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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第11章 僕とヤンデレ彼女と諏訪湖花火
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僕とヤンデレ彼女と諏訪湖花火 12話

※100日チャレンジ48日目

花火大会もピークが過ぎ、少しずつ帰っている人が目立つ。

僕の親友も例外ではなかった。


「なおっち、また休み明けにな。また勉強分からないとこがあれば聞けよ!」

「ああ…久しぶりに会えて嬉しかったよ。」

「舞衣先輩!今度…私とも遊んでください。」

「もちろんよ、無理しない程度に学校に顔見せなさいね。」


俺達は写真を撮って、その場を解散する。

歩行者天国は11時まで続くそうで、人が不自然に混雑してきた。

これ以上はくたびれそうなので俺たちもホテルに戻る。


「じゃあ、俺はお風呂入ってるね。」

「私もー、汗だくよ…もう。」


身体は気がついたら汗だくだったので客室に戻り次第、直ぐに温泉に行くことにした。


コトン…


人の喧騒から一変、誰もいない大浴場にて俺は湯船に浸かり上を眺めていた。

これ、温泉だ。


手先がほんのりだけどヌルヌルしているのでアルカリ性の温泉である。体の芯から温まってくるような……そんな感覚だ。


なんというか、疲れた。

今日は色々あった。


まさか龍がいるとは思わなかったし、諏訪湖の花火があんなにも幻想的かつ豪華なものとは思わなかった。


花火の余韻を楽しみつつ、今後の事を考える。

俺はまだ明確にやることは決まっていない。

年齢も高校2年生という歳だ。目標を決めるとしよう……、とは言ったものの俺は成功体験がない。


小中学校の頃はいじめを受けていて、母ちゃんを心配させまいと悩みを抱え込んでいた。


物は隠されたり、殴られたりしたこともあった。

嫌われるあまり席替えである女の子の隣の席になった時点で泣かれたこともあった。


陰口を聞こえるように言われたことがある。

もじゃもじゃ、卑屈野郎……そんな悪口を言われたことも思い出す。


突然、肌が震えた。

俺はそもそもが嫌われ者なのだ。

突然、今の幸せが恐ろしくなった。


この幸せも突然終わるのではないか?

そもそも、存在してないのかもしれない。

合わせてくれてるだけで理解はしてくれてないんじゃないか?


そんなことを考えると……少し不安になる。

俺はまだまだ成長してないのかもしれない。


焦って俺は温泉を出て浴衣を着る。


俺は、あんなにも色んな体験をしたのに未だに劣等感の塊だった。


部屋に戻る、舞衣は居ない。

まだお風呂に入っているのか。


俺はこの不安を止めたいとばかり考えていて、自分の布団に籠ってしまった。

きっと、疲れてる。それだけなのだ。


しかし、どうやらここ最近無意識に溜め込んでいた将来への不安とか、劣等感、頭打ちになっている勉強の成績などが俺を蝕んでいた。


少し、呼吸が荒くなり心拍数が上がっている感じがする。


突然ガチャ、と音がする。

舞衣が戻ってきたのだ。

姿は見えない、部屋は暗いし俺は窓を向いている。


「……直輝くん、寝たの?」


舞衣の少し困惑した声が聞こえる。

そうだ、さっきまで俺は普通だった。

不用意にトラウマに触れてるだけなので彼女からすると意味不明だ。


「寝てる。」

「あはは、なによ!起きてるじゃない。」


漫才をするつもりはなかったが、彼女との関係性のせいか漫才になってしまう。


「ねえ、今日は一緒に寝ていい?」

「…好きにすれば。」

「あはは、ちょっとツンデレ!……疲れた?」


彼女は俺の布団に入ってくる。

他の人の体温なんてあんまり感じることがないから不思議な気分である。

しかし、俺は舞衣に迷惑をかけてないか?なんて、疑心暗鬼になるもんだから少しビクンとなった。


人は距離が近づくほど受け入れてくれるか試したくなる本能があるみたいだ。


「……直輝くん、震えてる?」

「……気にしないで。」

「私……何か嫌なことをした?」


顔は見えない。俺は月明かりの窓の方向に布団を被せてあるのだから。

俺はどうやら相手に分かるくらい震えてるらしい。

意外と俺は酷く脆い生き物なのだとこの時ばかり強く感じる。


「直輝くん、私に言えるなら…言って。私、直輝くんの事ならなんでも受け入れるよ。」


舞衣は優しく俺に語りかけてくれる。

それから俺はしばらく黙り込んでいたのだけれど、少しずつ…少しずつ話してみることにした。


「俺さ、小中学校の頃はいじめを受けててさ。」

「うん。」

「ボールをぶつけられたり、席替えの時におる女の子の隣に座ったら泣かれたり、いつも周りからは俺を小馬鹿にする視線が気になってた。」

「……疲れて色々思い出しちゃったんだね。」

「嫌われてることが多かったから、こうして好かれてることに慣れてなくて……正直今が怖い。進歩してるようでやりたい事も見つかってないし、俺には何ができるのかなって思ったら怖くなった。」

