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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第24章 酒とタバコとバレンタインデー

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酒とタバコとバレンタインデー 4話

家の中でWeb会議が始まる。

今日は小説の締切に間に合ったのでそれの添削も含めての打ち合わせだった。

ちなみに私はある編集部の元編集長が見てるので結構厳しい。


最初は私を拾ってくれた恩人だったけど、大体3~4回はボツにされる。

私は今回の作品を既に5回も全てボツにされてボロボロだった。

何十万文字のガラクタの上に私は立っている。

それだけ、幾つものメディアが私に期待している証拠なのだ。


「おー!お疲れさやちゃん。」

「編集長〜お疲れ様でーす!」

「ばーか、今俺は常務だよ、敬語使え敬語。」


ちなみに会議中はお互いシラフでないのも2人だけのルールだった。年齢差は恐らく20以上離れてるのに本当にフランクである。


「どーよ、調子は〜。」

「ねぇ〜今回まじで厳しくない?」

「うるせえよ、お前さんの映画化した翼の折れた天使の興行収入覚えてるか?」

「んなもん覚えてるわけないよ〜。」

「35.2億円だよ。お前はその金額を背負ってるんだ。お前はそれを越えなきゃいけないんだよ。」

「生きづらいよ。私はただ酒を飲んで書きたいだけなのに。」

「いや、それがプロだからな。それで……さっきのやつ見たぞ〜。」


そう言って、編集長(常務)はダルそうにパソコンをカチカチと触り私の送った小説を開く。


「うん……なんつーか、身近な人に感謝を覚えたような感じがするな。相変わらず難しい言葉ばっか使うけど、登場人物が恋愛を通して成長する過程と身近な存在に感謝するところはすごくいいと思う。若年層には刺さるだろうな。」


それを言われてドキッとする。

編集長はこのようにただの文面でも私の気持ちを的確に汲み取っていく。


「うん、とりあえずはこの方向で進めよう。物語の方向性さえ決めればあとは自由に書いても大丈夫だぞ。」

「ほんと?じゃあ、1回書いたら通るかな?」

「んなわけねえだろ馬鹿野郎。多分何回はボツ出すからな。」

「こ……この鬼め……。」

「いいじゃん、俺はお前と世界を動かすなら鬼でも悪魔でもなるよ。お前はその方がいい作品を作るんだ。」


まあでも、今の名声は確実にこの男のおかげである。

正直ぐうの音も出ない。


「へ……編集長!最後に相談いいかな!」

「あ?なんだ。」

「その〜いまね……同居人と喧嘩して家出してて、どうすれば仲直りできるかなーって。」

「……切っていいか?」

「待って!お願い〜!もう10年の中じゃん!」


この男、本当に血が通ってるのか?

あまりにも即断にびっくりしてしまったが、この男に人生相談すると的確に答えてくれるのだ。


「お前な……なんで物語の人間関係は書けるのに自分の人間関係を書くことができないんだよ。」

「だ……だって、何言えばいいかわかんないし、嫌われたらどうしようって。」

「ぷははは!おまえ……マジで面白いな。人間関係なんて気にしなかった一匹狼のお前が、そうなるとはな。」


そういって、男はグイッとハイボールを飲み干す音がする。

どうやら、私の話を肴に酒を飲んでるようだった。


「んなもん、ごめんって言えばいいんだよ。」

「で……でもきっかけが。」

「あ〜そうだな……2月だしバレンタインでチョコでも作ってやればいいんじゃないか?」

「チョコ?」


私はポカーンとする。

そういえば人生で誰かにバレンタインチョコなんて上げたことない。

ことねぇとかに聞けばできるのかな?


「……編集長、私の物語いつもベタって没出すのに、私のアドバイスはベタじゃん。」

「うるせえ!社会人はベタな展開を繰り返すから信用が積み重なるんだよ!!」

「ご……ごめんて。」


そう言って、一括される。

まあ……今は常務になる男だから言葉の重みは違う。

これも良いアドバイスなのかもしれない。


「まあ、感謝は適度に伝えな。俺も嫁さんには世話になってるから適度に感謝の気持ちを伝えてる。小さなことでもありがとうって言うだけで人は救われるもんだぞ。」

「……そうなんだ。」

「まあ、やってみろ。お前さん……そういう経験も小説に良いアクセントになるから、書くだけでもいいがそういう経験も積んでみろや。じゃあ……俺次の予定控えてるから、来週までには次の締切終わらせてこいよ〜。」


トゥルン。


そうなってWeb会議は終了している。

それと同時に送った原稿の添削も丁寧に送られてきた。


PDFには、スキャンされた私の文章と手書きで添削と校閲をしたあとが殴り書きされていた。

私はそれを見てクスッとする。


「……ったく、相変わらずアナログだな。」


でも、そのなぐり書きが妙に優しく感じた。


「……終わったみたいね。」

「ことねぇ、ありがとうね。泊めてもらって部屋も貸してくれて。」

「……いいのよ、その様子だとやっと通ったみたいだし今日はご馳走よ。」

「うわぁ!マジで?」


そう言って、リビングに行くと和牛と豚肉とレタスが並べてあり、真ん中に鍋があった。


「……ふふん、今日はしゃぶしゃぶよ。」

「まーじー!」

「……ほら、たんとお食べ。」


私は、疲れた身体に肉を流し込む。

それに合わせてビールも飲むと、疲れたからだに炭酸とホップの苦味が染み込んで全身が快感に溢れた。


「そうだ、ことねぇってバレンタインチョコとか作ったことある?」

「……逆に無いの?」

「無いよ〜!施設育ちの後は小説しか書いてなかったし……編集長に仲直りでれんれんに作ってやったら?って言われた。」

「……私も個人的に作ろうかな。」

「え!いいじゃんやろうよ!」

「わかったわ。」


そう言って私たちは小さな約束を決めて、和牛をお湯につけしゃぶしゃぶをする。

さっぱりとした和牛は脂がほんのりと甘く、私の空腹を満たしていく。

そして、早くれんれんに会いたい気持ちがより一層強くなるようでもあった。


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