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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第13章 メイド長と優男シェフの慰安旅行
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メイド長と優男シェフの慰安旅行 2話

※100日チャレンジ66日目

ここは町田という街にあるシーシャバーというところである。


水タバコを吸うことが出来、オシャレな景観の中たくさんの甘かったり爽やかなフレーバーのシーシャを吸うことが出来る。


そこで私は施設の時からの知り合いである笛吹さやかを呼び寄せていた。


私はチョコミント、さやかはブルーベリーのシーシャを吸っていて、少しエレガントにソファー席に腰掛けていた。


「どうしたんだよ〜ことねえ。私を呼び出しなんて珍しい。シーシャは奢りな〜。」


いや、言われるまでもなく出すつもりだけど……こうして釘を刺すあたり本当にお金が無いのかもしれない。


あれ、この子……ベストセラー作家なのよね?

今年映画化する予定の。


「勿論、来てくれてありがとうね。」

「もう!私は忙しいのに……。」


珍しく彼女は機嫌が悪い。

なにか仕事で行き詰ってるのかしら?

それは可哀想である。今回はこちらの話を聞いてもらうのでせめて愚痴でも聞いてみようかと試みる。


「そうなの?お仕事大変?今日……やることいっぱいだった?」

「勿論!今日はパチンコで一発逆転をして、その後は昼飲みをして、タバコを吸ってから昼寝する予定だったのにー!」

「……。」

「ちょ!?ことねえ、なんでシーシャの炭を構えてるのかな?それ……投げるものじゃないよ!?ごめん、私が悪かった。」

「……ごめん、ちょっとカッとなっちゃった。」


私は座り込み、一度冷静になる。

そう……私は怒りすぎた……。


いや、昼間からパチンコと酒?

なんてクズ・オブ・The・クズの王道をいってるんだろう。この子まだ26だというのに。


「なんというか、あなたが金欠な理由がわかった気がするわ。」

「なんだとー!私は運命を変えられるんだぞ!それでも!ユニコーン!!」


さやかは両手の人差し指をピンと立て、V時を描いて顔をアップさせる。

ちょっと何を言ってるか分からないけど、パチンコの演出らしい。

私は一周まわって呆れてしまった。


「え、あなた……印税とかは入るのよね?不労所得じゃない、私羨ましいんだけど。」


そう、彼女はこう見えても小説のベストセラー作家、成功者なのだ。それも日本で上位に入るほどの所得はあるはずなのにお金が無いとは違和感でしかない。


「……ことねえ、個人事業主はね?去年の収入を参考に税金をかけるのよ。」

「話が見えないわ。」

「去年めちゃくちゃ売って、次の年は売れなかったら……税金はめちゃくちゃ売ってる前提でかかるのよ。お金が無いのに………ちきしょーー!!!」


どうやら、お金の知識はあんまりなかった故に貧困になってしまったらしい。

確かに、図書館にも並んでるくらいだからこれ以上は印税が入らないってことになるのか……。


「ごめん、てっきりギャンブルのし過ぎで金がないのかとばかり……。」

「いいよ、少し話してスッキリした。それで、話って?」


あ、忘れていた。

私は明日尾崎さんと慰安旅行に行く。

家族とも行ったことすらなかったので相談に呼んだんだった。


「そ……そのね……今度友達と旅行に行くんだ。」

「男?てか……ことねえの周りに男って……あ!メイド喫茶のシェフの人とか!?」


こいつエスパーなのかしら?

