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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第14章 僕の役割は文化祭実行委員
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僕の役割は文化祭実行委員14話

※100日チャレンジ94日目

おれは突然目が覚める。


確か……さっきまで舞衣がいたような……。

辺りを見渡すと彼女は居なくなっていた。


少し不安になるが、少しだけ手が暖かい。

さっきまで彼女が手を握ってくれていたのだ。


時刻は……もう、16時である。

身体はもう眠気は収まっていたけど、あまりに休みすぎて文化祭の準備が滞っていたことに若干の憂鬱な気分を感じていた。


いけない……そろそろ作業に戻らないと。

俺は急いで立ち上がり、学校中を見渡した。

先輩や他の仲間は結構部活とか、バイトで上がる人が多いのでもう作業してる人は居ないだろう。


そんな矢先……俺は生徒会室に行くと目を疑った。

まだ、みんな作業をしていたのだ。

それも、みんなが自主性を持って行動していて、あと2日だと言うのに作業はほとんど終わりを迎えていた。


「こ……これは……一体。」

「おー!天野、すまなかったな!お前ばっか負担かけて!」

「今日はバイトキャンセルしたわ!後輩が頑張ってるのに俺たちがサボってる訳にも行かないからな!」


普段消極的だった先輩たちも先導してくれて、進捗が厳しかったアーチの設営なども終わらしてくれていた。


俺は唖然としていた。皮肉にも俺が倒れたことによって生徒会や文化祭実行委員が刺激されて士気が上がっているのだから。


少しだけ、俺の仕事が減って寂しいけどそれは一致団結を意味していたのだ俺は言うことは無かった。


そんな中1度も見た事ない男女2人組がこっちを見て駆け寄ってくる。

あれ、この2人誰だっけ?

全く面識はないはずなんだけど……。



「天野くん……でいいのかな?俺は三上、副会長をやっているものだ。」

「え、副会長って……あの?」


つまり、隣にいる女は現議長である。

生徒会の仕事を恋愛で放棄して、現在生徒会がリソース不足に追われてる原因の人たちだ。


「すまなかった。下級生が生徒会の仕事で倒れたって聞いてね……前々から夜遅くまで作業してくれてるのは知っていたんだけど、倒れたと聞いた時には俺の分までやってくれてたんだなと思って……。」

「……いえ、でも謝る相手は違うと思いますよ?」


正直、俺に謝罪するのは違うと思った。

俺はただやりたいことをしただけなのだ。


「会長と……きっちり話をつけてあげてくださいよ。」

「ああ……そうだったね。それが終わったら……俺達も手伝ってもいいか?せっかく名前だけでも副会長をやってるのだから、最後まで責任を果たしたい。」


俺は何も言わず頷くと、副会長は会長の元へと駆け寄る。

少しだけ居心地が悪いのか、少しだけ目を逸らしている。


「……まさか、君まで来るとは。」

「ひ……久しぶりだな、神条。」

「ああ、久しぶり。クラスも違うし生徒会には顔を出さないから寂しかったぞ。」

「ぬ……すまん。」


そういって、無言になる2人。

お互い、元々幼なじみというのもあってか距離感はとても近かった。


「その……お前に仕事とか丸投げして、逃げて済まなかった!!」


副会長は突然頭を下げた。

45°の綺麗な最敬礼であるので、日本人が出せる最大の誠意だろう。


でも、会長は彼の目を見なかった。

当然である。1年間裏切られ続けた上に、好きだった相手に振られているのだから。

こんなにも修羅場な環境はあるだろうか?

会長を見ると、怒りなのかそれとも好意なのか分からない感情で少し震えていた。


顔だけは、いつも通りの冷静さを装って。


「もう……怒ってないから大丈夫だ。それより……。」

「それより?」

「私は……君の事が好きだ。何年も……保育園で会った時からずっと私は君に添い遂げる妄想をするくらい好きだった。……その答えを、今教えてくれるか?」


まさかの、会長からの告白が返ってきた。

俺はそのやり取りを止めようと思ったけど、足がすくんでしまった。


現に副会長は議長という名の彼女がいる。

明らかに告白を受諾してくれるようなシチュエーションじゃないので、会長はこの後確実に傷つくことになる。

飛んで火に入る夏の虫……まさにこの言葉がぴったりな状況に俺は見て見ぬふりなんてできなかった。


でも、そう思った頃には遅かった。


「俺は……その、お前のことは昔から一緒にいて楽しかった。一緒に手を繋いでくれたり、忘れ物しても助けてくれたりとかさ……正直俺の青春のどのページを切りとってもお前がいるようなものだったよ。」


副会長は、バツの悪そうな感じで前置きからはじめる。

俺は、もうその先を聞くのが恐怖でしか無かった。

舞衣に許されて安堵を感じてる今の俺にとって、振られに行く真逆の方向に行く会長がみていられなかった。


「俺は……君の愛する人にはなれない。今の彼女がそれだけ必要な存在なんだ……ごめん。」


会長は少しだけ沈黙する。

そして、会長は静かに下ではなく上を向いていた。


「そうか……正直に話してくれてありがとう。私はこの期に及んでまだ君を諦めずにいた。でもこれでやっと、君を……あき……。」


会長は、静かに息を飲んで次の言葉を確実に伝える準備をする。


「諦められるよ。好きだった、本当に君のことが好きだった。……うう……うわぁぁぁあ!!」


会長が泣き出す。

副会長はオロついていたので、俺がすかさず割って入った。

そりゃあそうだ、副会長はきちんと謝罪するために戻ってきたのに傷つけてしまったのだから。


副会長は普段のクールな姿とは打って変わって泣き喚いている。

きっと……その涙には何年分の愛があったのだろう。


「……副会長、あとは俺が見ます。作業内容は、俺が作ったタイムテーブルを見て行動をお願いします。」

「ああ、感謝する。」


俺は会長をみんなが見えないところまで誘導して、しばらく泣いてる様子を見ることしか出来なかった。


だけど、しばらくして会長は泣き止む。


「びっくりしましたよ。……大丈夫ですか?」


俺はハンカチを差し出すと彼女はそれを受け取って涙を拭く。


「……かっこ悪いところを見せたな。」

「いえ、自分の未練に決着をつけたかったんですよね。会長はいつだってかっこいいです。」

「……全く、君は罪な男だな。」


10月の夜は先月よりも暗くなるのが恐ろしい程早くなり、もう景色は闇に包まれる。

でも、そんな中みんなは活気に溢れ祭りがもう始まってるかのように走っていた。


俺が居なくても、もうこの文化祭は上手くいくだろう。

それは少し悲しいようでもあり、とても嬉しいことでもあるような感じがした。

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