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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第13章 メイド長と優男シェフの慰安旅行
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メイド長と優男シェフの慰安旅行 14話

※100日チャレンジ78日目

甲府から車で進むこと1時間半ほど……

私たちはスタバのドリンクを飲み干す頃には見慣れた景色にたどり着く。


そして、新宿で車を停めて歌舞伎町へと直行していた。


「いや、ことねさんもまさかこの店舗だったんですね!」

「そうなんですよ、ここしか知らないって言うのもあるんですけど。」

「もしかしたら、知らない間に僕たち出会ってたかもしれないですね。」


夜の歌舞伎町はまさに混沌そのものだった。


吐瀉物の匂いはほんのりするし、床にはタバコが落ちている。

時折巨大なネズミがはしりまわっていて、


黒人のキャッチのようなお兄さんはいるし、中年の男性と大学生のような女性が並んでいたり、明らかに未成年の子供たちが普通じゃない様子でたむろしていた。


「ことねさんは……歌舞伎町で遊んだりするの?」

「いえ、全くです。家と秋葉原しか行き来していませんでした。」

「僕もだよ、遊んでられる余裕が無くてね。」


そう、あくまで私たちはこの街にとっては客人である。いつまでも明るい夜の世界は私たちをラーメンを食べるだけのために誘っているのだ。


そして、やっとのことラーメン二郎へとたどり着く。


濃厚な豚骨と鼻をつんざくニンニクの匂い、そして20分ほど待ちそうな行列があり、店内にはピアノベースのジブリの曲が流れていた。


もう時刻は10時近く……、面子としてはサラリーマンばかりであった。

あと3時間もするとここはホストまみれの世界になる。

このように、二郎の客層も多種多様に溢れている。


しばらく待つと、やっと私たちの出番があった。

しかし、残念ながら私たちは隣の席になることは無かった。

でも仕方がない、そういうものなのだ。

席数は圧倒的に限られるし、ソロの方が多いからどうしても席は隣で座るのは難しい。


しかし、面白いことに私たちはそれも理解していた。


「トッピングは?」


「「野菜ニンニク背脂マシマシで!」」


最高のトッピングを注文する。

ちなみに意味は野菜はキャベツともやしの茹でたもの、ニンニクはニンニクのみじん切り、最後に背脂は豚の煮込んだものを入れるのだ。


私たちの目の前に山盛りになったらラーメンが盛られる。

ラーメンは太麺と、濃厚な豚骨が特徴のラーメンである。

何より特徴はこの常軌を逸した量である。

私たちは満腹中枢が働く15分より前に完食を目指す、

最初はチャーシューを食べる。


めちゃくちゃ重くなるからだ。

これも醤油ベースの味がしみており、噛めば噛むほど脂と塩っけがじんわりと滲み出てそれだけでも高い満足感を感じる。


しかし、手をとめない。

次に野菜を無尽蔵にかじりつき、どんどんと口へと運んでいく。


満腹中枢との戦いと、胃袋への負担を考慮して戦略的に食すセンスが問われるのも二郎の魅力だった。



最初は、この癖が強い味でもう行くまいと決めるのだけれど、不思議とこの癖のある味をしばらくすると求めたくなるのだ。


きっと、体がこのカロリーを求めてるのかもしれない。


「いい食いっぷりだな、あの姉ちゃん。」

「ああ、あっという間にマシマシと平らげそうだぜ。」


私たちの食べっぷりを見て周りもザワつく……。

つまるところ、マシマシは無理に選択しなくていい。

普通に注文もできるのだが、たまに私たちのような変態的なジロリアンはこういう注文をして完食をすることで高い満足感を得ていた。


いわゆる、ジロリアンの中でも異彩を放っているのだ。


私たちは、見事に15分以内で二郎のマシマシを平らげて、店員さんが取りやすいように上の棚に乗せて一声かける。


「「ご馳走様でした!」」

「あいよ、ありがとうございます。」


そして、無言のまま私たちは歌舞伎町を歩いて行った。

私はタバコを吸い、あきらさんは噛むブレスケアを口にして歩く。


え?どんな事を思って進んでるですって?


「き……気持ち悪い……。」

「食べすぎたね。なんであの量注文してしまったんだろう。」


自分の選択に後悔をしていた。

そう、この状態になることこそ、二郎の一連の流れなのだ。


でも、男の人と行くのは会話はなくとも、かなりの達成感と安心感はあった。

グロッキーになってもこの人への愛情は強まるばかりだった。


そんな時だった。

突然あきらさんのスマホから電話の着信があった。

誰だろう。


「あれ?お袋からだ。」


どうやら、あきらさんのお母さんからの電話だった。

あきらさんはスマホを持ち、1度こちらを見て頷いた後に電話に応答した。

何故かスピーカーにしてトランシーバーのように持っていたのでやり取りは辛うじてききとれた。


「もしもし、お袋?」

「あー!あきら……今何してたの?」

「……職場の人とラーメン言ってた。」


どうやら、彼女と言うのは恥ずかしいのか口篭りながら隠していた。


「お父さんのお墓に行ったんだね!ありがとう。」

「ああ、まあ……できる限りの報告はしてきたよ。」

「そっか……、ねえ?あきら……お店の金庫の下の封筒は見たことあったかしら?」

「ああ、見たことは無いな。あれがどうかしたのか?」

「今、良ければ見て貰えないかな?」

「なんで?」

「理由は言えない。でも、今だからこそ見て欲しいの。」


あきらさんは酷く困惑した表情だった。

そして、通話は少しだけ続いたあとに終わる。


そして、あきらさんはゆっくりとこちらを見ていた。


「ねえ、ことねさん……まだ時間ある?」

「ええ、ありますよ。」

「……もう少しだけ、一緒にいてくれないかな?」


本能的にこの後の展開を恐れたのか、少しだけあきらさんの顔は何かに怯えているようにも見えた。


私は、少し溜めてから彼へ答えを伝える。


そして、私たちは混沌に紛れた都会の不夜城をおなじ歩幅で進み、ゆっくりと人混みの中へと消えていった。


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