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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第13章 メイド長と優男シェフの慰安旅行
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メイド長と優男シェフの慰安旅行 3話

※100日チャレンジ67日目

チュンチュン……


朝の小鳥のさえずりが聞こえる。

それに混ざって、キジバトの「ヴォーヴォー……フォーフォー。」という不気味な声も聞こえた。


私こと、神宮寺ことねは昨日対策をしようと思ったのに何も出来ず、慰安旅行当日を迎えてしまった。


昨日はニコチン中毒でさやかが倒れたのでその介抱に時間を割いてしまった。

そして、ヤケクソになり彼女と酒を混じえていたら朝になっていたのだ。


顔がいつもに比べて浮腫んでいる。

どうしよう、ほっぺが分厚い……彼にアンパンマンみたいだと言われたら立ち直れない気がする。


今は朝の五時……合流は8時なのであと3時間である。

いけない、準備をしないと。


私はまずいつも通りメイクをした。

私の顔は綺麗系である。自分で言うのもどうかと思うが。

なので、無闇矢鱈にチークを塗ったりとか、そんなに飾らないメイクをしていた。


そして、いつものように髪にヘアアイロンをかけた。

いつもストレートなのだが……少し巻いた方がいいだろうか?


とにかく私は横を少し巻いたストレートにして少しでも喜んでもらおうと最後のあがきをする。


1番悩んだのは服だった。

……どうしよう、私メイド服以外ここ数年着てない。

あとは通勤用のシンプルな服と……中学校の頃着ていたジャージの3パターンしかなかった。


どうしよう、着心地はジャージが1番好きだけど28のアラサーだとドン引きされるかな……。


結局、しばらくクローゼットに眠っていたワンピース選ぶことにした。

まあ、シンプルだし。


そんなことをしていたら、電話の着信が鳴っていた。

時刻を見ると、合流する15分前だった。


「もしもし……尾崎さん?」

「ああ!繋がった!……ごめん、ことねさん家の近くまで来たのは分かるんだけど。ちょっと分からなくてね〜、なんか……事故物件みたいなボロアパートがあるくらいなんだけど……合ってるな。」


すみません、それ私の家です。

どうしよう……こんなボロアパートに住んでいると知られたらなんか色々とドン引きされてしまうかもしれない。

私は、背に腹はかえられぬと決断をした。


「すみません、わかりづらいですよね。そしたらお迎えに参りますのでコンビニ前の公園で待っていて頂けますか?」

「ああ、いつも助かるよ。」


そして、彼の電話が終わると私は1つため息をして、ボロアパートを出た。

そして、ルートを特定できないように少しだけ遠回りをして例の公園まで来た。


「あ、ことねさん!こんにちは!」


公園には……白いロードスターというオープンカーがあった。

そう、完全2人乗り用の車である。

そして、尾崎さんは普段のコック服ではなく、少しワイルドにダメージジーンズと、筋肉を誇張するかのように少しピチッとしたTシャツを着ていた。


いかん……セクシーすぎて鼻血が出る。

なんというか、普段は誠実なのにこういう時は少しワイルドになるギャップがなんとも言えなかった。


「かっこいい車ですね、尾崎さんのですか?」

「うん!たまにこれで旅に出るのが僕の生き甲斐なんだ!こういう時くらい……ちょっとイキりたいというか……まだまだ僕も子供だな。」

「いえ!可愛いと思います!」

「そうかな?ことねさんは優しいね。」


私は彼の車に座る。

乗り心地はものすごく良かった。

オープンカーなので夏の暑さに晒されるかと思ったけど、冷房が下で循環されていたのでかなり快適だった。


そして、彼はクラッチを踏みギアを変えて発進をする。

すごい…マニュアル乗れるんだな。

もうそれだけでなんかかっこいい気がする。、

車の中の曲は……B’zの曲が流れていた。


「ああ!ことねさん……B’zなんて聞かないよね!ごめんごめん!なんか好きな曲ある?」

「いえ、尾崎さんの好きな曲でいいですよ。B’z好きなんですか?」

「ああ、死んだ親父が好きでね……多分お袋のお腹の中でも聞いていたから世代はちがうけど曲が身に染みてる感覚があるんだ。」


親の影響らしい。

でも、今のワイルドな尾崎さんにはピッタリだった。

気がつくと、首都高速道路に乗り込み、スピードが早くなる。

実は滅多に高速道路に乗らないので気が付かなかったのだが、まるで空を飛んでるかのような感覚があった。


「あれ、あんまり高速道路乗らない?」

「ええ……普段仕事ばかりでしたし、家族旅行とかもなかったんですよ。」

「え、そうなの?」


尾崎さんはいつもより少しだけフランクに接してくれる。なんかそれが彼との関係性が近づくようで嬉しかった。


「なんというか……色々大変だったんだね。僕もオヤジが亡くなって、たまに母親に仕送りしてるけど家族がいない感覚なんて考えられないや。」

「いえ、まあでも慣れたものですよ。それよりも今の旅行はものすごく楽しいんですよ。」

「おいおい、まだ序盤も序盤だよ。」


彼との会話は子気味良かった。

適度に無言の時間があるし、不思議と安心感があった。


高速道路は埼玉県を通過していく、

ルートを見ると関越自動車道というところを通って、埼玉……群馬、そして長野と新潟を行くルートだった。


えー、所要時間は……5時間?

片道5時間というルートだった。

私は少しだけ尾崎さんに負担がかかるのでは無いかと心配になる。


「あの……尾崎さん。片道5時間ですけど大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だよ!いつもこうして全国回ってね〜。四国とか、広島とかも行っちゃうくらいだから大丈夫だよ!」


なんとアクティブな性格なのだろう。

仕事が終わったら畳に寝転がり天井を見てタバコを吸っている私とは大違いである。


いけない……ニコチンのこと考えたらタバコを吸いたくなってきた。

完全に末期である。


「ああ……それと……。」


尾崎さんは私の前をトントンと指さすと銀色の灰皿が用意されていた。


「ことねさん……タバコ好きだよね。もしあれなら吸っていいよ。」


私は驚いた。

実は彼にはタバコを吸うことは隠してきたつもりだった。

タバコを吸ったあとは消臭をしてたりしたのにどうしてだろう?


「たまに仕事前に喫煙所入るのみてさ……たまたまセブンスター吸ってるの見たんだけど、ことねさんタバコ吸う姿かっこいいよね。それにオープンカーだから臭いは着きにくいから大丈夫だよ!」


バレてた〜!!いけない……つい、前のメイド喫茶の時からの習慣が裏目に出てしまった。

私はバッグの中のセブンスターを持つと、ゴクリといきをのんでしまう。


もう、かれこれ1時間以上吸っていない。

吸いたい……私は一日に一箱消費しないと気が済まないのだ。


「す……すみません。」

「ああ!いいよいいよ!無理に気を使わなくてさ!」


尾崎さんはとにかく優しかった。まるでありのままの私を受け入れてくれるようだった。

セブンスターに火をつけ、肺まで煙が入ってくる。


ああ……うま。

緊張が一気に解けるように全身にリラックスする感覚があった。

やっぱり私にタバコが無いのは無理なのかもしれない。


B’zの曲のギターソロが流れてきてそれに呼応するかのようにタバコの煙が体に馴染み、車は一気に加速していく。


まだまだ私たちは埼玉県の中である。

普段より少し田舎な景色のなか、風が強く車内にも吹き荒れていた。

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