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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第11章 僕とヤンデレ彼女と諏訪湖花火
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僕とヤンデレ彼女と諏訪湖花火 4話

※100日チャレンジ40日目

私は神宮寺ことね。


元カリスマメイド(フリーター)として人気を我がものにしていた一般人だ。

ある日を境に私がメイド喫茶を独立し、今はレンタルキッチンを借りて不定期で営業をしている。


売上はそこそこ出ているがまだまだ事業化としては程遠いのだ。

何より人手が足りない。

元々知名度はあったのでお客さんは来るのだが回転率に悩まされていた。


それに加え今日は休日……忙しくなるということで1人助っ人が来ることになっていた。


カランッ


「ことねさーん!おはようございます!」

「舞衣、いらっしゃい。」


舞衣の後ろには私と同い年くらいの美人さんがいた。

背丈も同じくらいで、定期的に髪を染めてるのか黄金色の長いポニーテールをしていて、肌は健康的な褐色肌をしていた。


何よりもスタイルが抜群で、愛嬌のある顔立ちをしていた。


「売れる。」

「え?ことねさん?」

「ああ!失礼……えっと……天野遥香さん、だったわよね?私神宮寺ことねと申します。」

「よろしくお願いします!ことねさん。」


ひとまず彼女は飲食店は不慣れということで舞衣ちゃんにある程度の業務を教えて貰って、私たちはお店をオープンすることとなった。


カランッ


早速2人のお客さんの入店である。


「「お帰りなさいませ!ご主人様!」」


早速遥香さんが接客をする。

うん、お辞儀の角度とかも大丈夫だ。


「えへへ〜お姉さん綺麗だね!新人さん?」

「はい!新人メイドのハルカです!」

「うおお、この子も推せますな。」


ご主人様からの反応もいい。やはりこういったお店は女の子の数でも来る理由が増えるからありがたい。


「ご注文はお決まりですか?」

「ふふん!じゃあ……お姉さんの描いたケチャップのオムライスをお願いします。」

「じゃあ、僕はお姉さんとのチェキとパフェでお願いします。」

「はい!かしこまりました。」


すると、ハンディーも操作してオーダーが出る。

どうやら、操作ミスも無いのでかなり仕事もできるみたいだ。


「ことねさん!チェキって……なにかしら?」

「ああ、教えてなかったですね。お客さんとポーズして写真を撮るんですよ。」

「へー!任せてください撮られるのは慣れてるので。」


ん?撮られ慣れてる?

元々グラビアとか何かやっていたのかな?

まあでも見た目も綺麗だし、履歴書には不自然に8年ほどの空白があったからきっと何らかの事情があるのだらう。


私たちはお客様の元へ行き、チェキを撮りにいく。


「では、お好きなポーズをお願いします。」

「んー、どうしよっかな。じゃあ地下アイドルとやったキスチェキで」

「それは風営法的にNGでお願いします。」

「んだよ!もう……ことねちゃんは相変わらず硬いな。」

「え?触れちゃいけないの?」

「ダメなんですよ。それやるためには色んな届出をしなきゃ行けないので。」

「じゃあ、私と片手ずつハートにしますか?」

「え!?いいんですか!それでお願いします。」


いや、客もそれでいいんかい!

最近過激なサービスをする地下アイドルが増えたせいでこういった客層は一定層いる。

あぶない、危うくウブな新人がセクハラをされるところだった。

あー、ニコチン接種したい。


「はぁ〜い!写真撮りますよ!せーの、萌え萌えきゅん!」


精一杯の萌え声で対応を誤魔化してチェキを撮る。


「うおおー!早速Xに拡散ですな!」

「私たちハルカ推しになりますよ!」


「あ……あはは。ありがとうございます。」


いけない、遥香さんめっちゃ引いている。

やはり、最初の接客として難易度が高すぎたか……?


すると、舞衣がオムライスを持ってきてくれた。

ああ、そうだ。

この後は彼女にケチャップで何か描いてもらわないといけない。


「お待たせしました〜オムライスです!」

「あ、ありがとうございます。」


何故かこのお客様、舞衣に対しては塩対応なのだ。

若い子よりも歳が近い子の方がいいのかな?


「(ボソッ)遥香さん……絵は描けますか?」

「なんとか頑張ってみます。」


なんと健気な……なかなか癖のあるお客さんだけどめげずに対応している。

私も最初はこんな感じで乗り越えてきた。まだまだ初対面だけど彼女を応援したい気持ちが溢れてくるようだった。


「何描きますか〜?」

「じゃあ……猫で!」

「猫ですね〜やってみます!」


彼女は赤いケチャップを慣れない手つきでゆっくりと描いている。

彼女の描いた猫は、顔の輪郭が酷く歪んでいて、目鼻が異形の形をしている。

まるでピカソが描いたような美術的な画伯ができていた。


「あ……あはは、上手〜。」

「ほんとですか!?いやー、ちょっと自信作だったんですよ。」


いやいや!まさか本人絵心ないの自覚ないの?

