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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第11章 僕とヤンデレ彼女と諏訪湖花火
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僕とヤンデレ彼女と諏訪湖花火 15話

※100日チャレンジ51日目

「発車いたします。」


ピンポーン、ピンポーン


列車はゆっくりと走り出す。

一定のリズムを刻みながら、少し……また少しと加速をしていく。


ガタンゴトンというリズムもスピードが上がると小刻みになり体が安堵するのを感じた。


「いやー!急にクーラー効いてるから最高だね。」

「ああ、そうだな。」


なんだろう、急に体のストレスが下がったことで心拍数が大きく下がるのを感じる。

体はリラックスすると若干意識が朦朧としていた。


「花火もめっちゃ綺麗だったね!あー、明日から学校か〜。」

「う……うん……。」


俺は一生懸命に彼女の話に相槌を打つのだが、頭は正直働いてなかった。

何も考えられず、文字も……かすれて見えなくなっていた。


「でさ〜〜〜。〜〜〜が〜〜。」

「うん……う。」


挨拶がから返事になり、電車の揺れが少しだけ乗り物酔いと眠気を促していた。


ああ、なんかなんも考えられない。


俺は少しずつ意識が遠ざかってるのを感じた。

クーラーの風もずっと浴びてるとむしろ冷たくさえ感じる。

だけど、左手だけは舞衣が握ってるのでほんのりと温かさを感じた。


俺は……気がついたら眠りについていた。


☆☆


夢を見ていた……。

見たことない夢である。


俺はぼんやりと見覚えのない女性と……幼い女の子がいる。

幼い女の子は俺を正面から抱きしめていた。

しかし、全くピンと来ない。誰なんだろう。

だけど愛おしさを感じて頭を撫でていた。


「君は……なんて言うんだい?」


これは夢、列車の中で見るありふれた夢。

多分ドラマかなんかを見た記憶を勝手に脳が整理してるのだろう。


しかし、彼女がゆっくりと口を開くとその景色がゆっくりとぼやけてきて……。


ガタンゴトン……ガタンゴトン……。


俺は、新宿まであと数駅と言うところで目を覚ましていた。

どうやら……疲れて寝てしまったらしい。


舞衣がスマホのカメラを構えてる俺を見て少しだけタイミングが悪そうな顔をしていた。


「あ……お……おはよー!直輝くん!いい天気だね!」

「外、土砂降りなんだけど。」

「そ、そうだね〜!夕立って季節を感じるいい天気だね!」

「……撮ってた?」

「ひゅ……ひゅーひゅー。」

「いや、口笛出来てないぞ。」


明らかに嘘つくのが下手である。


他にもなにかされてないか、自分の身体を調べてみたけど、どうやら寝顔の写真を撮られたくらいだった。


「全く、俺の寝顔なんて何に使うんだよ。」

「んー、天井に貼り付ける……とか?」

「こわっ。」


やっぱりこの子たまたま俺が付き合ってるから受容してるけど他の人なら通報されてるのではないだろうか。


「次はー、新宿……新宿です。」

「そろそろだね!」

「おい、話はまだ終わってないぞ。」


長旅も終わる時は呆気ない。

というか、知らず知らずのうちに寝てしまったので帰り道の感想はゼロと言っても過言ではなかった。


とはいえ、きっとこの花火の体験は一生思い出に残るものになるだろうと感慨深く感じた。


いかん、寝起きのせいか思考が淡々としている。


俺たちは新宿に降りると天気はゲリラ豪雨で滝のような雨が降っている。

雨独特の湿ったるい空気が駅を充満する。


しまった……傘も忘れたけど、30分くらいで雨は止むようであった。


「ねえ、直輝くん?」

「ん、どうしたの?」

「最後に……ハグだけしてもいい?」

「どうしたの、急に。」

