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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第18章 松本みなみの婚活日記
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松本みなみの婚活日記 17話

私たちは小田原駅に到着をする。


まだまだ日は沈む気配はなく、駅は外国人やビジネスパーソン、夫婦などで賑わっている。


しかし、駅に着くと吉良さんは何かひたすらスマホを見ては一生懸命検索をしている。

そして、何かに気がついたかのように繁華街に近いところに出てゆっくりと並んで歩いていく。


ここは下町の飲み屋街みたいな感じで、私の肝臓がアルコールを欲していた。

いかん、めっちゃ酒を飲みたい。

もう飲みかな?とおもったけど、吉良さんはさらに先へと進んだ。


そして、しばらくすると堀に囲まれた純白の小田原城が佇んでいて、私たちは小田原城を目指していることに気がついた。


「松本さん!どうです?小田原城なんて!」

「悪くないですね!私一応社会科教諭なので。」

「あ……そうか!じゃあ歴史を?」

「いえいえ、そこまで偏差値高くないので地理教えてますよ。よくヤンキーから地理子なんて言われてます。」


すると、少し意味がわからなかったのか吉良さんは疑問顔を浮かべていた。

まあ、変なニックネームだから伝わりにくいか。


「もしかして、僕も地理子さんと呼んだ方が……。」

「殺しますよ。」


流石に仕事だからと妥協してるけど、プライベートでそのニックネームは殺意が湧いてくる。

何よ、地理子って。


「すみません、なんか松本さんってよそよそしいかなとか思って……。」


ああ、なるほど。

この男は私と仲良くなりたいんだ。

それで呼び方がお互い未だに苗字だから違和感があるのかもしれない。

そういえば、この人からすると私って急にジョジョキスをした人だし気があるのも仕方ないか。


「みなみ!」

「……へ?」

「みなみさんとかでいいですよ。私も誠二さんって呼ぶから。」

「みなみさん……!みなみさん、みなみさん!」

「ちょっと!恥ずかしいからやめてよ!」

「あはは……なんか、僕苗字嫌いだったから嬉しいですよ。いつも吉良さんの息子さんとかって呼ばれてたから!」


ちょっとキュンと来てしまう。

なるほど、父親に対するコンプレックスだったのか。

もうアラサーだと言うのに妙に可愛げがある。

純粋無垢な顔は母性本能をくすぐってしまうようだった。


私たちは木の橋を渡り小田原城へと入っていく。

しっかりと城壁で構えられていて、それでいて小さな山のような白になっているので難攻不落の城と呼ばれても納得である。


堀には鯉が沢山いて、大きさは1mを簡単に超えている。

そして、こちらの顔を見ては口をパクパクさせていた。

ちょっとその様子がキモかったのでゾワッときてしまう。


私たちはどんどん小田原城の本丸へとめざして行った。


「はぁはぁ……。」

「……大丈夫ですか?みなみさん。」

「ちょ、やば……ふぅ〜。」


私は、普段デスクワークで体が弱っているのかベンチに腰掛ける。すると誠二さんは笑顔で暖かいお茶を買ってくれたので私はそれをごくごくと飲む。


寒かった手足が温まるようでおっさんのように飲んだ後に感嘆を漏らして言った。


「あ〜、すみません。」

「いえいえ!中々の急坂ですよね!」

「……まったくよ。」


気がついたら、少し距離を近くなったのかこの人に対してタメ口で話すようになっていた。

なんというか、従順な犬みたいな感じで支配欲みたいなものが満たされるんですよね。


「最近運動とかしてなかったからな〜。」


自分のお腹を触る。

筋肉がなくて贅肉で溢れている。

痩せてはいるものの、筋肉がないので妙に私の体は弱々しかった。

それに……肩もデスクワークで凝っているを感じる。

そこだけ重力が重いのと血流が悪いような感覚があった。


「誠二さん。」

「はい!」

「私……肩凝ってるのよね。」

「揉みますよ!」


いや即答かい。

もう少しプライドも高くていいと思うんだけど……。

すると、誠二さんは私の背後に回って肩に手を当てる。

そして、まずは首の辺りを優しくほぐしてくれる。


「……あ。」

「い、痛かったですか?」

「んーん、気持ちいい、続けて。」


なんというか、この人のマッサージがめちゃくちゃ美味かった。

首を少しやったら肩をほぐす。

そして、腰と背中の間にもツボを理解してるのか押してくれたりして妙に心拍数が上がり血流が良くなるのを感じる。


小田原城を見ながら、日向ぼっこして肩もみをしてもらうのが驚くほど気持ちよくて、妙に声が出てしまう。


「ん……ふぅ……んぅ。」

「気持ちいいですか?」

「うん……上手いわよ。」


極楽だ〜。

妙に声が出てしまうほどである。

そういえばここ最近エステとかサボってばっかだったな〜。


「それにしても誠二さん肩もみ上手ね。よくやってたの?」

「はい、よく父にやってました。」

「へぇ〜そりゃあ嬉しいんじゃない?」

「確かに……いつもは社交辞令とか意識してたり、父に対抗するために実績作りの為に反発してばっかでしたけど、この時間が1番幸せだったかもしれないです。」

「ん……んぅ……いつか、お父さんにしてあげたら……んぅ……どう?」

「確かに……。」


この男は、どこまでも優しい。

でもそれって、父親とか色んな人の顔を伺っていて自分の本音を出すのが苦手なのかな、なんて思ってしまう。


これは上手い……この人フリーランスよりも整体師向いてる気がするんだけど。


「あの……みなみさん?」

「んぅ……なによ?」

「ちょっと、声出しすぎて……見られて恥ずかしいんですけど。」

「……は?」


周りを見渡す。

妙に多くの人が私をみていた。

まるで性的な何かを見るような目で。恥ずかしそうに。


「あわ……あわわ……。」

「……そろそろ、出ますか?」

「……そうね。」


彼のマッサージは気持ちが良かった。

周りを気にしないほど私は喘いでいてそれが傍から変質者に見えていたのかもしれない。


私たちはそそくさと小田原城へと早歩きして、この場を離れようとする。

すると、妙にさっきよりも軽く感じる。

血流が良くなり、活力に溢れてずっと頭を蝕んでいた偏頭痛が少しだけ和らいだ気がした。


「すみません、少し強かったですか?」

「……いえ、今度は人がいないとこでやりますか。」


私たちは、少し急な階段を登り小田原城へと消えていく。

焦りのせいか少しだけ体が熱くなるのを感じた。


「誠二さん、またお願いしますね。」

「はい!いくらでも!!」


私たちは小田原城へと入り、それを幕づけるようにもみじの吹雪が舞い降りる。

冬の空は少しだけ城の敷地を照らし、砂利を乱反射して静かに歴史を語るようでもあった。

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