僕とヤンデレ彼女と諏訪湖花火 8話
※100日チャレンジ44日目
ウィーン……
自動ドアが反応しお店が俺たちを迎え入れる。
ここは諏訪湖の東部に位置する商業施設である。
一階にはベーカリー、そしてショップがあり様々な商品が販売している評判の商業施設なのだ。
施設の中も花火大会の前で時間を潰しにきたのかやはり人で賑わっている。
「へー!色々売ってあるわね。」
「そうだね、レストランはえーっと……2階か。」
施設は2階はレストラン、3階は屋上になっていてそこからは諏訪湖も一望できる人気のスポットらしい。
ちなみに入ってから気がついたのだが、今日の花火大会もここで見るとのこと。
まだ準備中だったので楽しみは夜に持っていこうと俺たちはレストランに直行した。
「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」
「2人ですね!」
「はい!確認致します!」
ホールのお姉さんが笑顔で迎えてくれる。
茶髪を後ろで団子で結んでいて、活発な印象を受けるきれいなお姉さんだった。
「お待たせ致しました!それでは席へご案内致します!」
そして、俺たちは店内に案内をされる。
「お客様々なご来店です!」
「「いらっしゃいませ!」」
何人かのホールの方が挨拶で出迎えてくれる。
そして俺たちは諏訪湖が一望できるガラス張りの席へと案内をされた。
舞衣と横に座り、ガラスをむく方向にすわる。
「本日はご来店頂きありがとうございます!お決まりになりましたらお呼びください!」
お姉さんは最後まで丁寧に接客をしてくれた。
「…………ボソボソ。」
ちょっと隣で舞衣が独り言ってるのが怖いんだけど。
「ま……舞衣ー?どうした?」
「直輝くん……あのお姉さん綺麗だったね。」
「私とどっちが可愛い?」
え?何言ってるんだ?
いや、店員さんは店員さんだと思うんだけど。
あ、でもあれだな……これあれだ。
ギャルゲーで言う選択肢が提示されている。
確かにあの店員さん可愛かった。少し鼻の下を伸ばしていたのかもしれない。
だから、とりあえず無難な選択を知よう。
「そ……そりゃあ舞衣以外いる訳ないだろ。」
「うふふ、そうよね。」
どうやら選択は間違ってないらしい。
さて、とりあえずメニューを選ぶとしよう。
んー、俺は今回はポークステーキにしようかな。
「舞衣は何がいい?」
「んー、トマトパスタかな。」
2人とも割と即決だったのですぐに店員さんを呼んで注文をする。
ここはメイン料理とビュッフェが付いている。
尚且つドリンクバーもあり、りんごジュースなどが用意されていた。
早速ビュッフェを取りに行く。
野菜食べ放題、俺は一人の時はファーストフードやコンビニ飯が多いのでなんとも健康的だろう。
レタスにパプリカ、人参のピクルスなどを盛りつける。
パンもスープも食べ放題みたいなのでこちらも盛り付けてテーブルに座る。
しかし、盛り付けってやっぱりセンス出るな。
舞衣は普段メイド喫茶で働いてるせいか盛り付けもバランスがよく、綺麗に盛り付けていたのに対して、俺はなんか無理やり詰め込んだ感じがしてごちゃごちゃしていた。
このビュッフェというのがとにかく美味しかった。
パンはクリームとか入った高級食パンの部類に入るものだったし、スープはミネストローネで野菜と豚肉の出汁が染み込んでいる。
野菜も朝イチに仕込んだのか新鮮で傷んでる様子もなかった。
「美味しい〜!最高ね、美容にも良さそう!」
「うん、ボリュームもあるな。こりゃあメイン料理が来る前におなかいっぱいになりそう。」
「大丈夫よ、その時は直輝くんごと食べてあげるから。」
「おう、ありがと……う?」
ん?今なんつった?さらっと恐ろしいこと言ってた気がするけど。
