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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第5章 隣のグビ姉は小説家
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隣のグビ姉は小説家 4話

これは、私こと……笛吹さやかの物語。

私はシラフの時はネガティブでどこか道化のように自分を作る性格だった。


私は人より大きく劣っていた。

何より私は……両親の存在を知らない。

わたしは生まれてからずっと……施設育ちだ。


「さやちゃんは、何か食べたいものある?」

「シスター!私は……いつもの鮭で十分に幸せです。」


別に食べて幸せではなかった。

とにかく私には食べ物に味覚を感じなかった。

なんというか、サンドイッチはスポンジを食ってるようだし、肉は生臭く美味しいとも思わないのにそれを1度本音で言ったら周りをドン引きさせてしまったのだ。


そして、わたしは常に孤立をしていた。

施設の子たちの話が分からなかったのだ。

例えば……みんなはテレビの女優やジャニーズの話をしているのだが、私にとっては戯言だ。


私はアドラー心理学や量子力学の本などが好きだった。


ただ……一つだけ心が揺らいだ瞬間がある。

それは、施設の子達の里親が見つかり、お別れする時だ。


「さやちゃん!またね……!」

「うん、ともちゃんこそ元気で。」


施設の子達が去る姿をみて、幸せそうに手を繋ぐ姿を見てわたしは幼少から要らない存在だと認識してしまったのだ。


やがて、わたしは文学に励むことになる。

私はからっきし勉強はダメだった。

例えば国語は他の人より深読みをしすぎで先生に意図が違いすぎると思った。


理解が出来なかった、作者自身の本質を見抜いただけだったのにこの教師は表面上の決められた理解でしか正解を設けない無能だと思った。


やがて、わたしは文章を書き続けてなんとなく……出版社に顔を出すことになった。


「ちょっと君……この作品難しすぎるんだよ。人に伝わらなきゃこんなもの……売れないんだよ!」


また否定だ。

しかし、分かりきっている。

私は人とは違う。

私にとって人間とは顔がだいたい同じの将棋の駒のようにしか思えなかった。

きっと能力とかを勝手にフィルターしてしまったのだろう。


しかし、この日は違った。


「どうしたんだ?」

「あ、編集長!この女子高生が原稿を見せに来たのですがどうにもちんぷんかんぷんで……。」

「どれどれ……。」

「私は……何がおかしいのでしょうか?」

「ほう、2040のシンギュラリティとナマズに関する脳のブラックホールの論文を元に書いた小説の物語か……これを元に暴走をするAIに立ち向かうおっさんの物語……あはは!」

「え、編集長わかるんですか?」


何故か、初めて私を見て笑う人がいた。

何故かそこは不気味でしか無かった。


「君の脳みそは、他の人よりできすぎてるんだな。

だからこそ、彼のように理解できない人間が多すぎる……今までそういうことはあったかい?」

「はい、なぜみんながこんな表面上の話しかできないのか?本質が見抜けないのか疑問でしかなかったです。」


そのまんまだった、わたしは事実を書いているだけなのに怪文書呼ばわりされるのが癪でしかなかった。


「いいかい、誰かに伝えるなら誰に伝えたいかなんだよ。君の文学は素晴らしい……尖りすぎてるくらいにね。だけど君の文学は正直オナニーでしかないのだよ。」

「おな……!?」

「編集長!相手は女子高生ですよ!」

「そこまでシンプルな表現でしか、彼女は伝わらないんだよ。だって文学に触れてる時……君の感情は気持ちいいんじゃないか?気がついたら……15時間くらい筆を綴ってるんじゃないか?」


