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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第14章 僕の役割は文化祭実行委員
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僕の役割は文化祭実行委員 6話

※100日チャレンジ86日目

俺は舞衣が走ってどこか行く姿をただ見ることしか出来なかった。


流されてしまったとはいえ、心から信頼してくれた子を裏切ってしまったのだ。

それは間違いなく俺の落ち度だろう。


会長は普段の凛々しい顔とは打って変わって、焦燥感に溢れた顔立ちをしていた。


「天野……くん……すまない。私がきちんと弁明するべきだった。」

「いえ、流されたとはいえ……僕の失態です。明日、彼女に謝ります。」


俺はどうすれば良いのか分からなかった。

とにかく混乱していた。


「今日は、とりあえず帰りましょうか。」

「…………天野くん、私のせいだ。私も一緒に弁明させて欲しい。君は潔白なのを証明させてくれ。」


会長もこんなに傷つけるつもりはなかったのだろう。

きっと、彼女なりの心の闇があってそれを聞きすぎたから甘えたかった……そんなところだろうか。


まあでも、今の俺にはそんな事情はどうでも良くて……舞衣との事しか考えてなかった。


「今日は……解散でお願いします。」

「……わかった。何かあったら、私にも教えてくれ。」


そう言って俺は会長と解散して、無気力で時間の流れも感じ取れない状態で真っ直ぐ駅に向かった。

22時を過ぎると、人混みは落ち着いてくる。


乗車している人たちも、どこか疲れた人達で溢れていて座ってる人達は寝てる人かスマホをいじってる人などの単調なパターンが多かった。


俺は無意識に舞衣にLINEを送った。

せめて、彼女に誠意を伝えねばならない。


「今日は……ごめん、嫌な思いをさせた。事情があったんだけど、そこも含めて今度お話できないかな?」


いつもはすぐに既読が着くのに……15分も30分も待っても彼女の既読が着くことはなかった。


その既読がつかないことに怯えていた時間は、ただひたすら列車とレールが擦れる音がいつもより良く聞こえた。


☆☆


俺は自宅の扉の前で立ち止まっていた。

母ちゃんになんて言おう。

昨日まであんなに仲良くしていたのに、突然裏切ってしまったなんて……どう言えばいいのだろうか。


そんな事ばかりを考えていたが、意を決して扉を開ける。


「……ただいま。」

「おかえり、大丈夫!?」


母ちゃんはいつも通り明るく元気だった。

そして、帰り道が遅く心配していたのが表情をみてとれた。

俺は舞衣の返信を待っていたけど、その間LINEの通知が溜まっていて……その張本人が母ちゃんだったとその時に気がついてしまった。


「大丈夫、ちょっと生徒会で忙しかったんだ。」

「そっか、じゃあご飯にしよっか!今日は直輝の好きなカレーで……。」

「ごめん、今日ちょっと疲れて食欲がないんだ。」

「え……。」


母ちゃんは悲しそうに声を止める。

俺は、母ちゃんの顔が見れなくてどんな表情をしてるか怖くてみれなかった。


「そ……そう。じゃあ明日たべよっか。お風呂は入る?」

「ごめん、今日は寝るよ。」

「そう?あんまり無理しないでね?」


いつもより弱々しい母ちゃんの声を背に俺は自部屋に戻る。

きっとものすごく冷たい対応をしてしまった。

俺は……家でも外でも最低だなと自分を卑下してしまった。


その後も、どこか彼女がLINEを返してくれるかもと期待していたが、返ってくることなく朝を迎えてしまった。


☆☆


チュンチュン……


朝の鳥のさえずりがいつも以上に鬱陶しく感じる。

肩は重く少し頭痛がした。


ああ、なんか学校に行きたくない。

悩みが無いのが最近の悩みだったはずなのに……学校を休もうかなと思ったけど、文化祭の仕事量もかなり佳境に差し掛かってきたので俺は無理やりにでも学校に行行くことにした。


