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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第14章 僕の役割は文化祭実行委員
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僕の役割は文化祭実行委員 11話

※100日チャレンジ91日目

俺らが着いた焼肉屋さんは、いわゆる食べ放題の焼肉チェーン店だった。


先生は席に座るなり鷹のように目を見開いてタッチパネルを何度も押す。

1分ほど押すとお気に入りの肉はだいたい注文し終えたようだった。


「あ、天野くんは何にする?」

「こ…コーラで。」

「りょーかい!んじゃあ……ババアは生ビールといきますか!」


タッチパネルをタップし終えると、肉が運ばれてくる。

牛タンやハツ……カルビにホルモン、鶏肉など一気にテーブルが埋まるようだった。


そして、先生は楽しそうに網に所狭しと肉を並べて焼く。


「あ、俺焼きますよ。」

「いーの!誘ったの私だし……遠慮せず成長期は食べなさい!」

「は…はあ。」


そして、ビールとコーラが運ばれてきて、肉も調度良い感じに焼けた。


「じゃあ、かんぱーい!」

「か…乾杯。」


先生はビールジョッキを垂直から90°まで角度を上げてゴキュ!ゴキュ!と勢いよく飲んでるのが音でもわかった。


そして……プルプルと全身が震えて涙目になる。


「ぶっはあーーーーーー!くうううううう!!」


す…すごい……笛吹さんといい勝負かもしれない。


先生はとにかく美味しそうに食べる天才だった。

カルビを食べては脂をビールで喉に洗い流し、あまりの美味しさに悶えていた。


「ああ……美味い。このために生きてるもんだわ…。」

「で……ですね。」

「いや〜!教員もハイストレスだからね。」


確かに教員の立場という面で話を聞くのも面白い。

生徒と教師は基本的に分かり合えない対局の立場なのだから、この場は新鮮そのものだった。


「そういえば、先生は生徒会でしか合わないんですけど、普段学校だとどんな感じなんですか?」

「ああ……聞いちゃう?」


あれ、聞いちゃダメだった?


「もう〜ほんっとストレスなのよ〜。ヤンキーにはチリコって呼ばれるし、独身なら貰ってやろうかとかセクハラばかり……さらに成績の伸びが悪いと教頭には詰められ、突如諏訪先生の共有不足で残業になったり……さらに、くじ引きで負けて生徒会顧問になったんだけど……そこからはサービス残業ばっかよ。」


どうしよう、先生の後ろからダークマターが見えるほど闇が見えるよ。

まあ、綺麗な先生だからヤンキーもからかいたくなるのかもしれない。


「す……すごい。にしても、なんでチリコなんですか?」

「ああ、社会教えてるからね。ヤンキー相手だと地理を教えるからチリコって呼ばれてるのよ。」

「いやめっちゃ安直ですね。」

「ほんとよ〜これだからガキは……。」


そう言って先生はビールを一気に飲み干す。

そして、テーブルに並んでいた肉はいつの間に綺麗に無くなっていた。


そして、先生はまた生ビールと次はサンチュなどの野菜も頼むようになった。

なるほど、意外とグルメなのかもしれない。


「ああ、気にしないでもいいよ!天野くんは対等に見てるから!ほんと…天野くんのおかげで私は残業が減ってビールを飲める時間が増えたの〜えへへへ。」


割と、損得でものを見るのかもしれない。


「先生は……なんで教師やろうと思ったんですか?仕事……辛いんですか?」

「ああ、全然!私はね〜安定を求めるから公務員目指そうと思ったんだけど……落とされちゃって教師はやってる。でもね……なんか、私が教えて勉強嫌いな人が少しずつ好きになってくれる感覚が楽しいんだ。」


そう言って、先生はにへらと笑う。

なんだ…ちゃんと先生やれてるじゃん。

そう思った頃には俺の気持ちは1人の友人として尊敬に近い感覚を覚えていた。


「まあ、私の話はいいのよー。天野くんこそ、生徒会どう?先輩たちにまじってプレッシャーじゃない?なんか……負担かけてないか心配だったのよ。」


まあ、確かに俺の仕事量は多い。

諏訪先生はそんな俺を見て「精が出るな!」としか言わなかったけど、この人はちゃんと人を見てる感じがした。


「……まあ正直仕事量は多いですけど、元々不登校だった時の時期に比べたら毎日が新鮮です。この文化祭も自分で作ってるんだっていう……なんというか貢献感に近い感情がありますね。」

「そうか……それならいいんだけどね、うちの生徒会って恋愛沙汰で主要人物が機能しなくなって、神条のワンオペになっちゃったからね〜。」

「ああ、その件は先生も知ってたんですね。」

「当然よ!恋愛脳の人ってこれだから……。」


どうやら、仕事を放棄した副会長と議長については先生の評価も低いらしい。

多分、残業が増えた原因と見てるかもしれないけど。


「神条も、振られてから髪をバッサリと切って宝塚の王子様みたいになったのよ……ほれ、これが就任時の神条。」


スマホの写真に映った会長は今とは打って変わって、スカートを履いていて、髪はふわふわで腰まで伸びていて、ハーフアップに仕上げてまるでお嬢様のようだった。


「ぜ…全然違う。」

「でしょう。彼女……どう?天野くんにはどう接してるの?」


どう……か。

んー、ちょっと話していいか分からないことだらけだぞ?

