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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第12章 学校のマドンナはおとこの娘
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学校のマドンナはおとこの娘 13話

※100日チャレンジ64日目

渚の母親は、スーツを身にまとい以下にもキャリアウーマンという見た目だった。


目鼻もキリッとしていて、カワイイ系だった渚とは相反して一貫して綺麗系である。

飯田に見せたら興奮しそうなくらいの美人であった。


ただ、顔全体は透き通るほどの美人なのに眉間だけはものすごくシワがよっていて俺も圧倒しそうなほどの覇気があった。


そして、ゴミを見るような目で父親を見ていた。


「何してるの……?渚に変なことさせないでよ。」

「ち…違うんだ彩子……渚との触れ合いというやつで。」


パァン…

乾いた平手打ちが父親の方を赤く染めていた。

やば、手が出ちゃう系の母親…ってコト?


「2度は言わせないで。」

「す…すみません。」


温厚な父親をたったの5秒で分からせてしまった。

渚の顔は見えなかったけど、少しだけ震えてるのがわかった。

俺もこの場から逃げたくなるほどの威圧感だった。


「そちらはお友達?」

「そ…そうだよ、学校で仲良くなったんだ。」

「へぇ〜。」


すると、コツ…コツ…とヒールの音を立てながら早歩きでこちらに近づく、俺は舞衣より1歩出て彼女を守るように前に出た。

そして、まるでキスするような距離まで彼女の顔がドアップにされる。


いや、怖いって…暴力団並にメンチ切られてるんだけど。


「いらっしゃい、渚には変なこと吹き込まないでね。」


凄い、最低限の礼儀はするけど言いたいことははっきり言うんだな。

俺の母ちゃんとはまるで真逆の性格だ。

まるで全てが自分の管理下でないと気がすまないように。

でもこの人なりにこの家庭を守ってきた証拠でもある。

やり方が独裁政治なだけで。


「じゃあ、ご飯にするわよ。渚…ご飯作りなさい。」


そう言って、この場を後にしようと母親は去っていった。

なんという威厳だ、ほんの少ししか喋ってないのに空気を我がものにしている。

これは渚が怯えるべきだ。


しかし、渚は震えながら拳を強く握っていた。


「母さん!!」


コツ…とハイヒールの音が止まる。

どうやら母さんと呼ばれるのが気に入らないみたいだった。


「あなた…私のことはママと呼ぶように教えたはずだけど?」


母親のおでこに青筋が立っていた。

こ…こええ…鬼の形相って言葉があるけどまさにこの顔なのだと実感した。


「母さん!ボクは……ボクはやっぱり男でいたいんだ!だから……。」


すると、渚の顔に拳が出される。

そして、口の中を切ったのか口から血を出して渚は尻もちを着いていた。


「何言ってるの?貴方は女よ?私の言うことだけ聞きなさい。」


母親は自分の言っていることに1点の曇りがなかった。

まるで自分の目の前にいる子どもが娘だと信じて疑わないように。


そして、渚は決心が着いたのか立ち上がってまた向き合っていた。


「もう…沢山なんだ!!服も髪も……身体も母さんに好き放題やられて……でも僕の性自認は男だ!男なんだ!」

「じゃあ……なんで男に生まれてきたの!母さん……やっとのことであなたが生まれたのにガッカリしたのよ!あなたは顔は可愛いんだから娘として可愛がって上げてるじゃない!」


