美しいのです。


まるで地面に星空がもうひとつ出来たようでした。

それが私がひとりじゃない、みんなと照らして行けるんだと感じられるようでした。


気がついたら、私の線香花火は最後まで燃え尽きていました。


「できた!できましたよ!」

「また起きたね、小さな奇跡が!」

「はい!」


私は、遥香さんとハイタッチをしました。

遥香さんの手は温かく私の心を勇気づけられるようでした。


夜は少し冷え込んできますが、どこか暖かいです。

それは、遥香さんの手なのか、線香花火の熱なのか……

それとも、孤独感が無くなって心が温かくなったのかは……定かではありませんでした。

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