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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第3章 私の過去はAV女優
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私の過去はAV女優 9話

ある日のことだった。


直輝が9歳……小学生の中学年になった時だった。

直輝はしばらく寝たきりになってしまった。

しかし、私はその時は撮影に夢中だった。


撮影に集中してる私の視点に……直輝は気がついたら外れていた。

私が、不意にコンビニに行った時だった。

見慣れた人影を見つけた。

そう、私の直輝だった。

直輝は自分より背丈の高い子ども3人に連れられていた。


「お友達かしら……?」


しかし、私の検討は大きく外れていた。


「おい!ネグレクト!お前うっとおしいんだよ!」

「痛い!やめてよ、圭吾くん!」

「やーい!これ返して欲しければ返してみろよ〜。」


私は目を疑った。

直輝は……いつも家では笑顔だったけど、学校ではいじめを受けていた。

そして、優しい直輝はやり返しはせずにただ呆然とたっていて年上の子に暴力を振るわれていた。


私は……隠れてしまった。

この子達に脅えてる訳ではなく……直輝自身に向き合えなくなっていた。

私は、家事代行にお願いをしていて参観日にも来てやれることは出来なかった。

いや、直輝は私が忙しいのを知っていて……あえてそのプリントを破り捨てていたのだ。

そこを子どもたちに目をつけられていて、直輝はいじめられていたのだ。


結局……私はその時間直輝を遂には助け出すことが出来なかった。


☆☆


「ただいま〜。」

「おかーさん!おかえり!」


直輝は幸せそうに笑顔で帰ってくる。

なんてポーカーフェイスの上手い子どもなのだろう。

本当は泣き出してしまいたいだろうに。


「ねえ、直輝……嫌なことあったらお母さんに言ってね。」

「え?どうしたの?今日もね、楽しくサッカーしてたんだ!僕は大丈夫だよ!」

「そう!それなら良かった!」


しっかりとした受け答えにいつも騙されていたのだが、よく見ると手足も傷がある。

なんて酷い目に合わされたのだろう。


私は……結局のところ間違っていた。

直輝を守ると思っていたのに……結局売上とかそっちの方を優先して、直輝を守ることすら忘れていたのだ。


自分は……罪悪感でいっぱいだった。

母親失格である。しかも子どもにネグレクトなんて言葉で表現されているのだ、そんなのあまりにも哀れすぎる。


私は、ひとつの決断を降すことにした。

AV女優を……やめよう。


そのためには、少し長めに直輝と対話しておきたい。


「ねえ、直輝?」

「どうしたの?」

「明日、ドライブに行こっか!」

「え!いいの!」

「もちろん、とても綺麗なところに行きましょう。」


☆☆


私たちは朝車を出して長野県まで行くことにしてみた。

東京から3時間ちょいで行けるドライブスポットのビーナスラインというスポットである。

茅野市というところから上り、白樺湖から登っていくところなのだが、そこが綺麗と評判なのでそこに行ってみることにした。


「なんか、こうやってお出かけをするの初めてかもしれないね。」

「そうだね!それにしても……綺麗なところだね、空があんなにも近い。」


直輝の言う通り、山が平原のように小さく見えて遠いところも近く錯覚してしまうくらいの雄大な景色だった。

高いところというのは、たまに見ると自分のちっぽけさに驚かされるという感じも……この日初めて気がついた。

私たちは休憩所のようなところで車をとめるとそこにはカフェがあった。


「ねえ、直輝行ってみない?」

「行きたい!」


私たちは店に入る。比較的お客さんが居たのでそれだけで人気スポットだと言うのが手に取るようにわかった。

そこで、私達はボルシチとティラミスを購入する。


「おいしい!特に牛肉がごろごろしていて美味しいよ!」

「ね!ボルシチってこんな味だったんだ。」


ボルシチはいわゆるビーツの入ったロシアの郷土料理である。人参、玉ねぎ、じゃがいも……そしてコンソメが入っており、サワークリームで味付けをしているので意外と食べやすいのも特徴である。


何より、牛肉がトロトロで美味しかった。


幸せだった。いつの間にか軽んじてた息子との時間は……こんなにもかけがえのないものだったのだ。


私達は……山道を歩くと……ふと、涙が流れてきた。


「お母さん?」

「何?」

「なんで泣いてるの?」

「なんでかな……わかんない……わかんないよ。」

「大丈夫?」


私の中で……感情を整理するつもりが余計ぐちゃぐちゃになってしまった。

この仕事も気に入っていた……しかし、私はこれからも直輝を守らなきゃ行けない……でもこの時には私は25歳、まだまだ精神が塾してはいなかった。



「直輝……ごめんね?そばにいて上げられなくて……とても寂しくて辛い思いをさせていたわ。」

「んーん、そんなことないよ。だってお母さんはいつだって帰ってきてくれるもん。仕事大変なんだろうけど、いつだって僕のことを大事にしてくれるから……僕はお母さん大好きだよ。」

「直輝……直樹……直輝ーー!ごめんね……ごめんね。」


私は、天空の草原でひとつの決意をすることにした。

AV女優をやめようと……もう直輝を傷つけないようにと。

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