ラブホに言ったりもしたし。


「んー、コンプラ的に言いづらいです。」

「んなによ!言ってよ。今はここは学校じゃないんだから……私とあなたは教師と生徒じゃなくて……友人よ!」

「……じゃあ、秘密ですよ。」

「うい!」


ビシッと敬礼のポーズをする先生を見て、多分もう少し酔ったら忘れるんじゃね?と思いつつ、とにかくぶちまけてみることにした。


「……俺、会長に誘われてラブホに行ってしまいました。」

「おお、やるね。した?したの?」


いや、興味そこかい。

ヤバい、酔ってるのもあるけどこの人プライベートだと中学生男子のような思考回路してやがる。


「いや、して無いですよ。」

「なんでよー!男はバシッと中出し決めなさいよ!」

「あんたそれでも教師か!うわぁーびっくりした!教師って下ネタとか平気で言うんだ。」

「え、タイプじゃなかったの?あいつめっちゃ可愛いじゃん!もったいねえ!」


先生はバンバンとテーブルを叩きながら興奮している。

いや、どんだけ熱いラブコメを期待してるんだ。


「いや、確かに魅力的ではあるんですけどね……あの、彼女がいるんで。」

「あ〜ね。そりゃ正解だわ。危ねぇ危ねぇ……我が校をスクー〇デイズにするとこだった。」


人の人生をエンタメみたいにしないでもらいたい。

割と主人公みたいに生首だけになって抱きかかえられそうだから。


「で……丁重にお断りしたら、GPSで位置を特定されて捜索中の彼女と鉢合わせして……。」

「え、怖い……。めっちゃ監視されてるじゃない。」

「そうなんですよ、弁明する前に逃げられて……もう1ヶ月近く経ちます。」

「まあ……確かに彼氏がラブホから出てきたら、病むわな。何よ、半分スクール〇イズじゃない。かーなーしーみのーむーこーう。」

「歌うな!刺されるシーンになるでしょうが。」

「あははははは……げほっ!げほーっ!おえ〜。」


すると、先生はしばらくケタケタ笑い。途中で酔いもあるのかむせ返っていた。

いや、大丈夫かよ……気がついたらこの人ジョッキ4本目だぞ。


「……まあ、これは先生ではなく歳上の女としてお話すると、天野くんはどうしたい?スッパリ別れるか……それとも彼女と見つめ直したいのか。」

「そんなの!ちゃんと見つめ直したいに決まってるじゃないですか!」

「あはは!正直でいい!……愛はね、二人で成し遂げる課題のようなもんよ。」

「……課題?」

「そう!性欲とか好きとかそういう激しい感情ではない。二人で成し遂げるという、決意であったり、約束のようなものだ。君は……その愛を持って向き合おうとしてるのよ!」


どうしよう、ものすごく納得のいく話をしてくれてるのにそれを話してるのが酔っ払いなんだよな。


でも、確かにそうだ。

今、俺は何かに試されてるのかもしれない。


「仲直りする約束はしてるの?」

「一応……後夜祭の後に。」

「はぁ……えっちだね。」

「やめて!?一応文化祭実行委員の仕事が一段落するタイミングがその時間だと思ったんですよ!」

「あはは!冗談よ!冗談!」


先生は俺の背中をバンバンと強く叩く。

真剣なのか適当なのかわからんぞ……。


「でも、これだけは聞いて?どんなに変なことを言ってもいい……きちんと君の気持ちと誠意を彼女に伝えなさい。」


その時だけは、初めてプールで出会った時のような凛とした顔をしていた。

ああ、真剣にこの人は向き合ってくれている。

それだけで、俺は勇気が湧いてくるようだった。


「先生……ありがとう!俺、ちゃんと彼女に誠意を示すよ。」

「おう!その意気だ!……で天野くん、そろそろ食べ放題の時間も終わるんだけど。」

「ああ、そうですね!早く寝て、きちんと生徒会を終わらします!」

「そうね、教師の立場としてもそうしてもらいたいんだけど……。」


妙に、先生の会話の歯切れが悪い会話が続く。


「ねえ、天野くん……酔い過ぎた。多分これ……1人で帰れない。どうしよ……。」


…………………………………………。


「はああああ!!!!??」


どうやら、先生自分の許容量のお酒を超えたらしく、まともに歩けない状態になっていたようだった。


しかし、俺の悲痛の声は虚しく焼肉の焼く音と、食べる人達の会話などの雑音でかき消されてしまっていた。

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