僕のクラスメイトは托卵女子 4話
なんということだろう、メイド喫茶というのはわずか25畳近くのスペースには満席でお客が座っていた。
カウンター席とテーブル席があるのだがどちらも満席である。壁はピンクに染まっていて謎のBGMだって聞こえてくる。
何から何まで未知の空間であった。
俺達は佐倉さんにテーブルの席を案内された。
「こちらがお席になりますよ!」
俺たちは椅子に腰をかけてから上着を脱ぐと佐倉さんは何やらカードを俺たちに渡してきた。
「これは?」
「これはご主人様認定カードです!」
「なんだこりゃ…。」
「これはご来店毎にカードのランクが上がってくるんだよ!ブロンズからシルバー、シルバーからゴールド、ゴールドから…。」
「わかった、もういいよ。」
そんなにランクあるの?このオタクたちのこの空間に対する執念が理解はむずかしかったみたいだ。
「ち…ちなみに1番上のランクは?」
「スーパーブラックの5000回来店だねー!」
お…おいおい、5000回っていうのはその最高ランクのためのやつだったのかよ。
なんというか…付き合い方を正しければお手ごろな店だが一歩間違えたらお金が尽きてしまいそうな恐怖感があった。
佐倉さんが突如、何枚かの固めの察しをテーブルに置く。
「こちらがメニューとなります!」
メニューを見るとフードセットやらドリンクセットなどがあったり、単品メニューも丁寧に添えてあった。
フードはカレーやオムライスがコンセプトに染まった作りになっていて美味しそうな感じだった。
「このチェキとゲームってやつは?」
「あー!これね、チェキはメイドさんと写真をステージで撮ることができるの!ゲームはワニワニパニックとかのゲームを一定時間お話しながらできるのよ!」
なるほど、だいたいシステムは理解出来た。
しかしまあ、これもひとつの経験として良いだろう。
「じゃあ、俺はオムライスとみっくすじゅーちゅってやつと…チェキでお願いしようかな。」
「かしこまりました!メイドさんはご指名ある?」
「はて…どうしようか、じゃあ佐倉さんでお願いします!」
まあ、ほかの女の子だと喋れないし…佐倉さんでお願いしようかな。
すると、佐倉さんは目をキラキラとさせて嬉しそうな顔をしていた。
「わたしで…いいの?」
「君がいいんだよ、お願いできる?」
「うん!」
すると、隣で飯田がにやにやしていた。
おい、なんだその目はムカつくな。
顎に手を当ててじっとこちらを観察している。
「あらら、2人ともこんな所でもいい雰囲気ですなー。」
「な、何言ってんのよ飯田くん!」
「うっさいよ、飯田。」
咄嗟に反応をする俺たちを見ていつものにやけ顔にすっかり変わっていった。何がしたいんだろうこいつ…。
「まあ、いいや…じゃあ俺はこのカレーにしようかな!ゲームで相手はかなでちゃんという子でお願いしよう!」
「かしこまりました、じゃあ待っててね!」
すると、佐倉さんはバックヤードに入りなにやら準備をしている。
「いやー、それにしてもメイド喫茶ってオタク女子が多いオタサーの姫のようなところかと思ったけど…けっこうレベル高くないか!?テーマパークに来たみたいだぜ、ワクワクするな〜。」
「やめなさい、ヒロシの真似すんなって。」
俺はウキウキする飯田にツッコミを入れる。
ちなみにヒロシとは春日部が舞台の金曜日の夜にやるクレヨンから始まる5歳児のアニメの父親がいるのだが、それの外伝の残念なグルメ漫画のモノマネをしているのだ。
いや、そのモノマネほんとニッチな人しかわからんぞらと心の中でツッコミを入れながら水を飲む。
すると、佐倉さんがなにやらシェイカーを持ってきた。
「どうしたの、佐倉さん?」
「直輝ご主人様?ここではまいちゃんって呼んでね〜。(ゴゴゴゴ…)」
「ご、ごめん。」
確かに見ず知らずのファンに個人情報とか漏れるのは危険である…迂闊だった。
「それで…このシェイカーは?」
「これはね…みっくすじゅーちゅ持ってきたんだけど、今から魔法をかけるから一緒にかけてね?」
佐倉さんはウィンクをしながら説明をする。
か…かわいい…気がするけどあえて触れないでおこう。
「どうやるの?」
「私の言うことを復唱するだけでいいのよ!例えばふりふり!っていったらふりふり!って返す感じだよ!」
「よくわかんないけどわかった!とりあえずやってみるね。」
「さっすが直輝くん!いくよー!」
佐倉さんはすぅっと息を吐いてからシェイカーを振りだした。
「ふりふり!」
「「ふりふり!」」
「しゃかしゃか!」
「「しゃかしゃか!」」
「もえもえ!」
「「もえもえ!」」
「きゅんきゅん!」
「「きゅんきゅん!」」
「ふわふわ!」
「「ふわふわ!」」
「わんわん!」
「わんわ…ぶふっ!」
「わんわん!(ガンッ)」
「い…いてぇ!」
ちょっと飯田が我慢できず吹いていたので軽く足を蹴飛ばした。
やめなさい、俺も笑っちまうから。
「おいしくなーれ!」
「「おいしくなーれ!」」
「「「もえもえ〜!」」」
しばらく沈黙が流れる…な…何だこの恥ずかしさ。
「よく言えました!このシェイカーの中身は何色でしょーか!」
「ピンク?」
「じゃあ流すわね〜。」
「おい、直輝よ…先程足に痛みを感じたのだが…。」
「細かいことは気にするな!」
すると、シェイカーからは青色の液体が炭酸水に流れてきた。シュワシュワっと美味しそうな音が弾けていて、より食欲をそそるようだった。
「あちゃー!不正解だね…。それはそうと、2人ともこのあと時間ある?」
「あるけどどうしたの?」
「よかったら後で合流しようよ!もう少しで上がりだから。」
「了解したよ!仕事頑張ってね!」
「うん!」
この後は俺たちはチェキを撮ったり食べ物を食べたあとにメイド喫茶を後にした。
すると、俺のLINEに連絡が来た。
「来てくれてありがとう!駅の奥の電気量販店で待っててくれるかな?」
「わかったよ、飯田と時間潰してます。」
軽く返信を済ませたので俺と飯田はブラブラと量販店やら書店を回って時間をつぶすこと…30分ぐらいの時間が経過をしていた。
「お待たせー!ごめんね、少し遅れちゃった。」
「仕事だし仕方ないよ。それに時間も軽く散歩とかして楽しく過ごせたし。」
佐倉さんが手を振りながら駆けつけてきた。
どうやら少し忙しく片付けやら対応で遅れたみたいだった。
「じゃあ、いこっか!」
俺たちは合流して、他愛もない話をしながら道を歩いて行った。




