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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第14章 僕の役割は文化祭実行委員
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僕の役割は文化祭実行委員 8話

※100日チャレンジ88日目

私は佐倉舞衣。

……直輝くんの彼女、なのか今はわからない。


直輝くんは文化祭実行委員になってから変わってしまった。

今までの私と飯田くん、そして直輝くんというメンバーから変わって直輝くんは生徒会室にいることが多くなった。


それはいい…それはいいのだけれど、私はある日誰かとラブホテルを出る直輝くんと鉢合わせしたのをきっかけに距離を置いていた。


「舞衣ー?」


私は2人に何があったのか怖くて聞けなかった。

裏切られてるかもしれない。


「おーい、聞こえてるー?」


親子関係も破綻していた今の私にとって直輝くんが必要不可欠だったから、私はもう何も考えられないでいた。


「舞衣ー!こら!」

「いでっ!」


急に頭をチョップされる。

気がつくといつも仲良くしてくれるオタクギャルの川崎彩奈ちゃんが私に話しかけてくれていた。


「……大丈夫?」

「ごめん、なんだっけ?」


彼女にだけは……直輝くんとギクシャクしてる旨だけは伝えている。

流石に会長とラブホから出たのを見たとは言えない。

私は、この期に及んでも直輝くんに淡い期待をしていた。


あの直輝くんの事だ。

もしかしたら、何か間違えたのかもしれないと。

でも、その真意を本人から聞く勇気が私にはなかった。


「例の件…まだしんどい?」

「んー、なんかね……もうわかんないや…。でも、声掛けてくれてありがとう。」

「もう〜無理しちゃダメだよ。文化祭の準備やっとくから。」


そう、今は文化祭の準備の真っ最中である。

本来クラス委員長の直輝くんが取仕切るのだが、彼は生徒会次期の主要メンバーだし、文化祭実行委員をやってるので今回は私が受け持つことになった。


そのサポートを彼女にもお願いしていた。


「…にしても、うちのクラスの出し物もカオスね。なんせお化け屋敷カフェなんだもの。」

「だって、お化け屋敷だとありきたりじゃない?」

「…確かに。」

「メイド喫茶なんて、舞衣毎日やってるようなもんじゃない。」

「……否定はできない。」

「という訳でフュージョンさせたらいいんじゃないかなと!」

「いや、これフュージョン失敗のようなカオスさになってるわよ!ゴジータにはなれてないわよ!これじゃあ失敗したデブのベクウじゃない!」

「……意外と詳しいのね?」



何でも合わせたらいいとは限らないのはこの事だろう。

実際、クラスの統制は取れてないでグダグダだった。


「もういいわ!ちょっと風に当たってくる。」


そう言って私が教室の引き戸を開けると。


「「あ。」」


ちょうど直輝くんと鉢合わせになった。

私は即座に目を逸らす。


「お疲れ様。」

「……。」


私は、彼の言葉を無視して教室を出る。

直輝くんはこうして……話す機会をくれてるのにどうにも私は素直になれなかった。

少し前なら抱きしめていたのに、今は胸にぽっかりと穴が空いてまるでドーナツのようだった。


私は、屋上をめざして景色を見る。

景色は太陽に照らされてまだまだ日本の暑さを物語るように陽炎で揺らいでいた。

それを見ては、花火大会や旅行などの彼と見ていた景色などを思い出してしまう。


そして、何度も直輝くんを無視してしまう自分に自己嫌悪してしまう。

ああ、もう最近生理とこないし、便秘気味だし、文化祭準備は全然上手くいかないし!イライラする!