「なんかね……、あと少しだけ物足りないの。」

「ん……わかった。」


俺は少しだけ人気の少ない柱の影に行き、舞衣を抱きしめる。

舞衣も愛おしそうに強く抱き締めていた。


「……楽しかった?」

「もちろんだよ、誘ってくれてありがとう。また行こう。」

「絶対だよ?」

「ああ。」


ゲリラ豪雨も収まり、徐々に駅の改札付近で溜まっていた人達が外に出る。

俺達もそれに合わせて駅を出る。


俺達も少し歩いたところで解散をして、俺はまっすぐ家に直行をした。


いつものクリーム色の見慣れた我が家。

俺は若干の疲れを残しつつ、ゆっくりと家に入る。


「ただいまー。」

「おかえり!あ、ゲリラ豪雨止んだみたいだね!雷とか降ってて怖かったよ〜。」


母ちゃんは昔から雷が苦手だったので安全な玄関付近にいた。

こういう所は歳と不相応なんだよね。


「ん?直輝……なんか、雰囲気変わった?」

「え?」


突然母ちゃんがそんなことを言う。

いや、1日2日程度の旅行でそんなに人って変化するものなのだろうか?

母ちゃんと旅行してもそんなことは無かったはずなのに。


しかし、俺をまじまじと見て母ちゃんは観察するようにうーむ……と唸ってみていた。


「なんというか、昨日に比べて少し自信がついたように見えるような……。」

「や、やめろよ!なんもないって!」

「えー、ほんとー?母ちゃんに話してみなさいよ〜。」

「う……うるせえ!なんもあるわけねえじゃんばーかばーかばーか!」

「あー!母ちゃんにばかって3回も言った!」


俺は咄嗟に昨晩の出来事を思い出し、赤面して必死に隠している。

でもどこかそれさえも見据えられてるようで感情的になってしまった。

ああ、思い出すだけで恥ずかしくて死にそうだ。

あの晩は少し自分の体力不足もあったし……というか、もしかしたら体力不足もあるから満足させられたかも怪しい。


「もう寝るよ!」

「なんでよー。まだ19時じゃない!」

「ほ……ほら、この旅行で体力不足って思い知ったから、明日からウォーキングするんだよ。」

「なんで体力不足に直結するのよ?」


いけない、どんどん墓穴を掘ってる気がする。

母ちゃんって普段は天然なのにこういう時だけめちゃくちゃ鋭いんだよな。


「暑さでばてちゃったんだよ!おやすみー!」

「ちょ…………晩御飯はいるのー!?……って聞こえてないか。」


俺は、宣言通り家に直行してベッドに入ると、無理やりにでも寝ることにした。

宿題も終わってるし、もう未練は無い!おやすみ!


☆☆


「全く……どうしたのよ、直輝。」


直輝は帰ってきたら少しだけ変だった。

必死に何かを隠してる様子だったし。


んー、私とあの人の子だから……いや、まさか舞衣ちゃんと結ばれたりとか。

いやいや!まさかあの直輝に限ってそんなことは無いか。


私は、彼の荷物を整理する。

あーあ、宿泊の荷物もそのままじゃない。


そんな中、ひとつの袋があった。

生薬の入ったみりんのお酒である。


手紙も入っていた。


「母ちゃんへ、これ飲んでたまには休んでな!」


直輝からのメッセージだった。

本人赤面してたから書いたのも忘れてそうだな〜なんて思うと笑いが込み上げてきた。

でも、こういう所は本当に優しい子である。

どんな事があっても彼は私の愛しい息子なのだ。


早速、直輝のおみやげのお酒を飲んでみる。

みりんの甘さと、生薬の刺激的な味がツンと感じる。

しかし、肩の力が少しだけ抜けたような気がした。


「んー、私も寝ますか。」


直輝が無事に帰ってくるだけでも嬉しかった。

明日から彼はまた学校生活リスタートである。


少しずつ成長していく私の直輝は、明日はどんな顔で帰ってくるのだろう。


雨上がりの湿っていて、でも晴れあがった夜空は都会と光が点在していて、一日の終わりを告げるようだった。

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