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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第2章 僕のクラスメイトは托卵女子
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僕のクラスメイトは托卵女子 13話

赤鬼のような形相で立ち塞がる虎ノ門君は圧倒的な力差を表すかのように体が身震いしていた。


流石は学校最強のヤンキーである。

勝てるわけが無いと構え方で分かるほどだった。


「天野は目立たないやつだと思ったけど……能ある鷹は爪を隠すと言うやつだな……面白いから友達になろうぜ!」


言葉は友好的なのだが行動が反比例している。

虎ノ門君は上段の回し蹴りをするのでそれをガードする。

なんとか、致命傷は防いだけど手が痛覚を酷く覚えていて震えているのを感じた。


「やるじゃん!お前最高だよ。」

「そうかい、ありがとう……暴力を辞めてくれると助かるんだけど!」


俺は虎ノ門君の顔面に渾身の正拳突きを叩き込む。

しかし、それをおでこで受け止めてニヤリとしていた。


「やぁだよ♡もう少し遊ぼうぜ?」

「な!」


すると、虎ノ門君の右フックとボディブローがクリーンヒットして体制を崩すと飛び回し蹴りて吹き飛ばされた。

威力もすごいけど……小柄な割に体感もしっかりしていて恐ろしい。

まさに隙なしと言ったところである。


「どうするの〜。王子様〜?お前すごいよなぁ、だって女の子から注意を引くために川崎に水ぶっかけたりしてるんだもん。」

「な!気づいていたのかよ……。」

「もちろん!でもね〜もう少し頭が足りてないんだよなぁ、だって普通に頭数とかが足りてないから足し算ができてない。」


虎ノ門くんは直ぐに俺の意図を読み取ったりするあたり、かなり頭も切れるっぽくて俺は面食らってしまった。


「じゃあ、もうやめよう。この戦いは不毛だよ……君とは分かり合える気がする。」

「あ?お前女守ると腹括ったんならやることやれや!」


虎ノ門君の一方的な暴力が俺を襲う……、一発一発が重いしリズミカルにうごくので俺は為す術などなかった。

やば……血の流しすぎで意識も揺らいできた……。

相手は攻撃をやめようともしない……死ぬ……かも……。


俺の意識が薄まってくる中……微かになにか聞こえた。


「うおおおおおおおお!」


その向かってくるような声は……いるはずも無い飯田だった。


「あらら〜、なんだちゃんと隠し玉いるじゃん。人気ゆるキャラの飯田くん〜君はやっぱり天野の仲間か!」

「い……飯田……。」

「すまん、直輝……俺少しお前のこと怖いと思ってたり……学校からいじめの標的としてお前を守ること……できなかった!」


飯田の第一声は以外にも謝罪の一言だった。

俺は面食らって棒立ちをするが、その言葉でハッと意識が少しだけ戻る。


「きに……してない……よ。にげて……そい…つ、つよい……。」

「まあみてろって……俺も水泳で体を鍛えてるからよ……。」

「……泣けるねぇ〜、でも雑魚が集まったところでありが恐竜に勝てるわけないよね?無理ぽ!」


虎ノ門君はクレイジーとばかりにふざけた言動をとる。

これも彼なりの喧嘩スタイルなのだろう……

正直俺と飯田が力を合わせた程度では勝ち目がなかった。でも、やるしかない!


「飯田……2人がかりでいくぞ!」

「おうよ!」


飯田が殴り掛かるも姿勢を低くしてカウンターの正拳突きをみぞおちに食らう。

隙ありとばかりに俺が前蹴りを入れるけど……左手で当てた所をガードされて足を掴まれた。

俺が姿勢を崩すと虎ノ門君は髪をつかみ顔面を執拗に殴りかかってきた。


「直輝ー!なっ……?ぐふっ!」


飯田が助けにかかるも俺を投げてきて体制を崩された後にトドメとばかりに顔面を殴られて俺たちは満身創痍へと早変わりしていた。

あ〜……これは……負けたわ。

俺たちは目の前が真っ暗になりかけて……虎ノ門君の笑い声が響き渡ってきた。


「ごめ……んな……ちょっと……たすけ……られんわ。」

「いや……きに……する……な!」


俺たちは言葉が詰まるくらいには、喋る元気が無くなっていた。

体中がヒリヒリするし……口の中が鉄の味がする。

景色もぼやけてきて内蔵も冷たく感じた。

でも、ここで負けては行けないと思うので俺はそれでも立ち上がった。頭はもう血が上ってなく……冷静にすらなっていた。


「なあ、なんでお前そんなに必死になれるの?自分に全くのメリットがないじゃん。」


突如……虎ノ門君が俺にそう語りかけた。


「簡単だよ、大事な人だからだよ。これからも彼女が居ない生活なんて考えられない……彼女は僕にとって大切な生活の一部なんだ。」

「へぇ〜面白いじゃん。じゃあこの喧嘩はなんの意味をなすの?」

「二度と彼女に攻撃させないようにするために戦うんだよ。そのためなら例え勝ち目がなくてもやりきる。」


すると、虎ノ門君はふ〜んって言いながら後ろを振り向いた。

どうしたのだろうかと見つめると、何故か周りの5人をすぐさまボコボコに仕出した。

え、どういうこと?


