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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第24章 雪と温泉とウィンタースポーツ

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月下に灯るメイド長 1話

私こと神宮寺ことねは厳しい状況に置かれていた。


「スミマセーン、これから4人入れますか?」

「申し訳ございません、ただいま満席となっておりまして……30分以上お待ちいただくかと思います。」

「まじっすか……。」


私は入口でお客様に謝罪をするが、その間にもトラブルは続く。


パリーン!


「ちょ!にゃこちゃん!大丈夫!?」

「ふええ……舞衣先輩。」

「大丈夫、片付けるから。」

「おじょーちゃん!テキーラと日本酒はまだかね!」

「はい!準備しますね!」


私は今日、この秋葉原にて自分が経営するメイド喫茶1号店を構えるのだった。


オープン景気ということで、テーブルはあっさりキャパオーバー。

慣れてない女の子も採用したばかりで、対応もままならない。

事前に用意した食材もあっさりと無くなって仕入をしようかも悩んでいた。


この瞬間、自分の店という責任を持つことの難しさにこれでもかと打ちのめされていた。


さて、元々はレンタルキッチンでやっていた私が何故こんな思い切ったスタートをしたのかは、振り返ること1ヶ月ほど前になる。


☆☆


「……お帰りなさいませ。」

「おー!ことねちゃん、今日も会いに来たよ。」


この人はケンちゃん。

最初のメイド喫茶時代から10年も推してくれて、それからもこうして通ってくれてるご主人様だった。

どうやら、この地域の地主さんらしい。


「……あれ、ケンちゃんなんか元気無いわね。」

「そりゃあそうだよ!最近秋葉原が魔境と化してるんだよ!」

「……魔境?」


そういって私は彼の好きなハイボールをテーブルに渡すと彼は何も言わずグイッと勢いよく飲んだ。


「あれから、たくさんのコンカフェができた。」

「……らしいわね。」

「でもよ、そのほとんどがぼったくりのガルバだ!オタクはただ何かを推すことで人生を楽しめるのにいつの間にか搾取される世界になってるんや!」

「……いやいや、言い過ぎじゃない?」


どうやら、ケンちゃんは最近コンカフェが増えてるもののぼったくり化が増えてることに怒っていた。


「いや聞いてくれよ!女の子ドリンクで8000円!しかも自動延長でこの前は少し飲んだだけで3万円も請求されたんだよ!」

「まあまあ……。」


まあ確かにお金はほぼキャバクラみたいなものである。

でも、コンカフェというのは正直金額の帳尻を他店舗と合わせてるわけではないので想定内で言われれば想定内だ。


「なあ、ことねちゃんはどうなんだ?」

「……ケンちゃん、飲みすぎよ。ちなみにどうって?」

「ことねちゃんは、正直まだまだ俺たちにとってはアイドルだ。」


やめて欲しい、そろそろ30になるから。


「ことねちゃん、お店出さないか?」

「……いや、そんな金無いわよ。」

「借入れとか!」

「……いきなり借りれるつてはないわ。」


私はこうしてレンタルキッチンでメイド喫茶やれるだけでも幸せだったけど、もう少し貯金ができたらやってみたいなとは思っている。

あのころと比べてはバチバチとしなくなったし、女の子のプロデュースもないから確かに熱量としては温いとは思ってはいた。


すると、他のお客さんも、それを聞いてこちらに座ってくる。


「隣、いいか?」

「……たかしさんも、どうしたの急に。」

「それは確かに私も思うところがある!それにことねさんのお店は不定期で入りずらいんだ!」

「……それはごめんなさい。」


こっちもやっと利益が出てきたところでやはり毎日やるには人手もお金も足りなかった。

しかし、そんな不満を言ってくれるのはありがたかった。


「さて、実はこのたかし……経営コンサルの仕事もしている。」

「まじか!たのもしいな!」

「……え?」

「ことねさん、クラウドファンディングしましょう!」


いきなり何を言い出すのだろう。

今は接客中だけどあまりにも不穏な空気にタバコを吸いたくなってきた。


「……すみません、そういったものは。」

「ことねちゃん!そういう話をしてる訳じゃないんだ!やりたいのか、やりたくないのかって話をしてる。」


普段端っこの席でニコニコしてるのに今日に限ってケンちゃんは力強く声を荒らげた。

いや、どんだけ熱が籠ってるのよ。


「秋葉原なら、坪単価を考えれば居抜きで800万もあればオープンできる!」

「……わかりました、クラウドファンディング募集してみますか。」


どうせ、集まることはないと思っていた。

私はその日その男とインスタグラムにクラウドファンディングを公開してみた。

一応リターンとしてはドリンク代や来店代を安くするというごくシンプルなものにした。


募集として1200万あれば足りると思って、私は密かにそれを募集していった。


しかし、それが大きな転換期だった。


「え、ことねちゃんお店出すの!?」

「まあ……クラウドファンディングで貯まればですけど。」

「すげーじゃん!みんなでメイド喫茶作るって楽しそうだな!投資するよ!」

「……え?」

「俺も俺も!少額だけど……これも推し活として!」


幸か不幸か……私のお客様、もといご主人様たちは金を持ってる人が多かった。

地主や経営者、さらにはマンションを持ってる人など……クラウドファンディングを公開して1200万なんて貯まらないだろうと思ったけど、1ヶ月でトントン拍子に溜まってしまった。


「……どうしよう、舞衣ちゃん。予定の金額まで集まっちゃった。」

「えへへ、まあ10年もメイド喫茶頑張った結果ですね。」


それに対して、ずっと一緒にメイド喫茶をやってる舞衣ちゃんは嬉しそうだった。


「ことねさんは、どうしたいんですか?」

「……どうって。」

「まだ心ここに在らずだけど、本当はお店持つの夢だったんですよね?」

「……確かに。」

「私は、そんなことねさんを応援したいんですよ。ことねさん、一緒にどうするか考えてみませんか?」


私は頼もしい仲間に恵まれたと目頭が熱くなった。

確かに流されてここまで来たけど、これからは流されるのではなく自分の意思で決めようと思った。


「……私、やってみたい。あの頃のように頑張りたい!」

「うん、それでこそことねさんです!」


私はやることを決めて静かにタバコを吸う。

ゆっくりでもいい、まずは小さなことから始めてみよう。

仕事終わりの小さなレンタルキッチンで私は静かに狼煙を上げていくのだった。


挿絵(By みてみん)


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