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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第5章 隣のグビ姉は小説家
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隣のグビ姉は小説家 6話

「海だーーーー!あははは!」


ここは静岡県の伊豆半島、やや北西に位置する大瀬崎。

ここは万年マリンスポーツの聖地として人気であるスポットである。

現在はダイビングの人たちで賑わっており、大学生も沢山居た。


そして、普段家から出ない笛吹さんは海で大はしゃぎしていた!

凄い……もうアラサーになるのに大学生に混じるどころかテンション超えてきてるよ。


「おおー!以下にも青春真っ只中の男女!ヤリサーかよ!てめえらの乱れた性生活取材させてくれ〜!」


ザワザワ……


「すみません、ほんと……すみません。」


そして、俺はそんな揚々としている輪を乱す笛吹さんの謝罪に回っていた。



「ちょっと!笛吹さん!!恥ずかしい真似やめてください!マジで通報されますよ。」

「すみません……。」

「てか、ここに着いてからどんだけ飲んでるんですか!まったく!」

「アサヒスーパードライを4缶ほど……。」

「ちょ、マジでなにしに来てるんすか!?」


道理で初っ端から支離滅裂な発言が目立つのか。

早く別のところに避難しないと……。


あれ、ここまだ道が続いてるんだな。


「どうしたの?れんれん!」

「なんか、あの岬に池があるみたいですよ!」

「え!まじで、いこいこ!」

「はいはい……。」


伊豆はもともと離島だったのだが火山活動で長い年月をかけている。

そのため、岬に池があったり、溶岩で作られた洞窟があったりといわゆるジオスポットというのが至る所にある。


そう、とにかく今回の目的はジオスポットの取材である。

暫くすると、ここは神社でもあるみたいで珍しい木々に囲まれていて、真ん中には神池という池があったり。


「すげーー!コイじゃん!でか……!」


そして、池にはおびただしい数の大きなコイがいて、俺は面食らっていた。


「落ちないでくださいね〜!結構お酒飲んでるんですから……。」

「コイのアライは……日本酒の真澄と合わせれば……。」

「別の意味でやばい方向にいやがる!」


なんという事だろう、行動に予測が全く出来なかった。


「笛吹さんって……なんかいつも行動が読めないです。俺には難しいですよ。」

「ん……きっとね、れんれんは私と違うものって色眼鏡でみてるから大きく違うように見えるんだよ。」

「そんなもんなんですかね?」

「うん!私だってさ!れんれんと同じところはあるよ!」

「え、どんな……。」

「えへへ〜秘密〜!」


どことなく……笛吹さんは嬉しそうだった。

俺と笛吹さんには全くもって共通点がない。

例えば朝ごはんは俺は米で笛吹さんはパンだし、俺は朝方で笛吹さんは夜型……全く逆に見える。


「さてはれんれん……小手先の違いで私と比べてるな〜。」

「何が一緒なんですか!」

「んーあえて言うなら本質?」

「いや、それ高校生には難しいですよ!」

「この度はね〜取材もあるけど本質を感じる旅にします!」


どういうことや……。


ひとまずツッコミは置いといて、俺たちは大瀬崎を後にして次に黄金崎というところに向かうことにした。


エンジン音が子気味良い音を立て、潮風がほんのり生臭くしょっぱい風を浴びせて、それがとても心地よかった。


「笛吹さんって、血液型なんすか?」

「AB型だよ!」


なんか、予想通りだ。

あんまり血液型で決めちゃいけないとは思うけど。


「れんれんはOでしょ!」

「……正解ですよ。」

「やっぱり〜えへへ。」


「笛吹さん……IQとか測ったことあります?」

「160だよ!」


いや、アインシュタインくらいじゃねえかよ。

でも、IQってよく考えたらわからんな。

俺も言うて110くらいだったし。

でも、普段の彼女の言動だと100なさそうな感じもしたけどね。


「……やばい、タバコ吸いたい……れんれん……iQOS吸いたいよ〜。」


……本当に頭いいのか?

