僕のクラスメイトは托卵女子 5話
「それにしても、佐倉すごいよな〜!」
「確かに、僕にはできなさそうだ。」
実際、佐倉さんの仕事ぶりは凄かった。
外国人相手には英語で接客をして、チェキをとる時には英語で読んでいたが発言がとてもネイティブに感じた。
それにお客さん、もといご主人様に対しても接客の態度を変えないのだ。基本的に僕は1人でラーメンは行く位なので外食は行くのだが、接客まではほとんど見ない。
あまりにも極端であれば覚える程度なのでやはり料理の質にしか興味を示さないのだ。
しかし、接客での笑顔や活気、そしてその業界での洗練さを感じると下手にメイド喫茶もバカにできないクオリティなのだ。
確かにこれは5000は行く価値はあるのかもしれない。
僕はもう、あそこに行くことは無いのだけれど。
「いやいや〜そんな事ないよ!最初は女の子がかわいいからこんな子達と一緒に仕事が出来ればな〜なんておもったんだよね。あそこ面接も何回もやるし。」
「え、そうなの?」
「そうよ、接客業だしコンセプトも重んじてるからそういう所もしっかりしてるのよ!」
通りで接客や教養などがとても通っているわけである。こういうところもリピートに繋がっているのだろう。
すると、突如誰かのケータイから着信が聞こえる。
僕は着信をかける相手なんてかあちゃんくらいだから俺以外の2人のどちらかである。
「あ、俺だわ。」
着信したのは飯田であった。
しばらく話すと、どうやらただ事では無いみたいだったので少し様子が急変する。
「なにぃ?守谷と堀田がトー横の近くでトラブってる?…うーん、しょうがないな…、わかったわかった。」
しばらく相槌を飯田が打つと電話が終わる。
どうしたんだろう…飯田は時折このようなトラブルの仲裁に行かされることが多いのでもしかしたらまたその話だったんだろうか。
「すまん、俺行くわ。どうやら水泳部の後輩がさ〜なんかやらかしてるみたいだから…2人で帰ってくれないか?」
「ほんと、お前も苦労人だよな…大丈夫だよ、佐倉さんはちゃんと家の近くまで送るから。」
飯田は少しダッシュするのか足を解しながら会話をする。こいつはつくづく良い奴なんだなと少し不憫にも感じていた。
☆☆
俺と佐倉は、一先ずファミレスへと足を運んだ。
イタリアンで緑色の看板が特徴のあのファミレスである。
俺はメイド喫茶で一通りの食事は終えたのだが佐倉さんはかなりお腹が空いてるとの事だったので店に入店をして、俺は軽めにフォカッチャを頼んだ。
佐倉さんはというと…
「すみません、ミラノ風ドリアとピザとカルボナーラと辛味チキンと…。」
彼女かなりの大食漢なのかかなりの量を注文する。
これだけでどれぐらいのカロリーを補充できて…華奢な体のどこに栄養が行くのだろうかと疑問だったのだが、そういえば彼女は胸に強力な爆弾を抱えていたのでおそらくそちらに栄養が行くのだろうと理解するには大して時間はかからなかった。
しばらくすると、大量の食べ物がテーブル1面にズラっとならび、バイキングのように豪華な食事となっていた。
「佐倉さん…お金は大丈夫なの?」
「大丈夫よ、私親はほとんど帰ってこないもの。だからいつも私にはクレジットカードを渡されてるだけよ。」
「すごいな、よく未成年にクレカなんか渡せるよな〜。俺の母ちゃんもそんな事しないよ。」
どうやら、佐倉さんの家庭もなにやら訳ありな家族のようなので深くは聞かない。家庭なんて1つのシャボン玉のようなものだから、もし触れたら即座に触れてしまうだろう。俺の家もそうなのだから。
しかし、そんな暗い俺の思惑とは裏腹に佐倉さんは美味しそうに食べ物を頬張っており、幸せの絶頂のような恍惚とした表情を浮かべていた。
「美味しそうに食べるね。母ちゃんといい勝負だよ。」
「わかるかも!天野くんのお母さんほんと綺麗だもんね〜、でも…なんかどこかで見たことあるような。」
「気のせいだと思うよ、うん。」
俺の母ちゃんがAV女優だったことは飯田を例外として基本的に他言無用にしている。そもそも女性はAVをみるのかどうなのかすらもわからないので、知らぬが仏の精神を貫くとしよう。
「そうよね、他人の空似ですもの…。ねぇ、この後どうしよっか。」
「どうするってもう21時だし、帰宅以外あるの?」
「えー!天野くんってほんとなんというか…草食系すぎると言うか…なんというか絶食すぎるよね。」
「よく言われるよ。」
どうしたのだろうか、佐倉さん今日は少し様子がおかしい。いつもの独りだけど彼女なりのキラキラさがあまりにも見えない。
なんというか、目が少し据わっていて妙に居心地が悪いような気がする。
「ねえ、天野くん。今日うちに来ない?」
「え?」
え?いやいやいやいや!なんでそうなる?
どうしたの!佐倉さん…どうしてこんなにも行動が突発的すぎるのだろうか。
普通は女子は夜に男を家に呼ぶなんて明らかに普通じゃない。というか、お互い未成年なんだしそういうのは少し怖い気がする。
「ごめん、そろそろ門限があるんだよね。」
もちろん門限なんて嘘である。
なんというか、この先は行ってはいけない気がする。
しかし、彼女は降りることは無かった。
「じゃあさ、勉強教えてあげるし帰りたかったらすぐ帰ってもいいからさ…少し話を聞いて欲しいの。お願い。」
俺は、悩んだ挙句彼女の言われるがままゆっくりと頷いて運命を委ねてしまうことになった。




