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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第24章 雪と温泉とウィンタースポーツ

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春と挫折と宮古島 15話

ホテルの部屋に入ると、あかりが付いていて中から声が聞こえる。


「母ちゃん…なにしてたのかな。」


今日の母の動向を気にしつつ、俺は部屋に入る。

すると母ちゃんは……


「ひぐっ……えぐ……わらしの……旅行が……。」


めちゃくちゃ泣いていた。

どうやら折角の旅行が二日酔いで台無しになったのがよっぽどショックだったようだった。


「……ただいま。」

「ぎょえええーー!?」


どうやらギリギリまで気が付かなかったみたいで死ぬ直前の悪役のような悲鳴をあげる。

というか、普通ぎょええなんて悲鳴あげるか?


「な……直輝いたんだ。」

「居たよ、二日酔い大丈夫か?ほれ、ポカリ。」

「直輝ー、ほんと優しいねアンタは。」

「ちょ、近い!抱きつくな!」


母ちゃんの過度のスキンシップで俺は拒否反応をする。

全く……!俺もそれどころじゃないのに!


「わたし……結構今日楽しみにしてたのに……楽しめなかった。」

「いいだろ、まだ明日も残ってる。いい加減……離れなさい!」

「いでっ!」


俺は母ちゃんにデコピンをしたらあっさりと仰け反る。

その痛がる様子はとても高校生の子供がいる人とは思えないくらい幼さを感じた。


「くぅ〜!貴重な1日は消えるし、息子にはデコピンされるし……あれ、これなんかことわざあったよね。」

「泣きっ面に蜂?」

「そう!さっすが〜!医学部志望は博学ね!」

「うるせえ。」


母ちゃんのこの空気の若干読めない感じが少しだけ心地よかった。

今は気持ちはどん底なのと、女の子を傷付けたという罪悪感でいっぱいだったから。


「今日は……翔子の娘さんとお出かけしてたんだっけ?どうだった?」


そして、一番触れられたくない話題に入る。

去年の俺ならその場で怒って寝ていたけど、妙に俺は黙り込んでしまった。


「……なんというか、怒らせちゃった。」

「ええ!?」

「最後まですごく仲良くなれたけど、彼女がついて行きたいって言い出して……断ったらすげー怒られた。」

「……。」

「こんなことなら、出会わなきゃよかったって。」


どうやら母ちゃんは想定より仲良くなっていたことに驚いていて、しばらく黙り込んでしまった。


「なんというか……すごい疲れたよね。とりあえずお店行こ。」

「……うん。」


俺たちは、ホテルを出て並んで歩いていた。

暗闇の中潮の音だけが聞こえる。

昼間はあんなに綺麗だったのに、夜になると道の生き物が蠢いてるような不気味ささえも感じてしまった。


「今日はどんな感じに過ごしたの?」

「色んな砂浜見てきて、一緒にカフェとかマックとか、カラオケもいった。あの子すごく歌が美味かった。」

「……かなり充実してるわね。」

「あの子は……家族とか、学校で居場所が無いって悩んでいた。でも、すごくいい子で……俺の受験の悩みとかも聞いてくれたりしたんだ。」

「仲良しじゃない。」

「それで……、東京に行きたいって言い出したけど、俺もあの子も受験だし、もしあの子と一緒にいても目の前の事から逃げてるからあの子が成長する機会を奪うことになる。だから、断った。」


母ちゃんは口出しすることなく最後まで聞いていた。

何を思ったのだろう。

選択を間違えたかも知れないと少し不安になってる俺にとってはこの間が永遠のように感じた。


「全く、直輝は……誰に似たんだか。」

「え?」

「亡くなったお父さんもこんな感じだったなって。あの人は最後まで私を思って私の気が付かないところまで守ってくれてた。直輝は……お父さん似だね。」


母ちゃんは、俺の中に父親の直人を見ていた。

あいつもぼんやりしてるようで、俺や母ちゃんの先を見て津波の中へと散っていった。

優しいやつだった。

でも、その優しさを伝えるのだけは下手くそだった。


「あの時は、私と直輝を置いていったと思ったけど……あの人は私が必ず立ち直って必死に生きて直輝を守ると確信したから託したんだなって今になって思う。」


そう、あいつは死ぬ直前……母ちゃんの身代わりになる直前震えていた。でも、そこまで見ていたんだ。今の俺より1個下なのに……凄まじい覚悟だったと思う。


「直輝があの子にしたのも、そんな感じでしょ?」


そう言われて、俺はその言葉に妙に腑に落ちる感じがした。

まるで、言語化してないぼんやりとした雲を母ちゃんが晴らしてくれたかのようだった。


「うん、あいつは今は少し辛くても向き合わなきゃ行けないんだよ。俺だって母ちゃんが元AV女優だとわかった時も、向き合って今があるんだ。あいつにもその素晴らしさを知って欲しいんだ。」


初めて、言葉にできた。

そう……俺は決してあいつを軽んじるのでもなく、傷つけるのでもなく、強くなったアイツに一歩踏み出して欲しかったのだった。


「母ちゃん、俺明日あいつにキチンと話してくるよ。多分引っぱたかれるかもしれないけど……あいつは大切な友達だからさ。」

「うん、そうしな。」


そして、俺たちは繁華街にきて居酒屋を探して前へ前へと進む。


「さーて、今日は一日中寝込んでたからめっちゃお腹すいた!直輝……沖縄料理の真髄を教えてあげるわよ。」

「うわ、急にめんどくさいじゃん。」

「あ、やっぱ焼き鳥食べたくなってきた。焼き鳥でいい?」

「おいいいい!?沖縄料理の真髄どこいったんだよ!?」


母ちゃんと会うと、まるで家に帰ったかのような安心感があった。

そして、いつも通りの空気になり少しだけ元気が出る気がした。


繁華街は明るく建物が反射しあっていて、相変わらずどこからか歌が聞こえてきた。


機嫌がいいうちに、俺は彼女へと連絡をする。

あれをお別れにさせないように、やっぱり最後は笑っていた方がいいから。お別れの前に、少しだけ話せないかと連絡をした。


「直輝!あそこから焼き鳥のいい匂いがする!あそこ行こー!」

「ちょ!待ってよ母ちゃん!!」


はしゃぐ母ちゃんを必死に追いかける。それに合わせて俺はスマホを閉じた。

俺の送った文章は、6秒後に既読が着くのだった。


挿絵(By みてみん)

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