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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第18章 松本みなみの婚活日記
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松本みなみの婚活日記 4話

翌日、相変わらず私は昨日のことがまるで嘘だったかのように仕事に打ち込んでいた。


職員室でも良かったのだが、妙に普段と違うことをしたくなる。

ということで私は生徒会室にて作業をしていた。


生徒の場所だけど、ここは昼間なんかはほとんど使われてないから作業場にも持ってこいだった。

午前中は授業がないからほとんど作業も終わらせることが出来た。


そう、これでいい……今までは残業ありきで仕事していたけどきちんと期限を設ければなんとかなるのだ。


「お疲れ様でーす。」


そんな中、妙にだらけた声が聞こえてくる。

私の1人時間、早速終了。

でもまあ……仕事はあと少しだし作業に没頭するとしよう。


「って松本先生!?どうしたんですか。」

「ああ……天野くんか。」


そう、彼は天野直輝くん。

次期生徒会の議長候補である。

ぶっちゃけ控えめな印象だけどやる時はやる男で文化祭も彼の功績によって作業が進んだそこそこ優秀な子だ。


「すみません!別のとこで作業します。」

「ああ!いいよ……ここで作業しても。」

「あ、いや別に急ぎじゃなかったんで。」

「いや……居て。」


彼なら良い、というか生徒の中では比較的話したい人でもあったのでちょうど良かった。

天野くんは少し気まずそうに席に座り私と目が合わないような位置で作業を始めた。


「ねえ聞いてよ天野くん。」

「作業は大丈夫なんですか?」

「いいの!ほぼ終わらせたから。」


私は一度頭の中を整理してから深呼吸して言葉を続ける。


「私婚活始めたの。」

「いいんじゃないっすか?」

「いや、めちゃくちゃあっさりね!?」


もっと笑われたり引かれたりとか、リアクションをとるものだと思ったけど彼は大人の私より大人なのか意外と……いやかなりドライだった。


「だって人って結婚するんですよ、それに真摯的に向き合ってるんです。何がおかしいんですか?」


あ、すごい……達観してる。

シンプルなのに私の事を肯定してくれてる感じがなんか嬉しかった。

あ〜生徒じゃなかったらこの子でも良かったな……いや、それは倫理的にアウトかな。


「でも、最初のイケメンがマルチの勧誘だったの。」

「うわ〜、エグいパターン引きましたね。」

「そうなのよ!もう泣きながら帰った。」

「まあでも……先生頑張り屋だし、きっといい人見つかりますよ。頑張ってください。」


いかん、この子好きになっちゃいそう。

流石、彼女持ちは安定してる。

こういう余裕のある男の良さを17の子に知らしめられる私って女としてちょっと終わってるのかと心配になるくらいだわ。


「ありがとう、天野くん……次の一手を打つ勇気が出たわ!」

「先生……もう行くんですか?」

「ふっふっふ……私には有給が20日もあるのよ!」

「この2年間ほとんど使わなかったんですね。」

「今日は明日までの仕事も終えたし半休使って帰ります!さらば!」


私はコートを着て生徒会室を出た。

いや教師としては半分終わってるかもしれないけどたまにはそういう日だってあってもいい!

私は幸せになるために時には自分に優しくすることにした、それだけに過ぎないのだから。


「あはは……なんか、やつれてたイメージでしたけど変わりましたね。頑張ってください!」

「ええ!」


私は彼を背に部屋を出て次の相手の待ち合わせの池袋に進むことにした。


人通りが多く、賑やかな繁華街である。

オシャレなカフェとかもあるし、もってこいかもしれない。

今日の人はいい人かもしれない。

黒髪で真面目そうだ、服装もそんなに派手じゃないからマルチの勧誘でもない!