まあいいや、暫くシカトをして目的地を急ぐか。


「れんれん〜!」

「あ〜!もう抱きつかない!わかりました!もう少しでおります!」


どうやら彼女は無視をするとえろい行動をするので適度に反応する事にしよう。


☆☆


「ついた!黄金崎!」


こちらは黄金崎、火山による高低差があり木々顔生い茂っているところである。

そして、展望台を登ると馬ロックという馬に見える岩があるのだ。


「……。」

「あれ、笛吹さん……いつになく真剣ですね。」

「あの馬が勝てますように……一獲千金。」

「おい小説家、あんた武器あるんだから正攻法で戦いなさい。」


酒だけでは明らかに出費が高いと思ったら、この人ギャンブルもしていたのか……改めて笛吹さやかの支離滅裂っぷりが垣間見える。


「ギャンブル……楽しいっすか?」

「なんかね、賭け事して酒を飲んで勝つ時の気持ちよさが好きなのよね〜。」

「典型的なダメ人間だ!」

「でもね、パチンコとかしてる時はね〜小説のネタが浮かんでくるんだ〜!」

「ほう……アニメの作品とかも台いっぱいあるからネタはありそうですよね。」

「違う違う!私はね……パチンコを打ってる人達の表情を見るのが好きなの!なんか、この世の終焉を見てるような……高齢者とか何を見つめてるのか分からない表情とか見てて飽きないのよ!」


凄い……この人そんな目でパチンコに望んでるんだ。

でもこの話どっかで聞いたことあるぞ。


「なんか、進撃するあの巨人の漫画の作者みたいなことしてますね。あれは確か……巨人の表情をパチンコ打って喜怒哀楽を表す人々をモデルにしてるらしいですよ!」

「えー!なんか、感激!そうなんだよ、街の人々を見ると当たり前すぎちゃってさ〜。」


天才は行き着くところは一緒なのだろう。

やはり、間違いなく彼女は天才だ。


「あ!まって……!ちょっとタブレットと机と椅子が欲しい!」


すると、彼女は近くのカフェに走り巨大なかき氷を注文して右手でかき氷を食べながら左手で文章をひたすらに書出した。


「笛吹さん!笛吹さ〜ん!」


すると、珍しく彼女は黙り出してしまった。

とんでもないスピードで文章をフリックしている。


きっと、彼女は集中をすると別世界に行ってしまうのだろう。

彼女は何度声掛けても返事をしなかったので俺は終わったらLINE下さいと書き置きをして散策をした。


黄金崎は岩が文字通り黄金色をしていて、それが夕日に照らされてるのがとても美しかった。

そして、下にはキャンプをしている。


なんか、いつかみんなとここ来ても楽しそうだな。

すると、突然LINEに着信が出た。


「お疲れ〜、飯田。」

「おう!直輝か!」


俺の親友からの電話である。

直輝はこうしてたまに心配すると電話をかけてくれるのだ。


「旅行行ってるんだってな!どこ行ってるの?」

「伊豆だよ!今は黄金崎ってとこにいる!」

「え!馬ロックの!俺あそこ行ってみたいんだよな〜。」

「でも色々ありすぎてわからん……、なんか他にいい場所とかないのか?」

「んー、そうだな……例えば下田というところで金目鯛のハンバーガーとかあるぞ!」

「何それ美味そう!」

「あとは堂ケ島ってところもいいし……龍宮窟ってとこもいいぞ!」

「知ってる!うえが吹き抜けになってるとこよな!直輝は色々知ってるな〜!」

「まあな〜、気をつけてきなよ!お土産待ってるわ。」

「ちゃっかりしてるな、じゃあな!」


直輝はほんと最近成長をしている。

俺もちゃんとあいつを見守ってあげないとな。

まあ、1番のメインイベントは遥香さんなんだけどな。


ふと、また電話が来た。

というか、笛吹さんからの不在着信がいっぱいあった!

やべえ戻らないと!


☆☆

「…むー!」

「……すみません!遅くなりました!」

「なんで連絡無視するの!」

「いやぁ……いつもの友達から伊豆のスポット聞いてました。」


嘘偽りない。事実である。


「なんてね、れんれんはそんな冷たい人じゃないからね!」

「それよりも、いい文章はかけました?」

「うん!」


どれどれ……親がいない人間不信の若い兵士の冒険譚、彼は明るく老若男女好かれる好青年である。

しかし、彼は家族の離婚を経験し、父は自殺をしていた。それを糧に明るく生きる、そして……仲の良い貴族の引きこもりガチの青年を傍観しながら支えていく……。


あれ、なんだ……この物語……。


「ん?どうしたの?れんれん。」

「と……とてもいい物語ですね!笛吹さんの作品はとてもリアリティがあって感情移入が出来そうです!」


そう、感情移入できた……出来すぎたくらいだった。

何故か笛吹さんに話してない事実も書いてある、俺の物語にも見えていて、既視感と過去の嫌な気持ちが鮮明に思い出し……少し気持ち悪くなるくらいには。


黄金の黄金崎は……いつの間にか黄金が分からないくらい、闇夜に紛れていた。

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