私は吐き出せない不満に悶えていた。


「よぉ〜。どしたん?話聞こか?」


突然、後ろに人がいたことに気がつく。

それは、よく知ってる人物だった。


「…虎ノ門くん。」

「なんだかんだ、花火大会以来だな。佐倉。」


そう、学校の不良であり…私たちの親友である虎ノ門龍くんがそこにいた。

最近不登校に拍車がかかっていたこともあり、本当に会うのは久しぶりだった。


「なんか、最近お前ら仲悪くね?」


そして、彼はストレートな言葉をなげかける。

お前ら…というのは私と直輝くんのことを指している。


「……うっさいわね。あなたには関係ないじゃない。」


すると彼は猫背のまま私にのらりくらりと近づいて声を大きくする。


「ありますー!だって、俺ら親友なのに説明なくアウェイになってるんですけどー。」


ちょっとふざけたノリに苛立ちを覚える。

本当は1人になりたかったのも相まって彼に手が出そうになった。


煽ってるの?もしかして。


「あんたは最近どうなのよ!学校にすら来てないじゃない!」

「あ?行ってるよ。俺の彼女の御坂が夜間高に行くようになったから俺も夜間編入してサポートしてるんだよ。」


御坂…確か、アルビノの白い美女のことだった。

日光が生命に関わるということで、彼は彼女を守ることを最優先にしてたみたいだった。


「あ〜、はいはい。羨ましいですね!ラブラブで。」

「いや、お前らも祭りの時イチャイチャだったろうが。」

「今その話しないでよ!」

「あ〜すまんすまん。悪気はねえんだ。」


ちょっと今でも仲が良い彼らに嫉妬をする。

私たちは関係が悪化してもう2週間になる。

直輝くんは最初はオドオドしていたけど…割り切ってるのか、もう私の事が必要じゃないのかドライになってきた。


あ、ダメだ…そのこと考えたら……。


「お…おい。大丈夫か?」

「う…ううっ!うええ…。」


私は感情がこぼれるように泣き出してしまった。

顔が熱くなり、呼吸が荒らげてしまい嗚咽を漏らしてしまう。

それからは虎ノ門くんは一切喋らないで泣き止むのを待ってくれていた。


そして、10分ほど泣くと…少しだけ心が落ち着くのを感じた。

いわゆる、カタルシスというものである。


「ほれ、ハンカチやるよ。」

「ごめん……ぶーっ!」

「バカヤロウ!鼻水から行くやつがいるか!もういいよ、そのハンカチあげるから。」


彼はまるで呆れるように……でも見捨てては行けないと腹を括ったように隣に座り込んだ。


「……何があったんだ。」

「直輝くんが、浮気してた。」

「そうなのか?」

「うん、GPSみたら繁華街の方にいたから見に行ったら…ラブホから出てくるのを見た。」

「いや、しれっと彼氏にGPS付けんなって!怖いわお前。」

「お前って言わないでよ、嫌いだから。」

「だー、はいはい。それで……相手は誰なんだ。」


私はあの日の事を思い出す。


あの人の特徴は170cmの短髪の人だった。

あれ、なんというか今考えると不自然だ。

その特徴が該当するのって……。


「神条先輩…?」

「神条って……生徒会長のあのイケメンか?」

「……うん。」


冷静に考えたら、あの奥手な直輝くんから誘うはずが無いのだ。


しかも相手は女性人気ナンバーワンの神条先輩。

そんな人が恋愛に困ることなんて無さそうだし、私たちの恋愛関係は好評してあるから寝とるなんて思考に至るだろうか。


それに、直輝くんは基本的に受け身だし、ドライな鈍感モンスターだから自分から誘惑するなんてことはしない。


それに本当に関係を結んでいたら、私のことを気にかけたりしないだろう。


「あはは!なんか……その様子だと大丈夫そうだな!」

「うっさいわね、まだわかんないわよ。」


「ちょっとお前の顔がいつも通りになった気がするよ。なおっちを信じてもいいかもって顔してた!なあ、佐倉よ……今はキツイかもしれないけど、タイミングが合ったらちゃんとなおっちと向き合った方がいいぞ!お前らはまだやり直せそうだ。」


「……そうかな?やり直せる?」

「ああ!もちろんだ、だってGPS仕込んだりするくらいあいつのいい所も全て知ってるのが佐倉だろ?」

「……うん、そうかも。」

「よし!それなら大丈夫だ。」


そう言って彼は隣に座ってたけどまた立ち上がった。

そして、屋上から姿を消しそうになった。


「どこか行くの?」

「ん?ああ、また勉強でもするよ。またみんなで勉強会した時に教えたいしな!」

「あはは……見た目によらずほんとお節介ね。」

「そりゃどうも、んじゃあまたなー。なおっち信じてやれよ〜。」

「うっさい!……でもありがとう〜!!!」


彼は返事はせず、仕草で挨拶を済ませる。

私は再び屋上からの世界を見ると、少しだけコンクリートジャングルが色鮮やかに見えた気がした。


そして、少しだけ伸びをして文化祭の準備に戻る。


「さーて!私もとにかくできるだけのことはしますか!」


まだ、私は彼を許す準備は出来ていない。


彼にもしかしたら裏切られてるかもしれない。

でも、それ以上に彼には裏切られてないかもしれない可能性が私を包んでいた。


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