僕とヤンデレ彼女と諏訪湖花火 1話
※100日チャレンジ37日目
俺は天野直輝、訳あって今は長野県の諏訪市でやっている花火大会に行っている。
「えへへ、直輝君……花火楽しみだね!」
「そ……そうだな。」
そう、彼女の舞衣と行っているのだ。
夏休みには彼女とのデートの予定はほとんどなかった。
「あ!あそこに10円パン売ってる!」
「あ、ちょ……舞衣!」
舞衣は一足早い足取りで店に並ぶ。
俺も彼女を追いかけると、目の前から女性が走ってきた。
「えへへ!先輩、見てくださいよ!」
「おい!あぶねーぞ!」
俺と女性は正面衝突して、俺は尻もちを着く。
彼女は髪も肌も真っ白で白いバラのようだった。
身長も180とあってモデルさんかと間違えてしまう。
「いったー!」
「いたた……あ、大丈夫ですか!?」
すると、後ろから青年が近づいてきた。
「おい、御坂大丈夫かよ!」
その青年は身長は俺より小柄で、髪の毛が茶髪の派手な青年だった……というか、おそろしく見覚えがあった。
「え、なおっち?」
「……龍!?」
白いバラのような女性と一緒にいた青年は、僕の親友であり勉学の師匠の虎ノ門龍だった。
「え、先輩方……知り合いですか?」
「なおっち……、なんでこんな所に。」
「ああ、話は長くなるんだけど。」
遡ること、3日前……。
俺こと天野直輝は母ちゃんとの富士五湖の旅を終えて自宅を目指していた。
今の現在地はどこか……と調べるが残念ながら電池切れにつきわからなかった。
でも車のナビがあったのでそこまで困ることもなかった。
問題は家から帰ったあとである。
「ただいまー!」
「疲れたね、直輝!」
母ちゃんは疲れたのか少し表情がドヨンとしてるのと、都会の暑さにくたびれていた。
「母ちゃん、俺は先寝てるね。」
「うん、私もシャワー浴びてから寝るとするよ。」
俺は自室に入り……スマートフォンを充電した時だった。
突然沢山の通知がスマートフォンに入る。
通知が20件ほど来ていた。
2.3件は飯田とかその辺でそれ以外は全て舞衣からだった。
「おはよぉ!今日もバイト行ってくるね!」
「見てみて!なかよしとの先輩のツーショット!神宮寺さんって言うんだ!」
「疲れたー!直輝くんは今どこで何をしてるのかな?」
「不在着信」
「今日は忙しいのかな?」
「ねえ、既読つかないけど避けてる?返事してくれたら嬉しいな。」
「不在着信」
「不在着信」
「大丈夫?今から家行くね。」
「不在着信」
「……車なかったから遥香さんと一緒にいるのかな?いつ帰ってきそう?」
「不在着信」
「直輝くん、ごめんね……しつこかったよね。帰ってきたら連絡ください。」
「不在着信」
「不在着信」
「念の為遥香さんにも連絡します。」
「不在着信」
「直輝くん……まさかお母さんと?いや、冗談よね?」
身の毛のよだつような舞衣からの愛のメッセージばかりだった。
やばい、こんなに通知来てたのにほとんど見てなかった。
なんでだろうと見てみると、LINEの通知が何故かoffになっていて、不在着信をしてる時は電源が切れていたのだ。
やばいやばい、絶対怒ってるよね。
てか、母ちゃんにも来てたのに返してなかったのかな?
俺は急いで母ちゃんの元へ駆け寄る。
「母ちゃん!舞衣から……ってうお!?」
リビングに戻ると母ちゃんがシャワーから出てタオル一枚になっていた。タオルで体を巻いて洗濯したばかりの下着を手に取っている。
しまった、なんというタイミングなんだろう。
「直輝〜、思春期だからって母ちゃんの裸を見るのは……。」
「今そんなこと言ってる場合じゃないんだって!」
「え、どうしたの。」
そうだ、それどころじゃない。
舞衣からの連絡だ。
「舞衣から連絡来てなかった!?電源切れてて通知に気づかなかったから怒ってるんだよ。」
「えー、携帯……?」
母ちゃんは脱いだ服や荷物を漁ったが出てこない。
「んー……あ!」
すると、母ちゃんはトイレに行って戻ってくるとスマホを手に取っていた。
「旅行前からスマホ置いてきてた。タブレットは持ってたのに……。」
「ケータイを携帯しなさいよお!」
「あはは……ってか、通知がこっちも10件来てた。」
「いや、やばいやんけ!」
おかしいな……母ちゃんも32だから現代人の中心のようなものなのに妙に機械音痴なのだからこちらも焦ってしまう。
「こっちからなんか言っとく?」
「いや、いい!こっちから電話かける!」
しかし、電話をかけようとした瞬間舞衣から電話がかかってきた。
「もしもし!?舞衣!すまんかった、旅行中にスマホの電源切れてたみたいで!」
「……。」
「いや、今気づいて電話かけたんだ。心配かけたよな。」
「……。」
すると、突然ピンポーンとインターホンが鳴る。
なんだよ!こんな忙しい時に……?
