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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第17章 遥香と秘境の吊り橋物語
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遥香と秘境の吊り橋物語 8話

ラブロマンスロードから戻り私たちは再び元いた駐車場へと引き返す。


少し息が上がりふくらはぎが張っていて、乳酸が疲労物質として蓄積しているのを感じる。


本当にいいダイエットになりそうでこの吊り橋ロードが終わったら私はせめて1kgあたりでも痩せないかとほんのりとした期待をかけていた。


「あ、そうだ……確か駐車場にも神社があったわね。みんな寄ってく?」

「……ええ、せっかくですし。」

「彩奈も賛成です!」

「行きましょ〜直樹くん!縁結び神社だし……!」

「ちょ、舞衣?まだ俺たち高校生だよ?あの……目が怖いんだけど……?」


どうやらみんな賛成のようだった。

私たちは神社に向かう。

鳥居を超えると、やはりどの神社も気が引き締まる。

大きい気があったり、朱色の鳥居を超えると妙に神秘的に感じる。


そして、私たちはそれぞれ五円玉を入れてはお参りをしてゆっくりと神社を出ていった。


「……。」


神社のお参りをした後って妙に清々しい。

祈るってスピリチュアル的にも良いのかもしれないけど、心の奥底から安心した気持ちになる。


きっと自分自身と祈ってる瞬間は向き合えてるのかもしれない。

やりたい事や、自身……いや利他的な幸せも願うことができるからこそ祈るという行為は良いのかもしれない。


「……遥香さん。」


突然、ことねさんが静かに語り掛ける。


「……何をお願いしてたんですか?みんなよりもじっくり願ってたみたいでしたけど。」

「げ、そんな長かった?」


まだみんなは若いのかこの気持ちは理解するには早いのかもしれない。

そう思いつつ、ことねさんにだけ願ったことを伝える。


「こういった縁を大事にして、家内安全とみんなの健康をお願いしてたんだ!」


さっきことねさんには「新しい旦那」は必要ないと伝えたことねさんだからこそ、縁結び神社で何を祈ったのか気になったのかもしれない。


それを聞いて彼女は静かに歩幅を合わせて微笑む。


「ふふ、なんか……遥香さんらしいですね。」


私たちはほんのりと彼女との時間の分ちあいを楽しみながら、車へと近づいて行った。


すると、彩奈ちゃんはラブロマンスロードの看板を見てはっと驚いていた。


「どうしたの?彩奈ちゃん!」

「見つけた……!8つ目の橋!」

「「「「えっ!?」」」」


ちょっと気になっていた、渡っていない8つ目の橋。

その行方を彼女は見つけたのである。

やはり私たちは7つしか渡っていなかった。


指を指すと序盤も序盤……最初に大きな釣り場を超えて左折したT時路の右折側にあった。

それを誰もが渡ろうとは思っていなかった……なぜなら。


「通行止めの先にあるならわからないわよ!」


そう、私たちは渡らなかったのではなく「渡れなかった」のだから。

どうやら長いこと通行止めになっていたようだった。


「スッキリはしたけど……なんか未練みたいに残るな〜この気持ち。」


直輝は唖然としているが、それもどこか楽しかった。


「また来ましょうよ、行く理由ができたじゃない。」

「そうだな、流石母ちゃんだよ。適わねえや。」

「じゃあ、さっきの駅まで行きましょ。」


愛車のCX5は再びエンジンを再起動する。

程よいディーゼルエンジンの静かなエンジン音が妙に安心感を与え子気味良い揺れをつくる。


「さて、出発よ!」


ラブロマンスロードと別れを告げて、私たちは奥大井湖上駅の展望台を目指す。

とはいえ、車で5分もしないところなので私たちはあっさりと駐車場に着いた。


しかし、ここから先がまた地獄だった。


「え、またひたすらのぼり階段?てか……山道じゃねえか!」


そう、また急な登坂。

道は補導されてなく、木の根っこを使った階段になっていて足場が不安定だった。


でも考える。

今日は寸又峡に着いてから、夢の吊り橋に行くだけだ。

その後は温泉が残っている。

つまり、まだ何ヶ所かハードな道のりを味わうのであれば話は別だけど……これが終わったらリラックスできるのだ。


既に運転とハイキングで体力は限界だけど、私は体をふりしぼり登ることにした。


「でさー、この前テレビ番組で165kmの速さを出したのは誰か?ってクイズがあってさー!」

「あ!見た見た、野球選手に入り交じって車暴走した女優さんも四択に入って問題になったやつでしょ!」

「あれで事務所から名誉毀損って言われたのよ。」


……ちょ、なんで女子高生ってこんな死ぬほどきつい上り坂で喋りながら登れるんだ!?

相変わらずさっきと同じ構成で女子高生はぐんぐん進んでいた。


「……ちょ、直輝……?こっちは大人組だけど?」

「いや、あの二人にはついていけないよ。」

「ああ、やっぱ女子高生って最強なのね。」

「そういうことだ。」


ちなみに、うちの息子はこの子らの体力には叶わないようで私とことねさんに混じっていた。

というか……。


「ことねさん……これ水です。」

「……あり、がと……う、はぁ……ござ……げほっ!」


グロッキーになったことねさんに気を使ってるとこもあった。

どうやらこの旅で1番しんどそうなのはことねさんだった。


うちの息子は本当によくできてます。

周りをよく見て手助けするところは母親としては嬉しいところです。


しばらくすると、あっさりと展望台に到着して奥大井湖上駅が見える景色が見えてきた。


「……おお。」

「なにこれ、めちゃくちゃ綺麗じゃない!」


ここは奥大井湖上駅。

ダムの中の小島にある駅であり、両端を線路が繋いでいる。

まるでお皿の中のように山々に囲まれて、エメラルドグリーンの水が山と晴天を移してそれはそれは幻想的な絶景がそこにはあった。


「凄い……別世界ね最早。」

「水が綺麗だな。」


私たちは息を飲む絶景に息を止めて階段を昇って急上昇した血圧が下がってリラックスするのを感じる。

自然の雄大さと美しさが調和した景色に一同息を飲んでいた。


大井川は、遠く険しい道が連なる別世界。

でも、だからこそ美しいのかもしれない。


「……人生の思い出になりそうな景色ですね。」

「ね!本当にきてよかった!」


少し老いた体にマイナスイオンを吸収出来るように精一杯体を伸ばす。

すると、これまで体験したことない清々しさで溢れていた。


「さて、行こっか。」


私たちは、ゆっくりと絶景にお別れを告げる。


また、しんどい階段を降りていくのだが、登るよりはそこまではつかれなかったのでさっきよりもあっさりと駐車場に到着できた。


車は再び発進して、先程の寸又峡への分岐点へと戻って行った。


「……なあ、母ちゃん?ここ……道狭くね?」

「うん、というか……なんかヘアピン坂だらけ。」

「なんか、どんどん道狭くなってきてないか!?」

「き……きき気のせいよ!?」


しかし、本日最後の旅路はまるで試練かのように私たちを焦らせ厳しい自然が私たちに少しずつ牙を向けるようでもあった。



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