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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第14章 僕の役割は文化祭実行委員
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僕の役割は文化祭実行委員 9話

※100日チャレンジ89日目

季節はもう10月である。

文化祭まで1週間を切っていた。


辺りを見渡すと、かなり文化祭独特の賑わいを感じる。

かつての自分なら、この活気に嫌気をさして不登校になっていたのかもしれない。


それが今や、その活気の中心人物の一部になっている。そんな事に日々驚きを感じている。


「お疲れ様です、管理担当の天野です!今回はタイムテーブルを作成させていただきましたので、僭越ながら先輩方と文化祭を楽しませていただきます!」


俺が挨拶をすると、先輩方はがんばれー!とか、気軽になんでも言ってね!と拍手喝采を頂く。

最初は先輩=怖いと思っていたけど、一生懸命作業をしてるところを見てくれてるせいか、先輩方は俺に着いてきてくれた。


そして、実際のオープニングイベントやクローズイベントなどをリハーサルする。


俺は軽音部のライブの時の照明やパフォーマンス、そして体育館のカーテン担当の方などと密接に連携をとって、かなり質の高いリハーサルをこなすことが出来た。


☆☆


「ふーっ!疲れた……!」


すると、ほっぺに急に冷たいものが引っ付く。


「うおっ!?」

「あはは……ごめんごめん。」

「って渚か……驚かすなよ。」


渚は両手にジュースを持っていたずらに微笑んだ。

なんというか、今でも男と思えないような可愛らしい顔をしていた。

男とわかってなければこの場で告白してしまいそうである。


「ほら、頑張り屋さんにはご褒美を進ぜよう〜。」

「ありがたやーありがたやー。」

「……あれからいい感じだね。」

「ああ、お陰様で多分人生でいちばん頑張った1ヶ月だったと思う。」

「あはは!直輝くんらしいね!……あれから彼女とは?」

「んー、なんというか……やっぱり距離を置かれてるような。すれ違う機会も無くてな……。」


あれからは不思議と舞衣と会ってないような気がした。

いや、クラスは一緒なんだけど……正直文化祭と生徒会の引き継ぎが忙しくて顔を合わせる機会すらなかった。


「んー、でも……そろそろ弁明の機会とか設けた方がいいんじゃない?」

「いや……まあそうだな〜。」


とにかく、次見かけたらせめてお話できないか聞いてみよう。

タイムテーブルをみて……うん、そうだな。後夜祭とかいいかもな。


「お疲れ様、天野くん……なかなかいい采配だったぞ。」

「会長!お疲れ様です。」

「これで次期生徒会も安泰だな!……なんだ、始めてみる顔だね。」

「し……神条会長!」

「君はモテるな〜。こんな可愛い子とも仲良いのか。」

「あ……いや、その……ボク、男です。」


珍しく渚はすぐに自分の性別をカミングアウトする。

まあ、あの日から自分は男だと誓ったから、彼なりの変化なのだろう。


「……え?そうなのか?」


会長は面食らった顔をしている。

いやいや、あんたもイケメン王子〜!なんて言われてますがな。


「……実は、私も女なんだ。」

「ええ、存じてます。」

「……もしかして、天野くんとの関係も?」

「……ええ。」


おいおい!待て待てそこは話すなって。

ちょっと放置したら風向きが怪しくなってきた。

少しだけ2人の空間がシリアスになって言った。


「お、おい……その辺に。」

「なあ、早乙女くん……だったな。私は天野くんの人間関係を崩してしまった。そんな私を軽蔑するか?」

「しません。だって、知らなかったんですよね。多分会長もその時は何か埋めてほしい気持ちだったんじゃないですか?」

「あ……ああ、まあ確かに家庭とかいろんな面で私はストレスを抱えて、間違えてしまった。なんというか、見た目に反して君は芯が強いんだな。」

「えへへ……だって、ボクも直輝くんが……好きでしたから。」


そのやり取りに俺は赤面してしまう。

そうだった、あの日から渚は男になったけど……それまでは女の子だったんだ。


「全く……直輝くんがモテるからいけないんだぞ〜、この色男め!」

「う……うっさい!」

「こんな可愛い美少女2人を振っといてるんだからちゃんと彼女幸せにしてやらないとダメだぞ?」


い……いや、お前今は男でしょうが!

というツッコミはさておき俺は急に気が動転して体育館を出ようとする。


「直輝くん〜?どうしたのー?」

「ちょっと!風に当たってくる!」


そして、俺は体育館を出ると誰かにぶつかってしまった。


「いた!?」

「きゃっ!?」


ぶつかった相手は……舞衣だった。

お互い、目をぱちくりとして言葉が出ないようだった。

咄嗟に……目をそらす。

どうする?何を言う?

弁明?謝罪?いや……なにかないか、早く言わないと彼女は居なくなってしまう。


「「あ!あの!」」


二人でハモってしまう。

しまった、舞衣も何か言いたかったんだな……。

まずはそれを待った方がいいのか?

でも、このままだと文化祭が終わってもギクシャクしたままになってしまう。


それは、会長にずっと罪悪感を与えるし、サポートしてくれた渚も裏切ることになる。

言わなきゃ……言わなきゃ!


「「あ!」」


またハモってしまった。

バカやろぉぉぉぉ!ちゃんと舞衣を見てないからだぞ!

よく見ると……彼女は若干クマができていて、それを隠すように不健康なまでの化粧をしていた。

きっと、ココ最近まともな食事をしてなくて疲れてるのかも知れない。


「舞衣からどうぞ。」

「い……いや、私は何もないのよ。」

「そ……そうか。あの……さ、今は頭が整理出来なくて……何言えばいいか分からなくてさ、文化祭の後夜祭が終わったら、会って……くれま……せん……か?」


不思議と敬語になってしまう。

俺の言葉は震えていた。

口の中が緊張して乾いているのさえ感じている。

今まで一緒にいたのに、こんなに遠く感じるのも初めてだった。


でも、いい……フラれてもいい。きちんと気持ちを伝えることに意義があるのだから!


すると、舞衣は回れ右をした。

体育館の外を向いて……今にも出ようとしている。


……やっぱり、潔白とはいえ彼女を傷つけてしまったことに変わりはない。

少し、絶望感を感じると彼女は続けた。


「文化祭のイベントを仕切ってる姿……かっこよかった。」

「え。」

「後夜祭……いつ終わるの?」

「あ、えっと……最後火をつけて、20時頃になるかな。」

「じゃあ、20時……ここで待ってるから。」


彼女はダッシュしてこの場から居なくなる。

俺は……少しだけ気が抜けて尻もちを着いていた。

それどころか、かっこよかった……なんて言葉を貰った。

普段何気なく彼女からくれる言葉はこんなにも自分を満たしてくれていたのかと感じる。


許されたら……もっと彼女を大切にしよう。


「直輝くん?」


すると、後ろから渚が心配したのか駆け寄ってきた。

そして、俺が尻もちを着いているところをみて何してるのかと疑問顔だった。


「……渚、やったよ。」

「え?」

「舞衣と……会う約束……できた。」


彼は声を発しなかった。

その代わり、俺の背中を優しくポンと押す。


10月の昼過ぎはまだ日光が暑いのだけれど、その代わり空気はどこかカラッとしていて、ほんのりと風が肌寒いような感じがした。


だけど、カーテンで暗闇がかった体育館を背に浴びる日光は、いつもより眩しく……輝かしく感じた。


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