僕とヤンデレ彼女と諏訪湖花火 2話
※100日チャレンジ38日目
「あはは、ごめんごめん……直輝もお年頃だもんね!失礼しました〜。」
「母ちゃん!マジで今後ノックして!」
「ぜ……善処します。それでは……。」
ガチャンと扉を閉じて、俺たちはホッと胸を撫で下ろす。
「す、すまんな……突然びっくりしたよな。」
「もう……。」
「ま……満足したか?」
「不満です!」
デスヨネー。
そりゃあそうである。
しばらく放置されててようやくスキンシップかとおもったら邪魔者が入ってるので舞衣としては今の状況は不満そのものである。
「私……寂しかったんだよ?夏休みもっと会いたかったけど夏期講習とかあったから、あえて我慢したり……。」
「はい。」
「かとおもったら瑞希ちゃんと仲良くなって……夏期講習が終わったら遥香さんとデート行くし……直輝くんとの時間が取れなくて寂しいの。」
「返す言葉もございません。」
正直、生まれてこの方16年……俺は気ままにぼっち生活をしていたから舞衣との時間のとり方など分からなかった。
まあ、それも今となっては言い訳だ。
そこは真摯に受け取ろう。
「じゃあ……今度デート行こうよ!あと少しで夏休みも終わっちゃうけど、宿題も全部終わったから何でもするよ!どこ行こっか、ディズニー?韓国?」
すると、舞衣はしかめっ面のまま口をふくらませてしばらく黙ってしまった。
「……直輝くんが決めてよ。」
なにいいいいい!?
まさかの俺判断になるの?すげーハードルを感じるんだけど……。
ええい、なにか無いか……なにか。
「……花火なんてどう?」
安直だったかと思ったがこの夏俺たちは祭りや花火には無縁だった。
きっと夏の花火の儚さが俺達のいい思い出になるだろう。
「いいよ!さっすが直輝くん!」
舞衣も機嫌が治ったみたいだ。
良かった……機嫌の悪い舞衣はいまどこの誰よりも怖いから何とか安心だ。
「どこの花火みよっかな。」
俺たちはGoogleでベッドで2人座りながらスマホで近隣の花火大会を調べていた。
しかし、かなり花火大会も終わってしまっている。
少しタイミングが悪かったかな……。
「んー、ちょっと遠いけど諏訪湖花火大会ってのが長野県であるっぽい。」
「長野県!?」
舞衣が立ち上がった。
「え、ってことは……直輝くんと旅行できるってこと??」
「え、まあ……県外だし、諏訪湖近隣の宿泊は厳しいだろうけど泊まった方がいいんじゃないかな?」
すると、舞衣はスマホをもってさっさと入力を5分もしないうちに作業を終わらせた。
「……何してたの?」
「えへへ、つい花火大会の観覧席の予約とホテルの予約も取っちゃいました。」
え?あの一瞬で?
予約埋まってなかったのかな?
「予約は?埋まってなかったの?」
「少し歩いた所が空いてたから取っちゃった!」
さすが舞衣、相変わらずスペックの高さは現在のようだった。
そういえば、みんなで旅行とかはあったけどこうして舞衣と旅行ははじめてだった。
「いいぞー、えらいえらい。」
「えへへ。」
俺は舞衣の髪を撫でると嬉しそうに彼女もしっぽを振っているようだった。
まあ、無理にスキンシップしなくても高校生はこれくらいでいいんじゃないか?
俺たちはひと段落つくと、母ちゃんの持ってきたスイカを食べていた。
甘い、スイカは大きいものよりも小さいものの方が糖度が高いのかジューシーで美味しく感じた。
「そういえば、舞衣は夏休みなにしてたの?」
「んー、ずっとバイトだったよ。実は先輩が独立してね、今はレンタルキッチンとかを定期的にメイド喫茶としてやってるからそのお手伝いをしてた。」
すごい、なかなか充実してるじゃないか。
俺も富士五湖まわったりしてたけどね。
「あ、そういえば瑞希ちゃんが彩奈ちゃんとメイド喫茶に来たこともあったよ!いつの間にあの二人仲良くなってたんだね。」
「え?瑞希と彩奈?」
夏期講習で知り合った瑞希と、かつて舞衣のいじめの主犯で今は俺たちといつもつるんでる彩奈が仲良くなるとは…、あの庭のBBQが彼女の繋がりのきっかけになったようで何よりだった。
「なんかね、ずっと二人でバァーンとかいいながら奇妙なポーズを取ってたりして彼女らにはなにかシンパシーがあるようだったわ。」
「ほぇ〜、なんか……お互い色々あったんだな。」
「ねー、直輝くんとの思い出はほとんど無いのに……あはははは。」
「……なんかごめんなさい。」
彼女、そこまで主張はしないけどかなり根に持っている感じがある。
これちゃんとケアしないといつか酷い目に合いそうだ。
「俺はあの後も勉強ばっかだったな。飯田は部活で忙しいし、龍なんかは連絡も取れない。」
「あ、そうだったんだ……良かった〜。」
なんの良かったなんだろうかと思いつつ、この夏を振り返る。あとはなんかあったっけな。
「あ、そういえば瑞希が髪を切ったりメイク変えたりでめっちゃ可愛くなってたんだよ、彩奈がイメチェンしてくれててね〜すげー似合って……。」
すると、突然舞衣のスイカの皮面が破裂した。
握りつぶされたのかのような惨状で弾け飛ぶように。
え、スイカの皮って握りつぶせるものだっけ?
「んー?瑞希ちゃん可愛いかったんだ。そうかそうか〜。」
いかん、間違えて地雷を踏んでしまった。
「ちょ、ま……舞衣!どうした、目が笑ってない……怖い、怖いから!ちょっと落ち着こうか。」
「んー?直輝くん、私という人間がいながら他の子を可愛いなんて……少し分からせてあげないとダメみたいね?」
「い……いやいや!流石にもう夜遅くだし!な?」
「直輝くん……今日は逃がさないからね。」
「え、ちょ……こわいこわいこわい……いやー!」
この後、俺は死ぬほど舞衣にわからされた。
何故か不思議と目が覚めた頃には何をされたか覚えてないけどものすごく痛かった気がする。
女心って……難しいな。




