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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第13章 メイド長と優男シェフの慰安旅行
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メイド長と優男シェフの慰安旅行 8話

※100日チャレンジ72日目

私たちは畳張りの和風な個室に到着をした。


女将風の女性が一通り説明をすると、どんどん料理が運ばれてくる。


「あの……これは?」

「これは、白えびの昆布漬けですね!」


私はこの白いものを食べると脳に衝撃がはしった。

そう、白えびはほとんど臭みがなく、昆布の旨みがあって食感がねっとりとしていた。


「うまい!尾崎さん、これ美味しいですよ!」

「ほんとだ……おいしい、白えびの身を固めてるんでひとつの刺身のようですね。」


私たちはテーブルの上にあった日本酒をと併せて飲む、少しキリッとした辛めの日本酒は魚の旨味を引き立てていた。


その後もたくさんの刺身が運ばれたり、蟹まで運ばれてきた。


なんだこれは……豪華すぎる食べ物のフルコースは私の視覚を彩り、嗅覚と味覚をこれでもかと刺激をして私はご満悦だった。


私、こんなに幸せに過ごしていいのだろうか。


それにしても観光地のご飯は美味しい。

米ひとつでも、少し硬めの銀シャリに仕上げていたりと身近なものでも私たちを驚かせていた。


「ことねさん……おいしい?」

「ええ!最高です……私、一人でいつも何かを食べてるんですけど……尾崎さんとのご飯が今1番美味しいなって思います!」

「そ……そんな……はは……やめてくれよ、恥ずかしい。」

「いえ、事実ですよ。」


確実に私たちは朝に比べたら距離が近くなっていた。

私も言ってて恥ずかしいのだけれど、そんな反応を見せる尾崎さんが愛おしくてたまらなかった。


その後も食事は運ばれてきた。

ホタルイカをつかった沖漬けとか地元の郷土料理も混じえつつ、私は富山湾の恵みをこの食事で堪能することができた。


「い……いや〜、ことねしゃん、すごい食べっぷりらね〜。おしゃけもたくさんのんれ〜。」

「大丈夫ですか?かなりふらついてますよ?」

「らいじょうぶらいじょうぶ!」

「うん、これは大丈夫じゃないですね。」


少し驚いたことがある。

尾崎さんはかなりお酒が弱かった。

私は瓶を2本飲んだがまだ少しだけ余裕があった。

尾崎さんは、せいぜい2杯くらいが限界でチェイサーをしても呂律が回ってなかった。


私は、尾崎さんを肩車して自室に向かった。


少し大変だと思ったけど、これをやるのは初めてじゃない。むしろ、さやかがいつもこうなので少し手馴れている自分がいた。


私は、尾崎さんをダブルベッドにゆっくりと寝かせた。

これから一気に甘い夜……なんて思ったけど、尾崎さんかなり泥酔してるしな〜。


私は少しの希望を抱いて尾崎さんを見る。


「ガーッ……ガーッ。」


いや、爆睡じゃないの。

私も彼の隣で寝ようか悩んだけど、これだと故意にベッドを間違えて下心があると思われるようで嫌だった。


そんな時、急にスマホの着信が鳴る。

相手は……さやかだった。


私は、尾崎さんの睡眠を阻害しないように部屋を出て応答をした。


「もしもし、何?」

「やほー!ことねえ、今日デートだったっけ?どう〜?」

「どうも何も……お酒を飲んでこれから寝るところよ。」

「あはは〜いいね〜ラブラブだね〜。」

「ラブラブじゃないわよ!彼、お酒弱かったみたいですぐ寝ちゃったわ。ツインと間違えてダブルベッド予約しちゃったし、これからソファーで寝るの。」

「え、ことねえ……ツインベッドとダブルベッド……間違えたの?」

「うっさいわね、そうよ。」


さやかに常識が1歩劣ってると思うと少しだけ苛立ってしまう。

というか、なんの電話なんだろう。

彼と楽しい時間に割り込まれた感じがして、少しだけ不愉快な気分になってしまう。


「ねえ、ことねえ?こういう日こそ、大胆になってもいいんじゃないかな?相手きっと気を許してるよ。ちゃんと好きって伝えたら?」

「ちょ……何言ってるのよ!まだそんな時間じゃないわ!」

「いや〜22時だからそこそこ妥当かと……。」

「むう、さすがはベストセラー作家ね。」

「ことねえ、なんというか……私が言うのもなんだけど天然だねえ。まあいいや、頑張って行けるとこまで行っちゃいな!そんだけ〜。」


ブツっと突然電話を切られる。

いや、ほんとなんの電話なのかしら。


………いや、彼女なりの心配だったのだろう。

なんせ私は生涯恋愛経験がない女。しかも、かなりの奥手……尾崎さんに気持ちを伝えるためにも腹を括るしかないと思った。


そう思い、自室に戻る。

尾崎さんはぐっすりと寝ているようだった。


さっきまでソファーで寝る予定だったのだけれど、少しだけ大胆に行動をする。

私は部屋の電気を消して彼の隣に寝転がった。


最初は、背を向けて背中だけ彼にくっつけていたのだけれど、少しずつ彼が愛おしくなり少しずつ密着する面積を増やしていった。