私はトイレで化粧を直して髪を整えてから待ち合わせの場所に待っていた。

時間にして30分前、今回はきちんと判断もできるように余裕を持ってやろう。


そう思って、私は指定の場所に待っていた。


さて、チャットのやり取りを見る限りは仕事はきちんと商社の営業職みたいだし、趣味はボルダリングとか至って普通だ。

何から話そうか……、まずは将来像とか決めたいわよね。


そんなことを思ったら指定の時間になる。

さて、鬼が出るか蛇が出るか……私はドキドキしながら池袋の真ん中にて彼を待つ。

良い出会いがあることを願って、自分の見た目が変じゃないかと少し疑って。


人通りが激しくなり、まるで阿波の海のように人が波立てるかのようにうごめいていた。

こんな中をみつけてこれからデートをする。

あわよくば抱かれる覚悟もしていく。


万全の体制なのでどんな相手が来ようとも対処出来るはずだ。


時間は15分を過ぎてきた。

相手に声をかけられる所か……それらしき人物を見つけることさえもできなかった。


不安になり追い連絡をする。


「すみません、到着しました。今はどちらにいらっしゃいますか?」


そうメッセージを送っては少し壁に背を預け上をむく。

ちょっと遅れてるだけ、それだけの話だ。


「もう少しお待ちしております、せめて連絡を下さったら幸いです。」


更に追い連絡をしてから、私は腕を組んで寒さを凌ごうと奮闘する。

大丈夫、私は待てる女……余裕があるのだから、

そう言い聞かせて30分が経ち、1時間が過ぎ去ろうとしていた。


おかしい、これは明らかに異常だと判断した私は彼へのチャットを開いたのだが、あることに気がついた。


「……………………ブロックされてる。」


どんな相手でもこいと言ったものの、流石に来ないというパターンは想定外だったので私は更に30分ほど呆然した後に池袋を後にした。


☆☆


「うええええええ!!」


私は酒を飲みながら泣いていた。

そんなに私の魅力は無いのか、ブスなのか?

なんて鏡を見てはまた泣き出していた。


普段よりちょっと濃いめのメイクを見つめ直しまた私は号泣する。どうやら人によってはダブルブッキングをする人も居たり、こういったドタキャンをされることもあるらしく、想定外のパターンに自信をなくしていた。


顔みてブスだなと切られたのか、それとも追い連絡し過ぎて引かれたのかは定かではないけど……原因が分からないこのパターンはある意味1番嫌なものだと感じ妙にマンションがいつもより冷え込む感覚があった。


「二度と婚活なんかするか!ボケェ!」


そう言ってスマホをベッドに投げ出してわたしは体育座りで酒を飲みまた泣き出す。

今日の私頑張ったのに!明日にしわ寄せが来ないように最大限頑張ったのにこのパターンは想定外というか、理不尽すぎるわよ!


そんな叫びも出来ないほどわたしは泣いていた。


すると、突然さっき投げたスマホから着信音が流れる。

なによ!こんな時に……。


スマホの画面をみたら、天野くんが電話をしてくれていた。

生徒会の連絡かと思い、これも仕事捉えて私は電話を出る。


「……ぐすっ、もしもし?」

「あ、退勤後にすみません……会計の受領印ってどこでしたっけ?」

「いいのよ……ひぐっ、部屋のキャビンの中に保管してるから。」


そう言ってやれるだけの仕事をやる。

彼は一部私の仕事も手伝ってるのだからこれくらいは誠実にいないとダメだ。


「あの……大丈夫ですか……?」

「ぐすっ……なによ!」

「あ、いやその……めっちゃ泣いてるように聞こえて。なんか嫌なことありました?」


めちゃくちゃ泣いてるのがバレてドキッとする。

私は思いのままを彼に伝えることにした。


「……キャンだった。」

「え?」

「ドタキャンされたの!連絡も無く!」

「……まじっすか。」

「あはははは!笑いなさいよ!ネタとしては最高じゃない?」

「いや、流石に笑えないっすよ。」


そんな彼の冷静なツッコミを受けて私はまた1本缶ビールを空けてすり減る心を誤魔化していた。


「私ってそんなに魅力ないかな、ブス?」

「いや……一般的には綺麗な部類に入ると思いますけど。」

「具体的には?」

「あ……えっと、黒髪がサラサラで綺麗。肌が色白で綺麗、スタイルがスレンダーで魅力的、努力家でいつも一生懸命。」


ちょっと承認欲求が満たされる。

いかん、もっと言葉が欲しいけど流石に10個も離れた女性がそれを求めるのはキモイと思って思いとどまる。


「もうあんたが旦那でいいわよ。」

「いや、俺彼女持ちですし。」


あ〜なんでこの子生徒で彼女持ちなんだろう。


「それに良かったじゃないですか、早い段階でクソ野郎だと分かって……好きになってからクソ野郎判明する方がしんどいっすよ。これも経験です。」


すごい、めちゃくちゃ年下の子に諭されてる。

これは大人として色々終わるから、流石にここまでにしよう。


「ありがとう、天野くん……少し元気が出たよ。」

「頑張ってください!明日も生徒会室で元気な顔見せてくださいね!」

「ええ、今日は迷惑かけたわね。」

「いえいえ、それでは……。」


彼との電話が終わり、また私は今日あった嫌なことを全てアルコールに流し込む。

少し感覚は麻痺してきて、立ち上がる元気すらももう無くなっていた。


今日の私はこれでいい……今日のできることは全てやった。

こうなりゃやけだ、とにかく次の土日に会う約束を作ろう。


もはや私は教師ではなく生保レディのように予定をとにかく作ることにした。

まずはそこからである。


とにかくいっぱい嫌な思いをして、絶対に幸せを勝ち取ってやるんだから。


今日の松本みなみは惨敗、でも経験値は手に入れたので少しレベルアップしたと言い聞かせて、私は深い深い眠りにつくことにした。

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