舞衣もその絵のクオリティに戦慄した表情をしていた。


…………。

あたり一同が沈黙になってしまう中、遥香さんはポンっと手を叩いて何か閃いたようだった。


「そうだ!アイコメですね!私に続いてください!せーの!もえもえきゅーん!」

「「も……萌え萌えきゅん。」」


いかん、この人めっちゃ天然だ。

これはあとでやんわりと教えてあげないといけないかもしれない。

いきなり絵を描くのはハードルが高すぎたか。


カラン


そして次のお客さんの入店の音が、次へ、また次へと聞こえてきた。

どうしたのだろう……予想よりも入店が多い。

気がついたらあっという間に満席になってしまった。


いけない、こちらも仕事を回さなければいけない。

片付けとオーダー受けは出来るのでそこは彼女にお願いしつつ、私は伝票管理、全体のバランサーは舞衣にお願いしてなんとか対応をする。


すると、あるお客さんが熱烈な目で遥香さんを見ていたので聞いてみることにした。


「ご主人様!こちらは初めてですよね?新人さんお気に入りなんですか?」

「お!店長さんか!いや〜いい子を見つけたね!」

「そうですね、受け答えもバッチリですし助かっております。」

「いやいや!そうじゃなくて……あの子、元伝説のAV女優の橘遥香ちゃんだろ?Xで今めちゃくちゃ拡散されてるんだよ。」


すると、お客さんがスマホを見してくれると、先程のチェキがどんどん拡散されてる……すでに5000リポストを到達しそうだった。


なんと、新人さんの正体は大物AV女優さんだったのだ。私も見た事はある、一時期人気が高すぎてネットでも有名だったから。


その後も……15時までは満席でやっと拡散が止まった頃に客足が落ち着いてしまった。




「ふぅ〜疲れたわ。」

「つ……疲れました。」

「舞衣。あなたこれだけの量を捌けるようになったのね。嬉しいわ。」

「ことねさんのおかげですよ。遥香さんもオーダー正確に受けてくれたり、チェキ引っ張りだこでしたからこちらがフォローしやすかったです。」


今日の売上だけでも30万以上売上を出すことが出来た。

先週の3倍以上の売り上げだ。


このままなら黒字化ができて仕事の独立ができるのかもしれない。

ツッコミどころは多いけど遥香さんは大型新人である。


「すみません、拙いところが多くて。」

「いえいえ、遥香さん大活躍だったじゃないですか。それにしてもあなたみたいな朗らかな方がAV女優だったのは意外でしたけど。」

「あはは、まさか数年立っても忘れられてなかったのは嬉しいですね!」


3人で話しながら片付けの作業をしていると、また1組店内に入店した。


カラン


「「お帰りなさいませ!ご主人様!」」


「うお……この感じなれないな。」


若い青年が入ってきた。

高校生くらいだろうか?背丈はやや小柄で表情には若干のクマがある。しかし、彼は心配そうに店内を見てハッとしていた。


「あ、母ちゃんと舞衣!お疲れ様〜。」


……か……母ちゃん?


「直輝くん!来てくれたんだ。」

「ああ、心配だったからな。でも大丈夫そうだな。」


え、まさか遥香さんって子持ちなの?

まだ32歳なのに?


「あ、紹介しますね!私の彼氏で遥香さんの息子さんでもある直輝くんです!」

「ど、ども。」

「店長のことねです。」


私が今は28歳、つまり私が遥香さんくらいの生き方をしていたらこれくらいの子どもがいるのか。

なんだろう、ものすごく複雑な気分である。


私も早く結婚して子どもを作るべきなのかと少し考えてしまった。


「直輝〜!お母さん大活躍だったよ〜。」

「抱きしめるな、夏だから暑苦しい。後ちょっと汗臭い。」

「ひどい!」


親子と言うよりかは姉弟みたいだけどね。

冷静に考えたら16歳差親子はちょっと若すぎる。


まあでも……私が施設に行かないで親に愛されていたらこんな感じだったのかな。

少しだけ、この親子が羨ましくさえ感じた。


「ねえ、直輝くん?お母さんは好き?」

「いや、すごいこと聞きますね。マザコンに見えますか。」

「申し訳ないわ。私施設育ちだから親に対して愛されなかったからそういうの分からない。だからちょっと気になるのよ。」

「んー、思春期には難しい質問ですけど……大好きですよ、たまにおっちょこちょいなところがあるんですけど、それも含めて楽しいんです。」


直輝くんは誇らしげに、そして少し恥ずかしそうに笑っていた。


ああ、この親子……確かに情報量が多くてカオスだけど素敵な関係性なんだなと羨ましく思えた。


こうして、今日の私の営業は大成功に終わった。


片付けを終え、直輝くんと遥香さんは店を出ようとする。


珍しく私は体が衝動的に動いてしまった。


「遥香さん!」

「……はい。」

「あの、また働きに来てくれませんか?」


私は、この親子を見るのが好きになった。

この人と働くのが好きになった。

それだけだった。


きっとこの人も色々忙しいのかもしれないけど、また一緒に働きたくなった。


すると、遥香さんは満面の笑みでグーサインをして答える。


「もちろん!私もことねさん大好きだからまた働きたいわ!最近家事しかやることなかったからまた働かせていただきます。」


そうして、私の推しの親子は店を出た。


突然、肩にポンと手の感触がしたので後ろを見ると舞衣がニヤニヤとしている。


「良かったですね。」

「何よその顔。」

「いやーことねさんもそういう感じになるんですね!可愛いな〜って。」

「うるさいわよ、ほら……まだやること残ってるわよ。」

「はぁ〜い!」


私は神宮寺ことね、28歳のヘビースモーカー。


今日もメイドでいることで自分を見出す歪な存在。


ストレスに塗れたあとのセブンスターも格別に美味いのだけれど、今日吸ったセブンスターは格段に美味しく感じた。




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