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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第18章 松本みなみの婚活日記
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松本みなみの婚活日記 9話

「さあ!今日はパーッとやるわよ、カンパーイ!」

「……乾杯。」

「か……カンパーイ!」


アラサー女3人が生ビールの入ったジョッキをかわし、3人で酒を飲む。

昨日と一昨日はなんか空虚感凄すぎて食事をほとんど取らなかったので本当に久しぶりの食事だ。


テーブルには、アヒージョ、塩キャベツ、牛すじ煮込みなどのジャンルを問わないツマミが溢れていて、少し濃いめの味が私の体に染み込むようだった。


「かーーーっ!くぅーーー!!」

「宮島先生、いい飲みっぷりですね。」

「もちろんよ!仕事終わりのビールほど美味いものはないわ!」


宮島先生もおっさんみたいな一面があって少し安心する。私も一気に半分以上ビールを飲んでのどごしを味わうように飲んでいた。


「そういえば、宮島先生はあの後2人とは……?」


もう合コンのことはほとんど忘れかけたけど彼女なりの婚活の仕方とか……色々気になるものはある。

選り取りみどりな感じがするから私とは世界が違うのかも知れない。


「んー、連絡先交換した程度ね。」

「え、以外です。」

「なによ!私だってもう遊びきったから男くらい選ぶわよ!もう若くないんだから……どっちかと言うと金銭感覚とか一緒に生活する基準で男を見るようにしないも結婚できないか地雷踏むわよ。」


若くないって言葉が妙にぐさりと刺さる。

26ってもう若い部類に入らないのか……。


「……全く、宮島先生はもっと味わった方が良い。」


佐々木先生は物静かに飲みながら既に2杯目を飲み干そうとしていて、私達よりもはるかに早いペースで飲んでいた。


「いや!佐々木先生、あんたねぇ……私よりも一回りも歳上なのに遊びすぎよ。」

「……失礼な、より良い子孫を選ぶようにと遺伝子に従順なだけ。」


え、佐々木先生って歳上なの?