なんでそんなピンポイントで当てられるのだろう。

ここがベストセラー作家の勘とか……いや、目の前にいるのはただの酔っぱらいだ。


「な……なななな……何を言ってるのかしら?」


私は口ごもりながらシーシャを肺まで吸い上げる。

ふむ……セブンスターのような快感はないけど、甘くていくらでも吸えそうだし、下の液がコポコポ音を立てるのが心地よいと感じた。


「あはは〜まあいいや、じゃあ、男と二人でデートなんだね〜。」

「ゲホッ!ゲホッ!」


いけない、話を逸らそうと思いっきり吸ったから呼吸困難で死にそうだった。

私はしばらく蒸せた後にジャスミンハイを飲んで整える。

そう……リラックス……リラックス……。


「そんなんじゃないわよ!尾崎さんとは。」

「へ〜、尾崎さんっていうんだ……。」

「尾崎さんじゃないわよ!」

「……ことねえ、昔から不器用なのは知ってたけど今日は相談に来たんだよね?私くらいは素直に話してもいいと思うよ?別に否定しないから。」


そう言われ、一度頭に昇った血を下げて深呼吸をする。

ああ、ダメだ。普段は冷静に萌え萌えきゅんとか言ってるくせに尾崎さんのことになるとどうにも血が上る。


「ごめんなさい、尾崎さんと行くの。」

「うん!それでよろしい!ことねえは尾崎さんといるのは楽しいの?」


なんだかんだ……この子は人の心をつかむのが上手い。

小説を書いてるから、きっと想像力はずば抜けているのだろう。


「なんというか……尾崎さんの爽やかな声とか……太い腕から見える血管とか……仕事をしてる時の汗とか……色んなものを見るとなんか、体の奥から熱いものが滾るような感覚があるのよ。」

「そ……そうなんだ……。」


いや、話を聞くって言っときながらちょっと引かないでよ。

少しエピソードが具体的だったかしら。


「ごめん、そうじゃないわ……。尾崎さんの飲んだあとのペットボトルが欲しくなったり……。」

「お巡りさん、こいつです。」

「なんでよ!!あなただって高校生と同棲してるじゃない、それよりはマシよ!」

「それを言われると何も言えない。そして、れんれんとは同棲ではなく居候させてもらってるの。

あの……ことねえ、その……なんというか……多分その人のことめちゃくちゃ好きだよ、ことねえ。」


少し居心地が悪そうに、でも決心を変えないようにさやかはまっすぐそう伝える。


そうか、これが……恋という感情なのか。

でも、私は尾崎さんとどうなりたいかとかはない。

一緒にいたいだけなのだ。


「私は……どうしたらいいのかしら?」

「……好きっていえばいいんじゃねえのー?あとは誘惑してお互いの愛を確かめ合うとか……。」

「やめなさいよ!公衆の面前よ!」

「あはは、冗談。」


相変わらず、平気で下ネタを言ってしまう。

この子にはやはり1歩及ばないわ。


そして、タイマーがなる。

このシーシャバーは時間制なので少しキリの悪いタイミングでこの話も終わってしまいそうだった。


「まあ、でもね……1番はその人との時間を楽しむことだよ。下心とか抜いてね。」

「そう……なのかしら……。」

「そうだよ!ことねえはまずはステップをきちんと踏んで学べばいいの!男なんて私らじゃあ一生理解できない生き物なんだから、まずは普通に二人で話しが出来れば100点なんだよ。だから、楽しみな!」


そう立ち上がり、彼女は立ち上がった。


「さーて、また私は小説の取材のために散歩行ってきマース。」

「さやか……ありがとうね。またいこ。」

「うん!また悩んだら相談しなさい、次からは隠し事無しなー。」


そう言って、彼女は店を出る。

私もしばらく沈黙した後に立ち上がりお会計を済ませて外に出た。


やる、やってやる。そんな想いでいっぱいだった。

勢いよく飛び出すと、何かを蹴り出してしまった。


いけない、猫かな?と地面をみたらさやかが倒れて悶えていた。


「え……ちょ……さやか!?」

「に……ニコチン……吸いすぎた……。」

「さやかーーーーー!」


私たちはかっこ悪い大人だ。

だからこそ、こうして助け合っていく。

時刻はもう18時を過ぎるのに、一向に暗くならない空模様はまだまだ夏が終わらないことを示唆するようだった。


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