雪と温泉とウィンタースポーツ 12話
「なんじゃこりゃー!!」
朝起きると、それはもう真っ白で白銀の世界が広がっていた。
あまりにも白すぎて……道が無くなってるほどに。
ハイエースも雪が積もり完全に運転できない状態になっていた。
「……母ちゃん。どうする?」
「え、私に聞く?」
俺も母ちゃんも辺りの自然の厳しさに完全に思考がフリーズしていた。
「すみませんねぇ……、道が使えるまではお待ちいただければと。」
女将さんも深々と謝罪をする。
昨日は夜まで吹雪だったけどここまでとは想像はつかなかった。
当たりを見ると周辺の地域の人達も立ち往生している。
待つのもいいけど、俺は別の気持ちが勝っていた。
「母ちゃん、雪かき手伝おう。」
「ええ!?」
「そうすれば帰れるのも少し早くなるし、俺はこの街の力になりたい。」
俺がそう伝えると母ちゃんは妙に複雑な表情をしたあと、深く頷いて俺の目を見た。
「さすが私の子ね!わかったわ、私もやる!」
「母ちゃん……サンキュー!」
俺は女将さんにお願いをして雪かきの道具と防寒着を借りて雪をかく。
周辺の雪を指定の場所に集めるのだが、少し運んだだけで普段使わない筋肉を酷使して息が上がっていた。
「これ……結構疲れるな。」
「ねー!まだこんだけしか運べてないのに。」
雪かきとは本当に地味な作業だった。
この地域の雪は柔らかい雪なのだけど、塵も積もれば山となるとはよくいったもので重なった雪は驚く程重かった。
完全にボランティアもいいところだったけど、俺はこの初めての気持ちがとても好きだった。
「直輝、本当に変わったね。」
「あ?何だ急に……よいしょっと!」
「去年の直輝なら……絶対こんなことしようと……思わなかったのに……えい!!」
作業をしながらそんな会話をする。
身体は暑くなり、でも手足だけは冷えてる不思議な感覚だった。
「かもな、でも色々あって人の役に立ちたいと思ったんだ。」
「いいよ、私はそれを応援するから。」
そう言って雪かきをどんどん進める。
ハイエースの周りだけでなく、宿の敷地や道路の雪もかいていく。
少しずつこの目に見える作業感に快感を感じてるのと、これが社会に貢献する気持ちだと思うと少しだけ胸を晴れるような気がした。
昔の自分は自分のことで精一杯なのに、今は少しだけ違う。
だからこそ母ちゃんは変わったと言ったのかもしれない。
雪をかくこと1時間……まだまだ先は見えないけどとにかくできることまでやろうと思った。
そんな時だった。
「水くせえな……直輝よ!」
飯田が隣に立って雪をかく。
飯田だけじゃなかった。
今回旅を共にしてくれた友人たちがみんな雪かきの準備をしてもう始めていた。
「なおっち、おまえはいつもひとりで突っ走るな。俺らも頼ってくれよ!」
「龍も……。」
どうやら、俺だけではここまでこれなかったみたいだった。
みんなとこうして協力しあったのだから、今があるという事をこの人間関係で再認識された。
疲れてたはずだったのに……さらに気力が湧いてきた。
「よし……みんな、できる限り雪をかくから力を貸して欲しい!」
そういうとみんな笑顔でアイコンタクトをして作業を始めた。
その様子を見ると、まわりでも面白い光景が見えた。
地元の人たちももちろん、観光客や外国人もそれを見て雪をかき始めたのだ。
こうして作業すること数時間……完全に通行止め状態だったこの街は車が通れるくらいまで回復したのだった。
「すみません、助かりました。」
「いえいえ、こちらもお役に立てて何よりです!」
そう言って俺たちは雪かきの道具を返す。
「いやー、まさか記録的な豪雪になっていたとは思いもしませんでしたけど。」
「この地域は、助け合って生きてるんですよ。」
「そんな気がします。」
今回は観光できてたけど、もちろんこの地域に暮らす人達もいる。
毎日雪かきをして……逞しささえも感じていた。
東京とは違って、支え合う文化がとても新鮮だったけど俺はこの土地が好きになっていた。
「じゃあ……またいつか。」
「ええ、本日はありがとうございました!またお越しくださることを心待ちにしております。」
「ええ、きっと。」
そう言って、俺たちはハイエースへと乗り込む。
野沢温泉村はとても良いところだった。
温泉は気持ちが良かったし、雪が美しくも厳しい自然を物語っている。
でも、そこに集まる明るく陽気な人々たちは一体感がありいつかまた遊びに行きたいと感じていた。
「さてと……みんな、忘れ物はない?」
「「「大丈夫!」」」
「OK!じゃあ発進するよ!」
ハイエースは雪道を抜けて進んでいく。
道路は重機で道が出来ているが、歩道は雪が積もりすぎて人一人分の高さまでつみあがっていた。
ゆっくり、滑らないように安全運転をする。
少しスリルはあったけど、それよりも少しだけ疲労が勝っていたので俺は少しだけウトウトしていた。
そして、ゆっくりと車に揺られながら……目を閉じていくのだった。




