僕とヤンデレ彼女と諏訪湖花火 3話
※100日チャレンジ39日目
チュンチュン……
鳥のさえずりとひぐらしの音が入り交じった音が聞こえる。
そう言えば昨日は富士五湖の旅行を終えて、その後は舞衣が家に押しかけてきて……あれ?その先は覚えてないな。
何があったんだっけ。
「おはよぉ、母ちゃん起きてる?」
「あ、直輝おはよー。」
うん、いつも通りである。
母ちゃんが朝ごはんを作ってくれている。
まるで昨日のことが嘘だったみたいに。
そして、いつも通りに朝ごはんが卓上に並べられていた。
目玉焼き、味噌汁、そして……米と大納言の入った赤飯が何故か並べられていた。
「ちょっと待てこらぁ!!」
「え、直輝どうしたの?」
「なんで意味深に赤飯が朝ごはんに出てくるの!何があった?昨晩は何があった!?」
「いやー、意外と大納言って煮るのが難しくてね〜、何度も砂糖水の温度下げたり……。」
「いや、それは赤飯の仕込み方や!」
すると、ガランとバスルームが開く音がした。
バスルームからは見慣れた少女がツインテールをしてメイクをバッチリとしたピンク色の少女が出てきた。
「あ、直輝くんおはよー。」
「いや、何故に舞衣がこんな所に?」
ああ、思い出した。
昨日は俺が地雷を踏んで舞衣に折檻されて気を失っていたんだ。
それで気を失って記憶ごと消されてるところだった。
「いやー昨晩はお楽しみだったみたいね〜私も孫の顔が見られそうで嬉しいわ!」
「ですね!あ、今お腹蹴りました!」
「嘘つけ!絶対想像妊娠じゃあねえか!してないよね?いや、してないから!」
「大丈夫よ、私も舞衣ちゃんの歳の頃に直輝産んでるけど案外すんなり言ったわよ。」
「母ちゃん!?くそー!ここに味方ゼロかよ!」
「直輝くん!名前……なににしよっか。やっぱり直は付けておく?直人とかにする?」
「あー、ごめん……この子の父親が直人だからその案はNGで。」
「いや、サラッと重要なこと言ったよこの人。」
そうかー、俺の父さんって直人っていうのか。
いや、もっと重要なシーンで教えてよ。
「大丈夫よ直輝くん!私と遥香さんの冗談よ!」
「あ、そっか。ならよかったよ……冗談で。」
「うん!8割冗談だから。」
「だから2割はなんなの!」
つ……つかれる。
朝にこのコンビは俺には分が悪かった。
一先ず俺たちは朝ごはんを食べる。
ノリで赤飯を炊かれたのは些か不服だったけど赤飯も中まできちんとみつ漬けをしていて甘みが強く美味しかった。
「それで、今度二人で出かけてくるんだって?」
母ちゃんが話しかける。
ああ、そうそう。たしか昨日はそんな感じで諏訪湖花火の計画をしたんだった。
宿も観覧席もとってたみたいだったので、舞衣の行動力は計り知れない。
「ああ、夏の最後の思い出にね。舞衣とも中々時間を作ってあげれなかったし。」
「ほんとよ。私寂しかったんだから……。」
いや、ほんとにごめんな。
ちょっと酷い目にあったけど、舞衣の言い分もご最もだ。
彼女は限られた青春の中俺を彼氏に選んでくれた。
それって冷静に考えると結構幸せな事だと思うので今度からは少しずつ気を使うようにしよう。
「そういえば今日は2人は何するの?」
「んー、なんも考えてなかったな、まだ2日あるしな。今日は勉強かな。」
「私も今日はバイトですよ。」
意外と舞衣も忙しいようだった。
あれ?そういえばバイト先変わったって言ってたような。
「もしかして、今日もお手伝いなのか?」
「ええ、そうなのよ。結構お客さんが耐えなくて忙しいのよ。」
「へー!もし忙しいなら私も手伝おうか?」
突然……母ちゃんがそんなことを言い出した。
「え!?遥香さんがメイドやるんですか?絶対人気でそうですよ〜!」
「辞めてくれ舞衣!母親がメイド服を着てメイド喫茶するなんて息子の俺にはキツすぎて耐えられねえよ!」
「(グサグサ)ぐ……ぐふ……そ、そうよね……私はもう32のババアだから需要はないわよ。」
「ちょっと!直輝くん酷すぎない?謝って!今の店長だって28のアラサーだけどギリギリ大丈夫だから。」
「(グサグサ)……舞衣ちゃん、私はもうアラサー超えてるんだけど。」
「馬鹿野郎!フォローがフォローになってねえじゃねえか!フレンドリーファイアだよ。」
どうやら女にとって年齢の話は時として残酷なものだということをこの時に知った。
いや、でも母ちゃん32歳ってまだとてつもなく若い部類に入ると思うけどね。
恥ずかしいから言わないけど。
こうして、1日限りの母ちゃんのメイドバイトは火蓋を切ることとなる。
都内某所、俺はレンタルキッチンと呼ばれるレストランに足を運ぶこととなる。
確かここだったよな?
俺は入店をすると、一人のメイドが迎えてくれた。
「…おかえりなさいませ、ご主人様。」
高身長のクールビューティ系の美女が迎えてくれた。
「あ、いつもお世話になっております。舞衣の彼氏の直輝と申します。」
「あら、貴方が直輝君でしたか。私は店長の神宮寺ことねと申します。」
ことねさんというお姉さんが丁寧にお辞儀をしていた。
それだけでも長年働いていたことがわかる。
そして、俺は数ヶ月ぶりにメイド喫茶に入店することとなった。