「帰るわ、いいじゃん……お前好きだよ。俺はいつも目の前の奴らなんてぶっ飛ばせばいいし助ける義理もないと思ってるけどなんかそうやって人のために一生懸命になれるなんて素敵だよ!その代わり、言ったからにはやり切れよ!」


そう言って……虎ノ門君は俺たちの元から去っていった。

まだ状況は掴めないのでキョトンとしていたけどどうやら喧嘩はおわったみたいだった。


「な、龍!なんで行くのよ!まだ終わってないじゃない!もっと奴らをたたきのめしてよ!」

「いや、むりぽ。お前一方的に水をかけられた、とか言ってたけどコイツら見てるとそんな感じしないし……嘘って積み重なるほど辛いからな……じゃあな〜。」


しばらく沈黙が流れ……川崎さんはギリギリと歯ぎしりをしてこちらを睨みつけていた。


「形勢逆転だね。」

「うっさい。」

「頼むから……もう二度と佐倉さんを傷つけないって誓ってもらえるかな?」

「いやよ!」

「なんでだよ。」


川崎さんは……怒りのあまりフルフル震えていて今にも叫び出しそうだったけど理由をきちんと教えてくれた。


「だって……私は彼女が許せない。いつも私から大切なものを奪っていくの……!好きな人が出来た時もその人は舞衣がすきだったし、勉強だって……いつも彼女が点数が上だった。生徒会も狙ってたのに……誘われたのは舞衣だけだった……!あいつは……いつも仲良くしてるフリをして何もかもを奪っていくのよ!今もあいつはそうやって自分の本質を大切にしてくれる友達に恵まれてるのも気に食わわない!」


見事なまでの嫉妬だった。

でも、気持ちはわからなくも無い。舞衣さんはいつでもできることは沢山あって優秀なのだ。

俺がなんでも出来る母ちゃんに嫉妬するような……そんな感じだ。


でも、それは積み重なった大きな勘違いでしかない。

舞衣さんにはそんな気持ちは毛頭ないのだ。


「あのな……かわさ、」

「違うよ、彩奈ちゃん。」


俺の言葉を遮る声が聞こえたので振り向くと……舞衣さんが居た。

なんで……?彼女は今日の出来事は一切知らないはずだ。


「私、知ってた。私に攻撃するのは彩奈ちゃんだったって……でもね、私は感謝してるの。最初一人ぼっちだった私に笑顔で語り掛けて一緒に食べたカレーパンの味……忘れないくらいには。」

「な……なんで……。」


川崎さんは顔をぐしゃぐしゃにしていて、いつものゆるふわな可愛い顔とは打って変わってまるで別人のようだった。


「無意識に私も傷つけてごめんね……?こんな私でも仲良くしてくれると嬉しいです。」

「う……うう……。」

「私は……彩奈ちゃんの全てを許します。だから、また友達に……なろ……?」

「うえええええ……ごめん……ごめんね!」


2人とも泣いていた。

10分……いや20分位は泣いていたのだろうか……しばらく俺たちは見ているだけだった。


☆☆


しばらく泣き崩れると……川崎さんは俺たちの元をごめんと一言告げて去っていって、飯田も傷を治すために保健室に向かったので……この場にいたのは俺と舞衣さんだけだった。


「知ってたんだね……。」

「ううん、虎ノ門君が全部教えてくれたの。」

「え、虎ノ門君が?」


なんと、彼女をこちらに呼び出し……俺の事を話していたのは虎ノ門君だった。

僕をボコボコにした張本人だったけどこの件に関しては彼が一番の理解者だった。


「私のために……ありがとうね!」

「……う、うん……。」


俺はどこか心がむず痒いような感触がして咄嗟に彼女に目を逸らしてしまう。

だって彼女へのサプライズで助けたかった……ちょっとそっちの方がかっこいいと思ったし。


「でも、せめてなんで水をかけたかは教えて欲しかったな〜。私は怒ってます!」

「ご、ごめんて!」

「じゃあ、ひとつ言うこと聞いてくれる?」


彼女はずいっと近づいて俺の顔をみる。

よく見ると、泣いていたのか目尻のメイクは少し崩れていた。


「今度……私とデートしてよね。」


棒立ちになる俺。

夕焼けの空は少し黒みがかっており、もうすぐ夜が来るのを告げているようだった。

風は少し涼しく、カラスの声が響き渡っていた。

そんな、周りのことが鮮明に入るくらい……俺の心はキョトンとしていた。

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