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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第13章 メイド長と優男シェフの慰安旅行
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メイド長と優男シェフの慰安旅行 10話

※100日チャレンジ74日目

私たちは朝ごはんやお風呂を済ませて10時頃にチェックアウトを済ませた。


気分としてはちょっと疲れてる感じがする。

まあ、あんだけ夜遅くまで体を動かしたのだ。


少し体の一部がヒリヒリしているけど、それよりも尾崎さんと繋ぐ手の温かさが心地よかった。


「こ……ことねさん……その……近くない?」

「んー?そうですか?」

「肩までピッタリとくっついてるんだけど……?」

「じゃあ、腕組みますか?」

「ちょっと、恥ずかしいよ。」


どうにも、私は体を重ねてから尾崎さんともっと触れていたいという気分になっている。

対する尾崎さんは……少し放っておいて欲しそうな感じがする。


これは、多分性格と言うより本能の違いなのかもしれない。そんなことをおもいつつ、私たちはトロッコ列車の駅に着く。


「って……ちょっと待ってください。……1部運休……なんですか?」


なんと、あいにく昨年あった自身の兼ね合いで一部運休になってしまったのだ。


「どうする?やめておく?」


尾崎さんも少しだけ不安そうな顔になる。

まあ確かにこれは誤算である。

意外とガサツな私たちが事前にホームページを調べることもなかったので仕方ないのだ。


私は、すこし考えてから決断をする。


「いきましょう、逆に考えるんです。こういうのも旅の醍醐味だと。」

「す……すごい、旅慣れた人みたいだ。それで旅行経験は?」

「んふふ、ゼロです。」

「いや、ゼロなんかい!」


そんな漫才をしつつ、私たちはチケットの購入をしてトロッコ列車に乗る。


トロッコ列車は普段乗ってる山手線の半分程度の横幅で、横一列に席が並べられていた。

そして、車体の外は露出していてアクティビティに溢れたデザインになっていた。


私たちは5両目に座ると、しばらくして列車は発車をする。

最初は普通の列車かと思ったが、景色が圧巻の一言に尽きた。


渓谷は木々顔生い茂っており、川の流れがよく見える。

ダム湖もあるのだが、それがエメラルドグリーンに光り太陽光を乱反射して美しかった。

何より、高さと断崖絶壁がスリルを演出していた。


なんていい景色……ここでタバコを吸いたい。

いや、吸っちゃダメなんだけどね。


この、少し揺れが強めのガタンゴトン……って感じも妙に心地よかった。

快適さとスピード重視の都内線とは大違いだった。


「わあ〜すごい!鉄橋のしたなんかは断崖絶壁ですね!スリルあって面白いです!」

「……。」

「……尾崎さん?」


私は尾崎さんを見ると尾崎さんは少し目を閉じながら震えていた。

え、どうしたの?


