クラスの不良は優等生 2話
なんか、今日はどっと疲れた。
ゴールデンウィーク明け……という訳ではなく恐らく虎ノ門君のせいだろう。
距離感の分からない人物である。
俺たちは午後は自習という事だったので、ひとまず参考書を読もうとしていた。
しかし、虎ノ門君はこの歳で医者になりたいとやりたいこともハッキリしていてとても羨ましい。
だからこそ目標を逆算して突っ走るからこそ青春もあんなに楽しめるのだ。
この時間もさぞ有効活用して……。
「ぐーぐー。」
いや、めっちゃ寝とるやないかい!
なんなんだよ!腹立つなぁもう。
「直輝〜!隣……良いか?」
「飯田……なんか、お前見てると落ち着くよ。」
「どうした!?なんか気持ち悪いな!」
そういえばココ最近は虎ノ門君や舞衣と接してばかりだったから逆に飯田がオアシスのように感じた。
「俺、やっぱりお前が必要不可欠な事がわかったわ。」
「そうか、まあいいや……それより昼にめっちゃ虎ノ門に絡まれてたな……大丈夫だったか?」
「ああ、見てた?なんか勉強を理由に逃げようとしたら勉強教わる羽目になって……。」
「おまえ……虎ノ門相手にそれはバカだぜ!あはは。」
飯田は爆笑をする。
そりゃあそうである、どうやら虎ノ門君が頭がいいのは学年内でも有名な七不思議のひとつだったから、僕の行動はまわりからみると自爆行為そのものなのだから。
「それにしても……お前もう宿題終わってるんだな〜。」
「あ、ほんとだ……!しかも全部正解だよ。」
「いや、気が付かなかったんかい。」
少しだけだけど……俺自身も成長をしている。
きっと虎ノ門君に式のイメージを叩きつけられてあの短時間で身につけてしまったのだ。
実際……彼の勉強法はシンプルで分かりやすかった。
「まあいいや、とにかく危ない奴だと聞くから気をつけろよ〜。」
「うい〜。」
キーンコーンカーンコーン……
さーてと……それではさっさとかえりま……しょ!?
ふと、後ろに衝撃が来る。
なんだなんだと狼狽える俺に虎ノ門君がニッコリとこちらを見ていた。
「虎ノ門君!?」
「よぉ〜なおっち!てか俺の名前は龍でいいよ。」
「いや、今度は何?」
「今日お前の家遊び行ってもいい?スマブラやろうぜ〜。」
「い……いやだ……!」
なんか本能が危険信号を送っている。
これはやばい……というか、まだそんなに仲良くないのにそんな事やられるのはシンプルに嫌だ。
「んな事言ってよ〜!よし!じゃあ決まりな!」
「え!ちょっと!待ってよ!誰か〜助けてくれ!」
「「ちょっと待った!」」
すると、後ろに人影がいる。
よかった!援軍だ!
後ろを見ると……飯田と舞衣と……川崎さんもいた。
「なあ!俺も連れてってくれよ!スマブラやりたいし!」
「私もよ!そういえば彼女なのにまだ直輝君の家言ったこと無かったし!」
「ぬうう……2人はまだわかるけど……あれ、川崎さんは?」
そういえば川崎さんはまだ友達認定してなかった気がするけど……いつの間に集まるようになったのだろうか?
まあいいや……深いことは考えないで一旦流されてみるとしよう。
「う〜ん……まあいいよ。勉強会(仮)ということで。」
☆☆
「あの直輝が……たくさんの友達を家に……う……う。」
「母ちゃん!恥ずかしいからやめてくれよ!」
「だって……直輝自分からぼっちまっしぐらな性格をしてるから……。」
「うおおおい!?ちょっとみんなの前ではやめてくれるかな?」
結局、龍君と飯田、舞衣と川崎さんの4人で集まることになった。
家は母ちゃんの貯蓄のおかげで無駄に広い一軒家だったのでそこまで狭い感じも無かった。
そして、みんなの顔を見るなり母ちゃんは嬉し泣きしそうだったので俺はすかさず遮った。
「それにしても2人は見ない顔ね?名前を聞いてもいい?」
「あ!はい、川崎彩奈です!舞衣との友達でたまに直輝くとも仲良くさせてもらってます。」
嘘つけ、6人の不良で僕らを潰そうとしてたじゃないか!
すごい……女って平気で嘘つくの怖いな。
仲良くするつもりは全くないんだけど……。
「あ、俺虎ノ門龍っていいます!てか、お母さんめっちゃ美人ですね。良かったら俺と一夜どうです?」
「あら〜積極的ね〜!これがゼット世代って奴かしら。」
「ちょ!何言ってんだよ!龍君!」
「いや、ほら……俺をもっと知ってもらうためにはベッドで語った方がいいじゃん?」
「ぶっ飛ばすよまじで!」
まずい、龍君はまだ性格が未知数すぎて予測がしきれてなかった。なにナチュラルに人の母ちゃん口説いとんねん。
とにかく……母ちゃんからみんなを離らかさなきゃ!
それから、少しペースは遅れたがみんなでリビングに座り持ち込んだお菓子を手にスマブラをする事にした。
まあ、これがメインイベントだし……ゲームならネット大会に出るくらいにはやってたしな!
俺はホムラというキャラクターを使う。
可愛い赤色の女性でパワー&ヘビーキャラというギャップが好きで使っている。
舞衣はキングクルールという、ドンキーコングの敵のワニみたいなキャラを使っていた。
あれ、でもそんなに強くないキャラのはずなんだけど……。
そして、川崎さんはマインクラフトのスティーブというキャラをつかっていて……龍君はポケモンのプリンを使っていた。
「な……なんか、みんな使うキャラ特殊すぎない?」
「いや、直輝なんかはビジュアル重視すぎるだろ。」
ぐぬぬ……飯田の指摘に返す言葉もない。
そして、程なくして試合が始まったのだけれど……乱戦になっていて、とてもいい勝負になっていた……これはこれで楽しいはずなん……だけど?
気がついたら俺はリングアウトになっていて、次に川崎さん……舞衣も蹴散らされていた。
あれ……どうしたんだろ?
画面を凝視していると……プリンがみんなをボコボコにしていた。
「りゅ……龍君!?まさか……まじでプリン使いなの?使うだけで縛りキャラなのに!?」
「だってみんな油断するじゃん、しかも動きとか読みづらいし。」
気がついたら俺たちはボロ負けで龍君の一人勝ちだった。その後も何回もメンツを変えたり、みんなで龍君を攻撃するけど結果は同じだった。
いや、喧嘩も強いけどゲームも強いとかチートすぎるでしょ!
「さ〜て!ちょっと飽きたし……みんなで勉強しない?」
「「「「う……うん……。」」」」
そして、終わる頃にはみんなは戦意を失ってゲッソリとしていた。
やれやれと教科書や参考書を開いて準備していた時にふと……龍君が俺の耳にコソコソと話しかけてきた。
「てかさ今気づいたけど……お前の母ちゃん……AV女優だったよな?」
俺は……突然血の気がサーっと下がる感じがした。




