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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第17章 遥香と秘境の吊り橋物語
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遥香と秘境の吊り橋物語 10話

「いらっしゃいませ!」

「あの、予約していた天野です。」


旅館に入るとレトロな外装とは打って変わって中は何度か内装工事をしたのか美麗かつ比較的新しい作りになっていて、妙に安堵に近い感情が私たちを落ち着かせる。


「天野様、お待ちしておりました。本日こちらの和室でございます。」

「ありがとうございます。」


直輝は既にネット予約で部屋を手配していてチェックインも彼一人で済ませてしまった。


ずっと引き篭ってゲームしていたあのころが既に遠い昔のように感じた。それくらい、今の彼は大きく成長しているのである。


そして、直輝は部屋を案内し全員部屋に入ったのだが、あまりの豪華さに私たちは言葉を失った。


「おお〜……めっちゃいい。」

「……直輝さん、中々部屋選ぶセンスありますね。」


そう、この部屋は10畳の和洋室でセミダブルベッドが2つあり、温泉が付いている。

しかも裏庭を眺望することができるので畳の香りと川根茶の茶香炉の香りを楽しみながら、自然に癒される部屋だった。


「……最高ですね。こういう日はセブンスターで……。」

「すみませんことねさん。ここ禁煙で……喫煙所しか吸っちゃ行けないんですよね。」

「……ぐふっ。」


なんかことねさんが吐血してるように見えた。

いや、ヘビースモーカーなのは分かるけど、タバコに命かけすぎじゃないの!?


「……じゃあ、喫煙所行ってきましょうかね。」


しかし、気がついたら私たちは畳に座り込んではおしりに根が張ったかのように体がピクリとも動かなかった。


急に運動や運転の疲れがどっしりと身体にのしかかる。


「そういえば、まだ夢の吊り橋行ってないな……どうする?」


直輝がボソッとそう呟いてみんな考える。

今は16時をすぎた時間帯、一応行けなくはないけど……。


舞衣ちゃんは嘔吐してから目が虚ろになってるし、彩奈ちゃんも汗をかいたのか化粧が崩れ気味だった。

ことねさんは……タバコが吸えないショックで動けないみたい。


「直輝、明日の朝に行かない?母ちゃんはもうクタクタよ。」

「そうよ、あの漫画でもこの時間に出発して帰り道に街頭すらない所を歩いてたんだから。彩奈も明日行くに1票入れます。」

「うぁ〜……。」


舞衣ちゃんは最早日本語すら喋れてなかった。


「しゃあないな……あ、川根茶買ってきたし淹れるね。」


そう言って直輝は電気ポットをつかってお湯を沸かし、急須に茶葉を入れてお茶を淹れてくれた。


「川根茶置いときますね。」

「ありがとう〜直輝。」


私は息子の淹れたお茶を1口すする。

すると、私はお茶という概念が覆ったかのように衝撃を受けた。


「なにこれ、すごく美味しい!」

「ホントじゃん!超うまい!」


他のダウンしてる3人より先にお茶を飲むのだが、

川根茶は評判になる理由がわかった。

まず、舌触りが滑らかなのもあるけど……普通のお茶に比べて甘みが強い、それに加えて後から渋みが強くパンチが来るように舌を引きしめてくれる。


香りも淹れたてなのもあるけど上品に洗練された香りになっていて、それだけでお茶とは一線を画す代物なのだと驚愕した。


「……美味しいですね。こんなお茶あるんですか。」


先程タバコ……タバコ……と呪文のように呟いていたことねさんもこの通り感無量と言わんばかりの表情をしていた。


こうしてお茶を楽しむのも人生では数少ない経験だけど、悪くない。

自然と私たちは元気を取り戻し、先程までのだらけモードから一気に場の空気が盛り上がってくるのを感じる。


「……はっ!?ここは!?」


あまりのお茶の美味しさにさっきまでグロッキーになっていた舞衣ちゃんも意識を取り戻していた。


「え、舞衣……さっきまで意識なかったの?」

「舞衣、ここは旅館の中だよ。ほら……川根茶。」


そう言って直輝が川根茶を差し出すとゴクゴクと80℃くらいありそうなお茶を一気飲みしていった。

え、大丈夫?火傷しない?

でも彼女は涼しい顔をしていて、ぷはぁ!とおっさんのような音を出していた。


「あー!さっきまでの酸味とカレーがマリアージュしたような口の中の味がスッキリした!」

「ちょっと、何リアルな感想言ってんのよ!吐きそうになるからやめてよ!大体……あんた食いすぎなのよ、登る時も峠道の時も!」

「あはは……確かに、今日だけで2000キロカロリーはいってたかも。」


舞衣ちゃんが食べてたのは……カツカレー、ダムカレー、パフェ、川根茶ソフトに豚串……あとはコンビニのポテチやチョコなどを確かに永遠に食べてた。


そりゃあ真っ先にリバースしちゃうわけだ。

でも舞衣ちゃんは腹はクビレができてるし全身ほっそりとしている。

どこにそんな栄養いってるのかな?


「……なんか疲れましたね。せっかくですし温泉行きませんか?美女作りの湯な訳ですし。」

「賛成!露天風呂って書いてたわね!みんなで行きましょ!」

「直輝くん、1人になるし私と入る?」

「はいはいー!舞衣は女子チームで入ってねー!あんた2人きりになると何するか分からないんだから。」

「やだー!私は直輝くんと入りたいの!美女になった私を見て欲しいの!」

「そんな事しなくてもあんた可愛いわよ!」


ちょっと欲情した舞衣ちゃんを彩奈ちゃんが連行している。

うん、彼女は今日は良いストッパーをしているな。

若干イチャイチャし過ぎるのを危惧してたけどどうやら普通に旅行を楽しめそうで安堵する。


「……あはは、じゃあ俺も男性の風呂入ってくるからまた後でね。」


私たちは部屋を出て脱衣所にむかった。

そこは独特の湿り気、特有の温い気温と扇風機などがあり温泉前のワクワク感をさらに引き出している。


温泉の香りがほのかに香り、身体に溜まった疲労がより温泉を欲するようでもあった。


さて、寸又峡の温泉はどんな温泉なのだろう。




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