「……行ってきます。」


俺はシャワーを浴びて身支度を整えて母ちゃんに顔を合わせないようにこっそりと家を出ようとしていた。

すると、母ちゃんが部屋から出てきた。


「直輝、大丈夫?」

「ん?あ……ああ……大丈夫。」

「朝ごはんは食べた?」

「………………。」


俺は食欲が湧かないのと、どこか食べていいのか分からないほど自分を卑下していたので玄関の鏡を見ると少しだけやつれた自分の顔が見えた。


「……無理に話さなくていいから、せめてこれだけでも食べてね。」


すると、母ちゃんはコンビニで売っている端の閉じたサンドイッチを俺に差し出した。


「……ごめん、ありがとう。いってきます。」

「うん、行ってらっしゃい。」


サンドイッチを受け取る時だけ母ちゃんの顔が見えた。

母ちゃんの顔は少しだけ泣きそうな……悲しそうなにしてるのを隠してるような……そんな複雑な顔をしていた。


☆☆


俺は学校に着いて。

無意識に舞衣を探してしまう。

結局……彼女からLINEの返信どころか既読が着く様子がなかった。


「おはよう〜直輝くん!」


そんな様子とは打って変わって、学校の男の娘である早乙女渚が俺の前に立っていた。

親と話し合いが終わり、彼なりに決着が着いてから彼は髪を少しだけ切っていて、表情はいきいきとしていた。


「ああ……おはよう。」

「暗!?どうしたの、いつもに増してクマが凄いよ!」

「気のせいだ。」

「……そうかな?いつもと違う気がしてたけど……気のせいか。」


いつもは話しかけてくれるのは嬉しいけど、今日ばかりはほっといて欲しかった。

何を言えばいいのか分からないしな。


「もう〜、なんだよ。ぼくたち文化祭実行委員の仲間じゃないか!」

「え、いたっけ?」

「いたよ!!飯田くんとMCの練習してたよ!」


ああ、そういえばそうだった気がする。

タイムテーブルでメンバーのなまえを書いていた時に確かに彼の名前があった。


「文化祭、一緒に盛り上げようね。」

「そうだな、頑張るか。」


彼は元気づけようとしてくれていたのだが、俺はどこまでも空返事だった。

それがどれだけ失礼なことと分かっていながらも、俺は態度が同じままだった。


すると、目先に見慣れた黒髪と青いインナーカラーの女の子がいた。

そして、ピンクのオタ友の彩奈と一緒に俺と同じように少しだけ暗い顔をして歩いていた。


俺は、彼女に駆け出して行った。


「舞衣!昨日は済まなかった!嫌われて当然だ……少しだけ話をしてくれ……。」


すると、舞衣と彩奈は俺を見向きもせずすれ違う。

昨日までみんなで集まって飯を食っていたのが嘘みたいな距離感だった。


「待ってくれ!せめて話を……。」

「話しかけないで。」


昨日ぶりに見た舞衣は……悲しさと、憎しみが混ざったような見た事ない冷淡な顔をしていた。

俺はその表情に怯えて、何も話すことが出来なく膝を着いたみたいだった。


そして、彼女は道の角を曲がると見えなくなってしまって追いかける気力もなくなった。


「……大丈夫!?え、舞衣ちゃんと何かあったの?」

「うぐっ……ひぐっ!」

「え、ガチ泣き?大丈夫?」


俺は泣き出してしまった。

無様に……声を荒らげて感情がどんどん零れていくように。

それを覆い隠すように……早乙女は俺を屋上へ誘導してくれて、缶コーヒーを差し出してくれた。


☆☆


「……大丈夫?」

「すまん、やっと落ち着いた。」


俺は今回の件を一部始終渚に話した。

会長が女だったこと、彼女と仲良くなると彼女は余裕が無いように俺に縋り誘惑してきたこと、危うくそれに飲まれそうで関係を持ちかけたが断ったこと、その矢先に舞衣と鉢合わせをして嫌われた事だった。


泣きながら、しどろもどろに彼にそれを伝えた。


「あははは!やらかしちゃったね〜。」

「……笑い事じゃねえよ。」

「うん、笑い事では無いと思う。」


学校に行くと、俺はいつものメンバーとも会話が出来ず孤立していたので事情を初めて話したのは渚だった。


でも、ここまで話しても彼は僕を軽蔑することはなかった。


「いつもの居場所がないって……こんなに辛いんだな。」

「まあね〜、でも……今は試されてるんだと思うよ?」

「いや、めっちゃ無視されてたよな。」


いつもは直輝くん〜!なんて言ってるのに……あんなに無視されるのは初めてだった。


いや、俺が悪いんだけどね。


「でも、彼女の顔はどうだった?」

「……悲しそうだった。」

「でしょ!いつもはアプローチしてる側は舞衣ちゃんなんだから、もう過ぎた過去は仕方ないよ。信用が崩れたからこそ、今どう向き合うか試されてるんだと思うよ。」


分からない……いや、多分普段ならそれが無意識にわかるんだけど今は分からなかった。


「じゃあ……彼女に絶えず話しかければいいのか?」

「いや、今はほっといておこう。それはそれで気持ち悪いと思われるよ。女の子にペコペコすると逆効果だ。」


流石は女以上に女ができてる渚だ。

妙にリアリティが高く分かりやすい。


「……じゃあどうすればいいんだよ。」


「そんなの、簡単だよ。」


早乙女は見た事ないほど頼もしい表情でこちらに笑顔を向けた。


「目の前のことをちゃんとこなそう。何事もタイミングだと思うよ。」


そう、学校で孤立して彼女の信用を失った俺に残された道はただ1つ……この文化祭を成功させて打ち込む事だった。


しかし、この先俺にたくさんの試練が待ち受けてることは……まだ知る由も無かった。

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