大丈夫……起きてない。少し甘えたいだけ。

そんな背徳感を感じつつ、彼に近づいた。

私は、さらに方向を変えて彼を抱きしめるような体制に切り替えた。


「うーん……。」


少しだけ尾崎さんが唸り、私は少しだけ距離が離れるけど……さらにさらに距離を詰めて言った。

いけない、心拍数が死にそうなくらい上がっている。


普段毅然とした態度でメイドをやってるのに、彼との距離間に右往左往している。


私は、思い切って彼を抱きしめようとした。


「……ことねさん?」


尾崎さんは……起きていた。


「あわわわ……これはその……あれですね……その……若気の至りというか、少し甘え様にと思ったというか……。」


いけない、私は彼の寝込みを襲いかけたのだ。

気持ち悪い女として嫌われたと思い、絶望の縁に立っていた。

しかし、彼はゆっくりと私の手を繋いだ。


「…………いいよ。」


全てを語らない言葉に、私はゴクリと唾を飲む。

私は彼と抱擁を交わすと、少しだけ安心した。

温かい、はじめて感じた……殿方の体温。


昔、憎き実父に犯された時とは違う……安心感と快感が私の全身を包んでいた。


「尾崎さん……温かい。」

「……ことねさん、震えてる?」


その言葉にハッとしていた。

そう、私は緊張している。

これまでほとんど感じたことない感情に大きく揺らめいていた。


畳の匂いと、普段感じないシーツのひんやりとした感覚が慣れないかんじがして非日常感がさらに緊張を後押ししていて、私の感情は様々なものでぐちゃぐちゃになっていた。


「……ごめんなさい、私……昔父に犯された時しか男性経験がないもので、男性が怖いのかもしれません。」


そう言うと、彼は私の手を繋いでくれて、頭を撫でてくれた。

情けない私を、受け入れてくれるとおもうと無意識に震えが止まって言った。


「大丈夫、俺はどんなことねさんも……好きですよ。」


そう言われると、私の頭が血が登り赤くなってしまった。告白するのは私の役割だと思っていた。

しかし、それはちがっていて尾崎さんも私に行為を寄せていたのだ。


「最初はクールな人だと思ったけど、一緒に仕事をする姿勢を見て仕事に熱いプロフェッショナルな人なんだなって思ったんですよ……なにより、俺の料理を誰よりも美味しそうに食べてくれたり、俺を幾度と助けてくれた。なんか……そうする度に俺、あなたに惹かれていったんですよ。」


私も彼の顔に向き合う。

この人は私の見た目じゃない、中身も含めて好いてくれているのだ。

さっきのさやかの電話が、私の背中を後押しする。


「私も、尾崎さんのことが好きです!初めて会って、優しくしてくれた時から……一目惚れでした。」


私は、無意識に目尻から水分を感じる。

私は泣いていたのだ。

彼への好意を伝えるプレッシャーと、ほんとの心の内の気持ちを本気で伝えたことにより感情がめちゃくちゃだった。


「尾崎さん……好きです。こんな女でも……いいですか?」

「……僕でよければ。」


私は、暗闇の中少しだけぼやけて見える尾崎さんに接吻をする。

彼と行為を交わし、徐々に私はただのメイド人間から一人の女性へと戻っていく。


それからは無心に……彼を求め続けた。

本能のままに、まるで動物になったかのように。


かつて、父親にされた時とは違う……受動的ではなく能動的な行為。


それからの時間は……一瞬のようだったが、あっという間に時間が過ぎ去ってしまった。


☆☆


時計を見る。

時刻は丑三つ時で私が決して起きてることが無い時間だった。


全身はよく分からない感覚で、湿気と水分がこれでもかんじていた。

そして、服を着ないで彼と布団の中で抱擁を交わす。


ただ、脳には快感と、下半身には若干の痛覚が私を包んでいた。

しかし、それさえも彼と体温を共有していることで幸せな気持ちで溢れていた。


「……ありがとう、ことねさん。」

「そんな、お礼を言うのはこちらの方ですよ。」

「ううん、僕……父親が他界してさ……喧嘩ばっかりだったけど、そんな父親に認めてもらおうと頑張ってきて、でもその先に父親はいなくて……ずっと喪失感に襲われてきたんだ。生きてるようで……死んでいた。」


彼はいつも笑っている。

それは、そんな自分を見せないように強がっていたのだと身体を交したことで初めて知った。

彼は、実際は弱くポンコツで繊細なのだ。


そんな彼を……文字通り私は裸にしたのだ。


「私も、家族がいない状態が長くて愛を知りませんでした。メイドにいる時は嘘でも愛を伝えられるからこそ、この仕事が好きだったんですよ。でも、今あなたと交わした愛は……嘘なんじゃないかなって。」

「あはは、なんか僕たち……似た者同士だったんだね。ことねさん…これからも一緒にいてくれませんか?」



彼の提案を私は受けいれた。


また、彼への愛情が湧くのだけれど既に体力が残されてなかった私たちは、少しだけ身体を交わした後に意識はブツんと途絶えてしまったようだった。


温かい感覚と、お酒と体液が入り交じったような歪な感覚を残して。



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