学校のマドンナはおとこの娘 7話
※100日チャレンジ58日目
キーンコーンカーンコーン……
お昼までの授業が終わり、俺たちはいつもの屋上で昼飯を食べる。
面子は彼女である舞衣、最初からずっと一緒にいてくれた親友の飯田を集めてみた。
「あー、今回集まっていただきありがとうございます。」
「いや、いつもこのメンツで食ってるよな?」
「ね!どうしたの直輝くん、いつもに増して変だよ。」
「こら!そこ私語を謹んで!」
とはいえ、各々緊張感のない感じで昼飯を食べている。
舞衣は手作り弁当、飯田は売店の焼きそばパンを片手に食べている。
取り敢えず最初は最小限の人数、かつ俺の信頼できる仲間に伝えることにした。
あまり広めすぎても渚の立場も考えると可哀想だ。
「ほら、入っていいぞ!」
「……どうも、早乙女渚です。」
居心地が悪そうに渚が入ってくると、2人は唖然としてしまった。
まあ、学校のマドンナって言われてるくらいだし、驚くか。
「お前、早乙女も落としたのか……やるな。」
「うえええ!直輝くん、私一夫多妻制は耐えられないわ!」
どうしよう、2人共致命的な誤解をしている。
「違うんだ!渚と俺は友達だ!フレンドだよフレンド。」
「「セフレ?」」
「んなわけねえだろぉぉおおお!」
どうしてこの2人はその発想に至るのが早いんだろう。
ほら、渚もストレートすぎてあわわ……とか言ってるし。
「実はな……渚は男なんだよ。それで昨日から仲良くなったんだけど、結構孤立しててさ……みんなとも仲良くして欲しいっていう相談だったんだよ。」
これ以上は2人の高すぎる想像力で俺と渚が兜合わせをしてしまいそうだったので俺は簡潔に要件を伝えた。
すると、2人はホッと胸をなでおろした。
「でも、胸はそこそこあるのね?」
「ああ、母親に女性ホルモンを長く投与されてるから膨らんじまったみたいだ。」
「なるほど……なんか、事情があるみたいね。」
普段ヤンデレモードになると手をつけられない舞衣も今回ばかりは納得が早かった。
いやほんと、そこは誠実でいきますよ。
「なあ、これドッキリじゃないよな?本当に早乙女は男なのか?」
「もちろんだ。」
「なんなら……触ってみる?」
「……(ゴクリ)。」
渚の提案で飯田がスカートの中に手を入れ彼の下半身を触る。
なんて絵面なんでしょう。
この物語に規制が入らないかだけ心配です。
しばらく何回か触っていると、飯田が酷く絶望したような顔立ちになって、しゃがみこんで顔を隠すようになった。
「お……男って信じて貰えたかな?」
「ああ……早乙女……この手でよーく理解した。俺のよりでかいのがショックだったが。」
どうやら、別のことでショックを受けたらしい。
「このように、渚は親の意向でこんな感じになったんだけど、友人として接して欲しい。……頼む。」
俺は2人に頭を下げた。
いきなりめちゃくちゃな事を言っている自覚はあった。
しかし、しばらくすると2人が笑っていた。
「お前……ほんと良い奴だよな。」
「ね!お人好しがすぎるというか、そういう所も好きなんだけど。」
「当たり前だろ!お前の友達は俺の友達だ!協力するよ。」
「私も!ねえ、渚!私前からあなたのメイク知りたかったの、教えてくれる?」
「う……うん、もちろんだよ。」
どうやらこの2人に打ち明けて正解だったみたいだ。
俺も2人の反応を見てほっとする。
「なおっち〜聞いたよ。」
すると、屋上のハシゴの上からさらに声が聞こえた。
そこから、ひょこっと学校一の不良である虎ノ門龍がひょこっと顔を出した。
「水くせえじゃねえかよ〜なおっち。」
「ごめんごめん、てっきり学校に居ないもんだと。」
「いや、この学校のレベルに合わせるよりも独学の方が効率よくてさ〜。」
「と……虎ノ門……!」
気だるそうに歩く龍の様子を見て渚は震えていた。
あ、そっか……普段不良で話通ってるから危険人物扱いされてるんだっけ。
「ああ、気にしなくていいよ。こいつも友達だから。」
「直輝くん……なんか人望厚すぎない!?」
まあ、紆余曲折を経てますからね。
その間もいじめとか暴力沙汰はありましたよ。
俺も初対面はこいつにボコボコにされたからな。
「んー、性同一性障害……とも違うよな。男性器の去勢手術もなし……と。」
「なんか、医者っぽいこと言ってるよ、この不良。」
「ああ、いや……俺東大医学部目指してるし。」
「え、これギャグ?」
「ああ、ガチだね。」
どうやら渚もキャラは濃いけど俺の周りもキャラが濃かったみたいだ。
「まあ、早乙女よ。俺となおっちは友達だし、お前が困ってたら俺もサポートするよ。みんな親の事で苦労してたしな……おれもダチってことで気軽に龍って呼んでくれよ!」
「よ……よろしく……。」
龍と渚が握手をする。
その後は、龍も昼飯に加わりみんなで各々の話をした。
親の事で苦労をしたり、それぞれの境遇を話したり……気がつくと最初は会話に馴染めなかった渚も持ち前のコミュニケーション能力でみんなと打ち解けてきたのだった。
キーンコーンカーンコーン……。
午後の予鈴がなる。
俺たちは立ち上がり次の授業に臨むことになった。
すると、渚は俺の手を優しく掴んだので俺の足がとまった。
「あの……直輝くん、本当にありがとうね。初めて学校に本当の居場所ができた気がするよ。心が軽くなるのを感じた。ボクは君になんてお礼をするべきか……。」
俺は、クスリと笑って早乙女の肩に手を置いた。
「んなもん……気にするなよ!俺は君を歓迎する。それだけ。」
小さな輪が大きな輪と幾つも共鳴して大きな輪になっていく、俺たちは雨のバケツの中の水のように幾つも波紋がぶつかり合って大きな波紋になるように、輪が大きくなっていく。
俺たちはそれでいい、それがいいんだと思う。
今回はみんなに助けられた。
それだけでも、人生おいて変え難い幸せだと感じた。