俺たちがビュッフェの食べ物を食べ終えると、メイン料理が運ばれてくる。
「お待たせ致しました!ポークステーキとトマトパスタです!」
料理がゆっくりと運ばれてくる。
テーブルに伝票と料理を置くとお姉さんは忙しいのか他の席にもすぐに料理を提供していた。
まあ、客席100くらいありそうだし今日は諏訪湖花火もあるから一大イベントなのだろう。
さて、ポークステーキを食べる。
事前に低温調理された肉が口の中でジューシーにとろける。
脂身も臭みがなく甘みのある脂をしていた。
更にはオレンジのコンポートとソースがその甘みのある脂をさっぱりと引き立てられていて文句なしの味だった。
「直輝くん!」
すると、舞衣がフォークにパスタを巻いてこちらに差し出す。
いや、パスタってあーんするものだっけと思いつつ不可抗力で食べてしまう。
パスタはアルデンテ、少し芯が残るまで茹でていてトマトはフレッシュトマトを使っていて酸味がしっかりと残ってさっぱりとした味わいだった。
「美味いな、ありがとう。」
「むー、直輝くん!私にもアーンさせてよ。」
「やだよ、公衆の面前で恥ずかしいし。」
「やらないと、遥香さんに妊娠報告するわよ!」
「ごめん、それだけやめてください。」
「じゃあ既成事実?」
「わかった!わかりましたから!」
舞衣は付き合うとヒートアップするタイプなのか最近は結婚、妊娠という方向に考えがちである。
まあでも……今の父親とは血は繋がってないし家族が欲しいっていう深層心理でもあるのかもしれない。
とはいえ、それはまだ早いのでとりあえずカップル気分でも味わってみるとしよう。
俺は適当なサイズにフォークを切り分けて、舞衣に差し出すとパクリとたべた。
「んー、美味しい!直輝くんの味も合わさって120点ね!」
俺の味ってなんだ!俺の味って。
とはいえ……舞衣の行動にも少し慣れて来てしまった自分がいる。
メイン料理を食べ終えると、舞衣がホットコーヒーを持ってきてくれた。
やっぱりこういう気づかいをしてくれるのはシンプルに嬉しい。
俺もコーヒーをゆっくりと飲みながら次にどこに行くか調べる。
「あ、このコーヒー美味しい。」
俺はコーヒーは砂糖とミルクがないと飲めないタイプで、砂糖は甘すぎず、ほんのりと微糖を好むのだけれどドンピシャだった。
「えへへ、直輝くん喜ぶかなって味とか調べ尽くしたの!」
少し、キュンとしてしまった。
この子は多少過激なところはあるけれど、尽くすし努力家なところがある。
だからこそ、俺は嫌いにならないのかもしれない。
むしろ、もっと好きになってしまいそうだった。
俺は無意識に彼女の頭を撫でる。
「あぅ……最高……。」
頭を撫でられて喜ぶ舞衣。
手を離すと少し名残惜しそうな表情をしていたのだけれどこういうスキンシップも悪くないと思った。
「さて、そろそろ出るか。」
「いいけど、次はどこ行くか決まったの?」
「そうだねえ、あそことかどう?」
俺はガラス越しの景色を指さす。
そこは諏訪湖の中心部を楽しむ遊覧船があった。
「え!湖クルーズ?」
「ああ、湖クルーズだ!もう少しで出港するらしい!」
「すごい、ちょっとしたタイタニック気分になれそう!」
「いや、それだと沈むじゃないか。」
「直輝となら……沈んでも……。」
「ちょっとそれはごめんだわ。死にたくないし。」
「むー、あの作品が分からないの?じゃあ今度二人で見ましょ!3時間半くらいの大作よ!」
「え、そんなに長いの?あの映画って。」
俺たちはレストランでお会計を済ませる。
そして、商業施設を出て港に行くと、出航のアナウンスが流れてあと十分で出航しそうだった。
俺たちはお会計を済ませて船に乗る。
旅のお供にバニラのソフトクリームを添えて、俺たちは太陽に照らされ巨大な湖に立っていた。