「……あきらさん。」

「お!?ちょ……下の名前びっくりする……ひいい……高い……。」


どうやら、高所恐怖症のようだった。

ヤバい、めっちゃ可愛い。

なんというか、可愛いって感覚最強な気がする。

かっこいいだと冷めた時が悲惨だと聞くのだけど、この旅行で何度も見るあきらさんの情けないところが可愛いと思ってしまう自分がいた。


まあ、実際は歳下だし、これが自然な反応なのかもしれない。


「って……ことねさんは、なんともないね。」

「ええ、私怖いものないので。」

「……年金問題、将来性、貧困問題、未婚率上昇。」

「やめてください!怖い言葉を羅列しないでください!」


どうやら、あきらさんも私の怖いものが手に取るようにわかるようだった。


なんとか、鉄橋エリアを超えると次はトンネルなどが多くあるエリアになったり、また次のダム湖があったりした。


中には発電所であったり、他にも西洋の城のような建築もあったりと、その度に私たちは反応をしたり、写真を撮ったりした。


「それにしても、自然ってホント凄いんですね。

山々とか、水の流れ、断崖絶壁なんてあったりとか……私、普段コンクリートしか見てない分新鮮です。」

「あはは、だって……都会にあるものは人が作ったものしかないからね!」

「……といいますと?」

「自然は神様が作ったんですよ!何年もかけて、ゆっくりとね!目の前にあるものだって、自然の小さな奇跡が重なって出来てるんですよ!」


……好きだな、その感覚。

確かにこんな景色は人は決して作れない。

そして、それでもこうやって自然と共存して必死に作ってきたであろうこのトロッコ列車も歴史を感じて敬意を払いたくなる。


こんなものが…私が生まれるずっと前から存在してるのだから。


「案外、私たちの命は歴史にとってはちっぽけなのかもしれないですね。」

「そうだよ、だから精一杯いきるんだよ。」


列車は少しずつ減速をする。

この先は通行止めになってるので私たちは猫又という駅で降りることになった。


「可愛い駅名ですね。猫ですって。」

「ね〜!僕、猫好きなんだよね。」


なんということだろう。

まあでもあきらさんは優しいので動物に好かれるところも目に見える。

ちなみに、私は猫に近づこうとして手を引っかかれたので多分動物から見たら歪に見えるのかもしれないけど。


私たちは、駅をおりて辺りを見渡すと、展望台があったので登って眺める。

すると、水の音が心地いい河川の音がした。

これから海へと目掛ける水たちをみて、河川の澄んだ岩の匂いを嗅いで、ここが本当の終点でなかったとしてもそれだけで私たちの心を満たしていた。


展望台をおりると撮影用のセットが用意されていた。

そこを見ると、老夫婦が写真を撮っている。

他に撮ってくれる人がいないのか……互いに入れ替わりで写真を撮っていた。


「あの……すみません、良かったら写真……撮りましょうか?」

「いいのかい?……じゃあ、甘えるとするか、婆さんや。」

「はい、お願いしますね。」


老夫婦はセットの前で手を繋いでピースをしていた。

おじいさんの方が足が悪いのか、おばあさんがそれを支えるようだった。


きっと、長年紆余曲折はあったけど支え合っていたのだろう。

そして、そんな人達にも直ぐに手を差し伸べるあきらさんは、やっぱり優しいとおもった。


「いっきますよ!はい、チーズ!」

「「チーズ!」」


パシャリ……と何回も写真を撮る。

どこか楽しそうに撮ってるようにもみえた。


「ありがとう、そこの奥さんとの写真も撮ろうか?」

「お……奥……!?」


その言葉に赤面してしまう。

どうやら、新婚カップルにもみえるのだろう。


「あはは、じゃあお願いします!……ことねさん、行こっか。」

「は……はい。」


私たちはセットに並んでピースサインをする。

あきらさんは自然な笑顔をしているけど、私は挙動不審なニヤケ顔をしてしまった。


「はい、チーズ」

「「チーズ!」」


不覚にも老夫婦と全く同じ反応をしてしまった。

少し恥ずかしかったけど、旅行を通じて知らない人と接するのも悪くないとは思った。


お互いに会釈をすると、おじいさんは先導をして少し足を悪そうにぎこちなく歩くのだが、やはりおばあさんが半歩後ろに立って支えて歩いていた。


「ばあさんや……もう長くないかもしれないから、後悔のないようにはっきり言うよ。本当にありがとう。」

「もう!じいさんったら!行きますよ〜。」

「お……おい!こういうのはだな……。きちんと言っておく事で!」


それ以降からは何を喋ってるのかは聞き取れなかった。


……なんか、こういうのいいなっておもった。

私も彼らのような幸せな人生を全うできるのだろうか?なんて、ほんの少しの不安を抱えながら。


すると、列車がベルを鳴らしてアナウンスが流れた。

「間もなく、帰りの列車が発車します。」


しまった、既に20分経っていたようだった。

私たちは互いを見て頷いた。


「ことねさん、行きますか。」

「はい。」


自然の木々の匂いと、川のせせらぎと鳥のさえずりが聞こえつつ列車は再び走り出す。


私は、あきらさんの手の甲に手を重ね、互いの体温を感じながら、全身に涼しげな風を浴びていった。

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