なぜ分かるのか、理解が出来なかった。

私は特別な人間だったのに……この男のせいで特別じゃなくなるのだろうとわたしは別の心配をしてしまってさえいた。


「……この原稿は30時間をかけて書きました。でも無我夢中でした。」

「つまりは、そういうことだ。君は他の人よりも快楽に飢えているところがある。」


そうか、だからこそのオナニーという表現だったのかとわたしはハッとした。


「いいかい、優秀な人は難しいことりシンプルに表現するんだ。それが子どもの君と大人の私の違い……、1年でいい1年私に原稿を持ち続けろ。」

「あの……名前は……。」

「私は石澤だ。」


そう、それが編集長との出会いだった。

わたしは、約束通り毎日彼に原稿を私続けた。

しかし、どれも、怪文書になってしまい……紙の無駄だと彼からタブレットを貰った。


「いいんですか……?」

「ああ、なんせこの紙切れの為にバイトをして首になっている君が不憫で仕方がない。」

「ありがとうございます!」


編集長は毒舌だった。

この表現はダメだとかつまらないなどなんども私にボツをだした。


そして、ある時だった。

私は編集長のビールを盗み、公園で酒を飲んでみた。

不安な気持ちはなくなっていった。

それからは、ほとんど今の私になって言った。


「あはは〜ちきしょう!あのM字はげめ〜なんでこんなに私の作品を否定するんらよ〜クソめ!」


そして、以前の語彙力はここからなくなって言った。


すると、目の前にダンボールにくるまる惨めな男がいた。男は目を合わせないようにしている。


「オッサン!シカトしてんじゃねえよ畜生!」

「……え?」


ホームレスは面食らっていた。

そりゃあそうである。

わたしはそもそもおじさんに話しかけてすらいないのだ。


「んなぁ〜!聞いてくれよ〜うえええ!」

「落ち着きなさい、お嬢ちゃん。」

「おじさん!私の小説読んでくれ!その代わりツマミをくれ!」

「チータラで良ければ……。」

「あんのかよォ!」


今冷静に考えたら……傲慢な態度をとってしまった。

しかし、これは運命の日だった。


「んー、これは……難しすぎるな。というか、お嬢ちゃん年齢にそぐわないで未来の話を書くんだね。今後人は個性が細分化されすぎてお金の意味が無くなるだの、支配者はAIになるだの……かなり恐ろしい思考をしているな。他にもリーダーは自由の奴隷で奴隷は考えなくてもいい代わりに自由とか……尖りすぎてるんだよね。きみは頭が良すぎるんだよ。」

「え!?おじさん……わかるの!?ホームレスの癖に!?」

「癖に……は余計だよ。言葉もストレートすぎるな。」

「じゃあどうすればいいんれすか!」

「君……なんで酔っ払ってるの?」

「編集長がもう1年もボツを出すからムカついて酒をパクったの。」

「でも、酔ってる君は言葉が分かりやすいな。伝わるし端的だよ。文章はそれでいいんじゃないか?」


え、まじ?


私にとっては意外なヒントだった。


「おじさん……なんか、頭良くね?何してたの?」

「社長。」

「ってことは倒産してホームレスしてるの?」

「そうなのだが……私はね、競走に疲れたんだよ。」

「競走?」

「そうさ、こうして自然を眺めて傍観する方が人生は楽しいもんさ。」


理解が出来なかった、閃光のように輝く方がいいと思っていたからだ。


「どんな社長をしていたの?」

「ああ、介護系の事業をしていてね……世の中1人で辛くても経つことさえできない人があまりにも多いんだけど世の中はそんな人達に厳しいんだよ。」

「そなの?」

「ああ、恐ろしい程にね。」

「私も〜施設育ちなんだけど親来なかったな〜、里親も見つからずわたしはいつもぼっちで〜す。」

「なんと……!」


おじさんは、目を見開いていた。


「世の中は私を敵と見なしてるみたいなんだよ。

私は愛を知らない。愛されたことさえもしらない。

そんな中本での世界でしか世界を見れないんだ。バイトもすぐクビになるし……死のうかな?」


思ってもないことを口にしてしまった。


「う……!う……!」

「おじさん……泣いてるの?」

「さぞ……!生きにくかったのだろう……!」

「え?」

「すまんな、私たち大人が未来のある君たちにしてやれることが何も無い。私は……翼を失った天使みたいなものなんだ。」

「天使……?」


わたしは、その表現が好きだった。

このおじさんは、人のために尽くすことが生き甲斐だったんだろうと私は止まってしまったのだ。


「天使、翼の折れた天使!」

「……え?」

「おじさん、わたしは……おじさんの物語を書きたい!」

「どういうことだ?」

「おじさんの人生……買った!報酬はこのビールにしよう!乾杯だ!」



それから……わたしはただひたすらに筆を綴り朝になってしまった。


気がついたら、編集長の部屋で寝ていて、朝叩き起された。


「おい、笛吹……昨日私のビールが無くなったんだが……。」

「……ビールは、旅に出たのかもしれません。」

「ビールは勝手に旅に出るものじゃない!しかも……酒臭!」


編集長はおにの形相をしていた。

多分めちゃくちゃ怒っているのだろう。


「全く……というか、また原稿用紙で書いて……。」

「どうしたんだよ〜編集長〜。」

「……いい、なんだこの物語、お前が書いたのか?」

「えへへ〜翼の折れた天使!素敵でしょ!昨日天使にあったんだ!」

「おい、これ出版するぞ。」

「へ?」


その後はトントン拍子で私はデビュー作をベストセラーにしてしまったのだ。

わたしは……たくさんのお金を手に入れた。


しかし、わたしはお金に執着は無かったのだ。


「おじさ〜ん!いる〜?」

「君は……あの時の!」

「翼の折れた天使ってしってる?」

「知ってるも何も……本屋でよく見かけるよ。」

「あれから、わたし沢山お金もらったんだ!200万!これでおじさん人生やり直せよ〜!」


そう、この物語の著作権はこの男にあるべきだと思ってこの男に私は返しに来たのだ。

なにより、恩返しがしたかったのだ。


「受け取らないよ。」

「はあ?200万だぞ〜!おっさんこれで何とかなるだろ!」

「だってもう受け取ったんだ……ビールをね。」


「え……。いやいや!これはおじさんの物語だよ!

もっと誇ってよ!」

「いや、これはお嬢ちゃんの才能が作ったものだ。君の人生を君が作ったんだ。とにかく受け取らない。」


わたしは……その場で泣き崩れてしまった。

目の前にいた男は間違いなく天使だった。

人の幸せを第一に願う男だった。

わたしは、はじめて人に感謝する気持ちを覚えた。


その後……男は間もなく病で無くなることを知るのはかなり先だった。


☆☆


「……寝てた。」


かなり長い夢を見ていた。

酒はまだ抜けていない。

だけど、わたしには酒を辞めることは無かった!


「えへへ〜さーて、今日も飲むぞー!」


私の酒というペンは今日も筆を綴り続ける。


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