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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第5章 隣のグビ姉は小説家
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隣のグビ姉は小説家 7話

俺は少し嫌な気持ちが吐き気を催し、気がつくと俺の意識は無くなっていたみたいだった。


しかし、なにか今は心地が良い。

子守唄、そして人の体温を感じる…なんだろう、遥香さんでも…あの浮気をして俺を捨てて行った忌まわしい母親でもない、不思議な感じだ。


「こーやーんせーこーやんせー。」

「…笛吹さんでしたか。」

「おー、起きた起きた〜!」


いつもならあばれてその場から離れるのだが、どうにも身体が動きそうにない。

いつもそうだ、家族のことを思い出すと…発作のように力が抜けてしまう。


「もう少し休む?」

「ええ…もう少し。」


そう、発作の原因はあの小説だ。

どうにも…偶然と言うには出来すぎていた。

そうか、彼女の小説はこのように人に劇物に近い側面もあるのか。

まるで、アルコールが高すぎると薬品へと概念が変わるスピリタスのように。


「俺、笛吹さんに過去とか話してましたっけ?」

「ううん!でもね…部屋とか、れんれんをみてるとそんな人生だったのかなって感じただけ。」

「あはは…さすがは天才小説家ですね。」


ここまでいくと探偵でもいい気がしなくもないけど。


「むー!なんか心から言ってない!」

「すみません、ですが…これもひとつの感動なのかもしれません。感情が動くと書いて。」


少し考える、あれはどう見ても俺だ。

彼女はあのおじさんを書きたいのではなかったのか?

色んな疑問も思う。

彼女は天才が故に善悪の概念がない、恐らく嫌がらせでは無いと言うくらいはわかる。

じゃあなぜ?

すると、彼女は俺の頭を撫でてまた歌い出した。


…あんまり歌は上手くないのだけれど。


「笛吹さん、なんというか…独特な音程してますね。」

「むー!れんれんも私の事音痴っていいたいのか!」

「なんでしょう、抑揚とか音程とかで表現するもんだと思うんですけど、笛吹さんの表現はまた違った表現だと思います。」

「そなの?まあいいや!…私はね〜今はれんれんのことを知りたいんだ〜!」

「どうしてです?」

「れんれんは〜たまに寂しそうなの顔をするんだけど、あくまで俺は傍観者…ってスタイル過ぎると思うんだよね!自分の意見を言わなすぎるというか、常識に囚われすぎてるってゆーか〜!」


当たりだ。

俺にとって主人公は直輝で十分である。

俺は傍観者、友達Aとして彼と遥香さんたちと過ごす日常がとても好きだ。


別に俺の家族愛による欲求なんて、既に必要ないんだとさえ思う。

だって、そんなの人それぞれだから無いものを望むなんてもってのほかである。


「俺は…どうすればいいですか?」

「あんたも!人生の主人公なの!私がそれを教えて上げるんだ〜!」

「あはは、その前に…住所確保してくださいよ。」

「むー!またそうやって〜!」


笛吹さんはまるで子どものように怒る。

まるでアラサーとは思えない。

見た目はピアスもタトゥーも入ってると言うのに。


「さて…と!そろそろ起きますか?」

「あら〜もう少しやってもいいのよ?」

「人も見てますんでやめときます。」

「そか〜、もう…夜だねぇ。」


彼女の言う通り…もう夜空は真っ黒で波風は心地いい物から視覚化されなく、少し不気味に感じていた。


☆☆


俺たちは、近くのビジネスホテルに向けてバイクを走らせた。

予定外に俺がダウンしたり笛吹さんが執筆を始めたりしたから時間がかかりすぎていた。

そして、着いた時に問題は発生する。


「え、一部屋しか空いてない?」

「そうなんですよ〜!申し訳ございません。」

「こちらこそ、急にお願いしてしまい申し訳ございません。」

「この部屋でも大丈夫ですか?」

「ええ、この際大丈夫です。」


俺はルームキーをもらって部屋に進むとさらにとんでもない事実にたどり着いた。


「ダブルベッド…だと…!?」


そう、この部屋はダブルベッドだった。

枕が二つあり部屋は狭く質素であった。


「今日は笛吹さん、ベッドで寝ていいですよ!俺はソファーで…え?」


彼女は無言で俺の手首を掴んだ。

え、どうしたの?

流石の下品な笛吹さんもびっくりしたのかもしれない。

しかし、彼女は少しほうを赤らめていた。


「良かったら…一緒に寝る?」

「え?」

「ほ…ほら!たまには寂しい気持ちとかも紛らわすことも出来るだろうし、人肌は落ち着くぞ〜!」


彼女は…少し震えていた。

てっきり、酒と支離滅裂な行動で男性経験は豊富だと思ったけど…。


「もしかして、笛吹さんあんまり男性との交流とか…なかったり?」

「そそそそそ!」

「日本語でお願いします!」


彼女は少し咳払いをする。

ドンピシャかよ。

なんか…こうしてみると笛吹さんは可愛いところがあるのかもしれない。


「んー、だって執筆かぼっちか編集長と喋ったことないからさ〜。」

「何もしませんからね!?」


俺たちはその後、俺が先にシャワーを浴びてから彼女がシャワーを浴びることになり、俺はベッドで横になる。


生々しい。どうにも…女性が後ろでシャワー浴びてるって言うのがどうにも童貞の俺には刺激が強すぎた。


彼女は髪を濡らしている。

なんだろう、いつもに比べて色っぽい。


そ彼女はタバコ臭さと酒臭もしない、石鹸の匂いと女性特有の甘いような香りを漂せて俺の布団に入ってくる。


「ねえ、くっついていい?」

「笛吹さんがそうしたいなら…いいんじゃないですか?」


すると、彼女は無言で俺の背中に対して抱きしめる。

彼女の体は普段は想像しないくらい細くて、そして…こちらが力を入れたら折れてしまいそうなくらいか弱かった。


俺の心拍数は恐ろしい程に上昇していた。


「れんれん…親がいないって、寂しい?」

「え!?あ…あー!どうなんすかね?中学生からだったから慣れたような…。」

「私はね…生まれてから、親の顔知らないんだ。ずっと施設にいたからね。」


え…?

俺の思考は少し停止する。

確かに笛吹さんの親なんて聞いたこともない。


「もし、愛を感じられるのなら…こんな感じかな?」


確かに笛吹さんと身体を重ねると不思議と落ち着くものがある。

もしかしたら、俺たちは似たもの同士なのかとしれない。


「ねえ、れんれん…私も愛してみてよ。分からないからさ…。」


俺は彼女の方向に顔を見せると…おいでといわんばかりの笛吹さんがいた。

いつもみたいに酒に酔っていて、クレイジーでミステリアスな笛吹さんはいない…彼女はたった一人のごく普通の女の子だった。


「ちょっとだけですからね…。」


俺は彼女と抱き合う。

俺もドキドキはしていたけど、この人に委ねてもいいのではないかと思ってしまった。


気がつくと…俺は初めての安堵の感情に身を委ねて安心して眠りについていた。

彼女を理解し、彼女に理解されることに喜びを感じてるようにゆっくりと意識は消えていった。

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