「……。」


舞衣は否定せず、ただ静かに聞いてくれていた。

でも、俺の若い心はそんなことも分からず、まだまだ怯えていた。


「俺、本当は要らないんじゃないかって。」


そんな時だった、舞衣が俺を強く抱き締めた。

初めて、その時彼女の方向を見ると少し切なそうな顔をしていた。


「私は、どんな事があっても直輝くんを嫌いにならないよ。」


俺は……言葉を失ってしまった。

温かい。彼女の体温と、彼女の身体の存在感が俺を包み込むようだった。


「直輝くんは、確かに昔はたくさん辛い思いしてきたと思う。焦るのも当然だし、怖いのもわかる。でもね…直輝くんは自分が知らないくらい変わってきてるんだよ、そんな直輝くんが好きなの。」

「ま…舞衣。」


その言葉で少し泣きそうになる。

ああ、女々しいな……かっこ悪いな、俺。


「大丈夫、疑心暗鬼にならないで。直輝くんがいるからみんながいるの。直輝くんが前を向いてるからみんながついてくるんだよ。みんな、優しい直輝くんが好きなんだから。」


俺は、ここに居ていいのか?俺はみんなと一緒にいていいんだ。そんなことを思うと、少し安堵をする。

俺の震えは……気がついたら治まっていた。

それよりも、俺を受け入れてくれる彼女に対しての愛おしさを強く感じていた。


まるで、何かの衝動性に駆られたように。


「舞衣…!好きだ。」

「うん、私も好き。」


唇を合わせ、俺たちは身体に身を委ね、自分の意志と反する行動をする。

俺は気がついたら、少し乱暴かつ不器用に舞衣を求めていた。

それを舞衣は受け止めるように……そして、俺を強く求めるように互いの身体を交わせ合っていた。


互いの浴衣ははだけ、より彼女の体温を強く感じる。

保健体育で知った程度の知識と、本能が行動を導く。

しかし、彼女の身体を感じると少し違和感を感じる。


「舞衣……、もしかして……はじめて?」


彼女はあまりにもその行為に対し強い抵抗感を覚えていた。

そう、痛みを伴っているのだ。

しかし、彼女は笑顔で俺を抱きしめ…耳に囁く。


「直輝くんなら…全て受け止めるよう。好きだから。」


花火の音と彼女の声が部屋を反響し、暗闇の中俺たちは求め合っていた。

何分、いや何時間たったのだろうか。


お風呂に入っていたのに俺たちは汗と何かでベタベタになっていた。

しかし、俺たちは最後は力尽きるように互いに身を寄せあって……深い眠りについていた。


☆☆


チュンチュン…

ホー…ホケキョ!


様々な鳥の鳴き声が聞こえる中、俺は目が覚める。

昨日のはじめての出来事は案外呆気ないものだった。

相手の悦ばせ方も知らない……そんな無様な初夜。


ベッドから起きると、舞衣はいなかった。

俺は突然不安になる。


「ま…舞衣…舞衣!!」


彼女が受け入れてくれたからこそ、いま彼女が居ないことに強く不安を感じていた。

冷静に考えれば居なくなるはずがないのだが、俺は彼女を満足させて上げれなかったのではと勘ぐってしまっていた。


しかし、ガチャンと部屋を入る音がする。


「あ…直輝くん…おはよ!」


いつも通りの、彼女の笑顔だった。


「舞衣……ごめん、昨日は。」

「あはは!何謝ってるの!」


俺たちはまだまだ若い。

昨日やった行為がもしかしたらいけないことをしたのではと経験の少なさが警鐘を鳴らしている。


「まあでも……お互いロマンも何も無い夜だったかもね。」

「うう……ごめん。初めてだったよね。」

「もう!謝ってばっか!ううん、むしろありがとう!私を受け入れてくれて。本当に素敵な1日だったよ。」


女性にとっての初夜は痛みを伴うし、大切な1回だったと思う。そんな大切なものを彼女は捧げて、勇気づけてくれた。


俺の心はどこか不安だった毎日から少しだけ…ほんの少しだけ自信がつくのを感じた。


「ねえ、直輝くん?コーヒーのむ?」

「うん。飛びっきり甘いのでおねがい。」

「はいはい。」


俺たちはいつも通りの朝を過ごす。

だけど、少しだけ大人への道に近づいたような気がした。


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