身長が140cm台だし、ショートボブが幼い雰囲気を出していたから24くらいかと思ってた。


「え、佐々木先生っていくつなんですか?」

「……ふふん、29よ。お姉さんと呼びなさい。」

「29!?」


本当に一回り歳上だった。

私が中学生の頃にはこの人は高校生だったと言うくらい離れてる。

それにしたって見た目が若すぎる。さっき入店した時も年齢確認されるくらいには若かった。


「私も最初はびっくりしたけど……全然歳上な感じしないからラフに接してるけどね〜。」

「へ……へぇ……。」


宮島先生ってホントすごい。

こういったらフランクな所は誰にでも好かれる所以なんだろう。

私は異性どころか同性すら距離感が分からなかった。


「そういえば、佐々木先生はあの男とどうだったのよ。」

「……あの後ホテルに直行した。」

「ホテ!?」


確かにあの晩はトラックの運ちゃんとかなりイチャついていたけれどまさかそこまで発展したとは……。


「もしかして、今付き合ってるんですか!?」

「……逃げられた。」

「…………はぁ?」


逃げられる?可愛い女の子をお持ち帰りして逃げる男っているのかな?それに相手は個人経営してるしメンタルだって強そうに見えたけど……。


「…………朝までぶっ通しで襲ったら「もう無理です!」って服もまともに着ないまま逃げたよ。」


その場の空気が凍る。


「ちなみに何回ほど?」

「んー、7回かな……9時間ぶっ通しでやろうとしたら、逃げられちゃった。」


こんな小さいからだからそんな体力があると思うと人って見た目で決まる訳じゃないんだなと思う。

というか、私はビール2杯目なのに彼女は涼しい顔して4杯目を飲み干そうとしてたので体の作りが根本的に違うのかも知れない。


「まあでも……仕方ないとはいえ拒絶されると傷つきますよね。」

「……なんで?」

「え、なんでって……そういうことをするってことはお互い好きな部分があったんじゃないですか。交わした後に拒絶って私だったら泣きますよ!」

「松本先生、この子にそんな倫理観ないわよ。」

「……えへへ。」

「褒めてないわよ!」


宮島先生はジト目で佐々木先生を見つめると佐々木先生はダブルピースをしていた。


「…………だって、私の体力についていけないのなら、その程度の男だったってことだから、次あるのみ。」

「全く、理解できないです。」

「理解しなくていいわよ。私もこの子半分人外だと思ってるし。」


そう話終える頃に私たちはビール3杯、佐々木先生は6杯を飲み干そうとしていた。


「まあ、だから……ある意味合コンは3人今回は敗北よ!松本先生1人負けじゃないってこと!だから……もっとさらけ出しなさい。」

「……もちろん、もし寂しかったら私が相手でも……。」

「辞めてくれない!?真面目なこと言ってるのに急に気持ち悪いこと言うの!!」


大きく見えていた2人が急に等身大に見えてきて、私もここに居ていいんだと言う感覚に溢れてきた。

それと同時に……妙に涙が出てくる。


「……松本先生、泣いてる。」

「すみません……2人には迷惑かけたなとか……色々、気持ちが混ざってなんて言えばいいか……分かりません。」

「あははは!!良いのよ、せっかく仲良くなれたんだし……色々愚痴っていきましょ!今日は水入らずよ!」

「……そんなの気にしなくていい、私も松本先生と話すの楽しいから。」

「ありがとうございます、松本みなみ!今日はじゃんじゃん飲みます!」


「「おー!!」」


3人の時間は、ものすごく楽しかった。

あれから私も酒のペースを上げては、仕事の不満とか……結婚への焦りとか、ホストが実はちょっと楽しかったとか全てを吐き出していった。


酒が気持ちよく周り体が軽くなる感覚があった。

言葉がどんどん出てきて……賑やかな居酒屋の雰囲気が妙に心地よく感じる。


私は久しぶりに沢山笑った夜になった。


☆☆


気がついたら、私たちは終電もあって解散をして………楽しい余韻を残しながら私は最寄駅についてあと数分の帰り道で今日が終わるのかと思うと、少し寂しくなった。


まだ、今日に未練があるのかもしれない。

むしろ、楽しかったからこそ希望が未練へと変わったのだ。


私は普段絶対行かないバーの前に立つ。

バーなんてほとんど行ったことないけど、妙にホストの経験が私の行動を大胆にして言った。


私は思い切ってドアを勢いよく開けて一声かける。


「どうも〜やってますか!?」


バーは少しくらい雰囲気で、客は1人だけ座っていて……バーテンが1人グラスを拭いてるという物静かな雰囲気だった。


「お好きな席どうぞ。」


私は、座る席を考えたのだけど、ただぼんやりと飲むよりは誰かと話したい気分だったので先客から1席離れて隣を座った。


「じゃあ!このお兄さんの横で!」

「あはは、お姉さん……大胆だね。何飲む?」

「んー、じゃあバーテンさんのおすすめで!」

「じゃあ……飛びっきりのやつで。」


すると、バーテンさんは手馴れた動きで氷とシロップ、いくつかのお酒を組み合わせてシェイカーで子気味よい音を奏でてから私の前にカクテルを出した。


「柑橘系で仕上げてみました。」

「ひゃあー!私ここから近いんですけど……こんなオシャレなお店だったんですね!」


私は味わうようにカクテルを飲むと……ほろ苦いレモンと甘いオレンジ、それから……ピーチのリキュールも入っていて甘く幸せになるようなカクテルだった。


「美味しい!天才ですね!」

「あはは……そりゃどうも!」


店内はジャズのような曲で少し薄暗い雰囲気が大人なお店を演出していて、妙に私の心を引きしめた。

最近は大変な事ばかりだったけど、知らないことを知るって実はいいことも沢山あるのかも知れない。


「ほら、お前も……そろそろお酒無くなるぞ〜。」


すると、バーテンさんは隣の男をジト目で見つめると男は少し疲れたような……遠い目で虚空を見つめていた。


歳は私と同じか少し上だろうか?

若干猫背だし、メガネで目の下にクマができている。

大丈夫かな……?この人。


「あの……この人は?」

「コイツはキラっち!ここの常連だよ。」

「キラっち?なんでキラっちなんですか?」

「ああ……僕の名前、吉良 誠二っていうんですよ。」


男はやっと私に気がついたかのようにぼんやりとした目で微笑みかけた。

イケメンとは程遠いけど、笑顔は少し可愛いと思ってしまった。


「吉良さん……だからキラっちなんですね!」

「気軽に呼んでください……えっと……。」

「松本みなみっていいます!」

「じゃあ松本さんで。」

「えー、なんか普通によそよそしいですよ〜。」

「じゃあ松ちゃんで。」

「それだと大御所芸能人と被るじゃないですか!」

「ど、どうしろと……。」


私は急にハッとしてしまう。

酒が入ってるとはいえ……小学生以来に同い年くらいの男性と普通に会話ができていたことに。


吉良誠二、初めて会うこの幸の薄そうなこの男が後々に私の人生を変えることになることを……この場にいる人間は思いもしなかった。


バーの店名は……アーチ。

暗闇に紛れた静かなバーは今夜も人と人を繋ぐ架け橋となる。

最後まで見ていただいてありがとうございます!

松本みなみの今後はどうなって行くのでしょうか?

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