完全に……エゴの塊だった。

その言い分を聞いてるだけで胸糞が悪かった。


「何言ってるのよ!ただ操りたいだけじゃない!渚はね……今まであなたのせいでひとりぼっちだったのよ!!」


流石に舞衣もこの言い分には耐えられなかったようだ。

この母親は……渚のことをなんにもわかってないようだった。


「黙ってなさい、関係の無い小娘が話に入ってこないでちょうだい。」

「関係あるわよ!私と渚は友達だもの!なんで渚の事をそんなに認めてあげれないの!」



舞衣は……怖いだろうに少し涙目になりながら怒っていた。そして、渚のことを友達だと言ってくれたのは俺も心底うれしかった。


「お願いだ、母さん……。ここまでボクを育ててくれたのは感謝している。習い事だって行かせてもらったから感謝はしてるんだけど……そろそろ自立させてくれないか?」


その言葉に、母親は今日1番の青筋をハッキリと見せていた。

それだけで激昂してるのが分かる。


「もう…あなたなんか…私の子じゃな」

「それ以上は、言わないでいてあげてください。」


本能的に、その言葉を言わせたくはなかったので俺も止めた。


「うるさいわね!あなたには何がわかるって言うのよ!」

「それ以上言うと……あなた達は二度と家族として認識できなくなってしまう気がします。渚はあなたに逆らいたいんじゃないんです。心底愛してるんですよ。」


そう、渚は反抗したい訳じゃないのだ。

そこを理解してないからこそこの人は怒っているのだ。


「じゃあ!じゃあなんで渚は私の思い通りにならないのよ…、私は渚のために何でもしてきたのよ!!なのに……なのに!」

「……渚はあなたのことを常に考えてました。電話が来た時はあなたを最優先にしてました。でもだからこそ、渚は自分の足で人生を歩んで見たいと思ってるんです。彼なりの成長なんですよ。」


俺は、怒らせないようにきちんと母親を諭すと、少しだけ考えていたようだった。

どうやら、根本的に話が通じないタイプ…という訳では無いみたいだった。

ちょっと機嫌が悪かったりしてる中でこの光景が寝耳に水なだけだったのだ。


「母さん……本当にごめんなさい。母さんの娘に慣れなくて……。でも、いつか母さんにボクを育てたことを誇ってもらえるようになりたいから……だから。」


渚は泣きながら少しだけ息を強く吸った。

きっとほんの少しだけ勇気を振り絞りたいのかもしれない。


「だから……ボクを息子として、認めてくれませんか?」


…………。

しばらく沈黙が流れる。

それはたった一瞬だったのに、ものすごく長く感じた。

もう二度と母親に愛されないかもしれない、だけど渚は言ったのだ。


そして、母親は後ろを向いてまた歩み出していた。


「お腹すいたから晩御飯……作ってよね、渚。」

「う…うん。」

「それにあなたも…殴って悪かったわ。」

「あ…ああ、大丈夫だ。」


答えにはなっていなかった。

きっと、素直になりきれてないのだが、100点満点の結果だった。

少しだけ、渚を認めてくれたのだ。

それだけでも、1歩前進だった。


「あと!あなた……名前を聞かせてくれる?そこのお嬢さんも、泣かせて悪かったわ。」

「天野…直輝です。」

「佐倉舞衣です。」


「そう、渚とこれからも仲良くしてちょうだい。」


せめて顔は見てほしいものだったけど、彼女なりに少しだけ懺悔の気持ちもあったので良しとしよう。


何がともあれ、この家族のほんの少しの手助けになれたのだった。

きっと、この家族の未来は少しだけ明るくなっているのかもしれない。


渚が母親の失礼に手を合わせて俺に無言で謝罪をしていたのが、何よりの証拠だった。


☆☆


10年後…

ボクはかつて母さんと大きく揉めた庭で母さんと久しぶりに再会をする。


「ただいま〜母さん。」

「渚…!久しぶりねえ、仕事は忙しい?」

「ああ、なかなかにね……もう出張ばかりで全国を回ってるよ、今日はたまたま休みだよ。」

「ああ、それに……今日はあいつもきてるぞ!」


ボクこと…早乙女渚は1人の女の子を呼ぶ。

何を隠そう…ボクの娘だった。


「おーい、一花!」

「あい!」

「まあ!一花ちゃん…きてくれたの!おばあちゃん嬉しいわ!」

「ああ、おばあちゃんとかわいいお洋服を探したり、髪を結って貰えるのを楽しみにしてたんだよな!」

「うん!おばあちゃん大好き!」

「もう〜孫って可愛いわね!渚も服選んであげよっか?」


母さんの冗談に…俺は苦笑した。

ホルモンの投与をやめてから、ボクは正真正銘の男になった。

それどころか、妻がいて…娘もいる。

ボクは立派な父親になれたのだ。


「よしてくれ、ボクは…男なのだから。」

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