僕の幼なじみはドS少女 9話
一通り戦いを終えて、俺は無事に終わったと舞衣に報告をする。
すると、帰るついでによって欲しいとの事だった。
俺はみんなと解散をした後に舞衣家に行くと、愛さんと舞衣が待っていた。
「ごめん……待った?」
「直輝くん!?大丈夫、顔怪我してるよ!?」
「あはは、こんなの大丈夫……いてて。」
舞衣に言われてやっとアドレナリンが切れたのか少し痛みを感じていた。
いくら相手がそんなに強くなかったとはいえ……結構派手にやられたものである。
そして、少し奥に愛さんが少し居心地が悪そうにしていた。
私のせいでこんなに怪我をさせて……と言わんばかりの顔だった。
「ごめんね……直輝くん。色々巻き込んじゃって。」
「いやいや…大丈夫だよ。」
すると、彼女は頬の傷を消毒してくれる。
何もそこまでしなくてもいいんだけど……でもありがたく手当をして頂くことにしよう。
「いた……!?いたい……。」
「……。」
「ちょ!もう少し手加減して……。」
「ああ、ごめん。つい反応が面白くて。」
このナチュラルサディストめ……。
とはいえ、2人が手当をしてくれたおかげで俺は少し落ち着いた気がした。
「相手……どうだった?」
「ああ、ちょっと痛めつけて二度と近寄らないように言いつけておいた。……もう自由だよ。」
それを聞いて2人はほっとする。
何事もなく無事で何よりだった。
今はその現状を素直に喜ぶとしよう。
「ねえ、直輝くん……ちょっといい?」
「え、どうし……え!?」
すると、愛さんは急に俺を抱きしめた。
彼女の体温が俺を包み、舞衣もその様子に目をぱちくりしていた。
「ちょ!な……なな……!」
俺はまたいつものイタズラかと思って振りほどこうとすると……彼女は静かにすすり泣いていた。
その様子を見て、舞衣と俺は慌てるのをやめた。
「ごめん……今は、こうしててもいい?ちょっと今は……誰かに甘えてないと、心がぐちゃぐちゃになっちゃいそうで……。」
それを聞いて俺と舞衣はアイコンタクトをする。
「しょーがない!ちょっとだけ直輝くん貸してあげるよ。」
そう言って、舞衣は別の部屋に移動をする。
彼女のすすり泣く姿と体温が静かに伝わってきた。
そりゃあそうだ。
モラハラを受けていたとはいえ、2年間という期間が失ったものはでかい。
きっとそれは、その時間の喪失感とか……開放されたけどこの先どうすればいいかの空虚感。
彼女はきっと今戸惑っていて……傷ついた心を癒すには時間がどうにも必要だった。
「私……なんにも無くなっちゃった。君に助けられてばっかで、もう……わかんなくなっちゃった。」
ここ数日であれほど恐れていた彼女は、もうどこにもいなく……今となってはごく普通の女の子が目の前で方向性を失っているだけだった。
「俺さ……なんというか、昔から君が怖かった。」
「……。」
「何考えてるか分からなくて、俺の意思と反する行動をして……君の何かに怯えていた。でもね……俺ちゃんと最近わかったんだ。」
彼女がなぜあんなにも過激に構うのか、嫌がってもそれを楽しんでいたのか……そんなの、理由はひとつしかない。
「君は……ただ誰かに自分を見て欲しかっただけなのかなって。仮面のないイタズラ好きの君をただ受け入れて欲しかった。」
きっとあんな男と一緒にいたのも寂しかった……それだけなのだ。
この物語は少し複雑そうになってたけど、シンプルだった。
「また、昔みたいにイタズラしに来てよ。俺はもう……逃げないか……いでっ!?」
彼女の顔を見るとおでこに衝撃が走る。
どうやら彼女にデコピンをされるようだった。
「いたた……ちょ、なにするんだよ。」
「え……さっきイタズラしに来てって……。」
「いや、行動力すごいな!?おい。」
「もう〜直輝くん……私を口説きそうな勢いじゃない……そんな感じなら私も直輝くん落とそうかな〜?」
彼女はさっきまで甘えるだけだったのに、背中に腕を絡ませて彼女の体のラインが浮かぶようだった。
「や……やめ……。」
「えー、どうしよっかな〜。」
「愛ー?そろそろ落ち着い……ってうおおい!?何おっぱじめてんじゃあ!?」
タイミングの良いところで舞衣が戻ってくる。
あまりにも予想外なのか、まるで不動明王のような顔付きになっていた。
「た……たすけて。」
「あ〜可愛い、君のそういう表情みるとなんかゾクゾクするんだよね……。」
「直輝くん……モテるとは分かってたけど一度ならず二度までも。」
「ちょ!?誤解だよ……話を……聞いてくれーーーー!!!」
俺の幼なじみでありトラウマだった石川愛。
彼女の奇想天外な行動は、俺たちの物語をさらに彩る。
月明かりがよく照らす街の中で俺たちは暖房で体は温まり、このどんちゃん騒ぎはいつまでも続いていった