しかし、何故か舞衣の電話からもピンポーンって音がした。
え?うちと同じチャイム音?
不審に思った俺は自分の家のドアを電話を繋いだまま開けてしまった。
「直輝くん……みーいーつーけーた……。」
「ぎゃああああ!?怖い……怖いって。」
1歩引くと左手の手首を掴まれて逃げ場が無かった。
「あ……あら〜、舞衣ちゃん奇遇ね。」
「遥香さん、ご無沙汰してます!」
「母ちゃん、助けて!」
「少し、直輝くん借りてもいいですか?」
「ああ、いいわよ〜。ごめんなさいね、わたしもスマホ忘れたみたいで気付かなくて。」
「大丈夫ですよ。あ、少しお邪魔してもいいですか?」
「ご……ごゆっくり〜。」
目が笑ってない舞衣からは母ちゃんでも対処出来そうになかった。
そして、連絡を返さなかったことに対して申し訳なさそうにしている。
「そうだ!3人で話し合おう……いだだだ!?握力強いって!」
「お邪魔します。」
「……ごめん、直輝。」
去り際にほんのりと母ちゃんの謝罪を受けて俺は自室に連行されていた。
俺は自分の部屋で正座して舞衣は椅子に座っている。
一先ず俺は土下座で自分のおでこを床に擦り付けていた。
「……直輝くん。わたしは怒ってます。」
「いや、ほんと……ほんとすまん。」
「じゃあ……罰ゲーム受けてくれたら許してあげます。」
罰ゲーム?なんだろう。
まあ、理由はちゃんとしてるし如何せん俺は誠実だ。
たまたまだと言うのは本人にも伝わっているみたいだし。
「罰ゲーム?……ジン〇ウガ討伐とか?」
「いや!直輝くん、それは普通のゲームだよ!」
しまった、変に間違えてしまった。
舞衣はもう〜と言いながら腕を組んでいる。
「チューしてくれたら許してあげます!」
「……へ?」
チューって何?キス?接吻?
「あはは……ちょ……ちょっと恥ずかしいな。刺激が強いというかなんというか。」
「な……直輝くん?……私たち付き合ってるからそういう事してもいいんだよ?」
「あ、たしかに。」
そうだ、本来俺達は付き合っている。
男女がキスの1つや2つ位するのは当たり前なのだ。
「もちろん、それ以上の事をしてもいいんだけど。」
「へ?」
「ああ、いや……なんでもない!じゃあ……チューしてよ。」
俺は手をプルプル震わせながら舞衣と目を合わせる。
「ん……。」
彼女は目を閉じて今や今やとキスをされるのを待っている。
俺は意を決して舞衣の肩をつかみ、キスをする。
唇が重なり合う。
温かい。彼女の吐息がこちらにあたり他人との触れ合いを感じる。
1回合わせ……また1回。
繰り返す度に口を合わせる時間が長くなる。
「ん……んぅ。」
何度もキスをすると、彼女は少しずつ口を開けるり
俺は緊張して何をすればいいのか分からないけど、彼女が舌をこちらの口にねじ込んでくるのだ。
キスは初めてじゃないけど……これほど入り込んだキスをするのは初めてで体が火照るような感覚があった。
キスは加速して、彼女の舌を合わせ愛を確かめあっていた。
「……直輝くん、好き。」
「俺も……好きだよ。」
普段ドライに接しているけど、僕は彼女のことが好きなんだと再確認する。
体は密着して激しくなっていた。
いかん、こっちも吐息が熱くなって彼女をより求めてる感覚がある。
行き先のない車を発車させるような疾走感と不安が共存した感情だった。
しかし、それは突如終わりを迎える。
ガチャン。
「ごめんね〜舞衣ちゃん……お詫びにスイカでも……。」
ノックを忘れていた母ちゃんは息子と彼女の愛のやり取りを目の当たりにしてしまう。
手には皿の上に切ってあるスイカが乗せてあった。
「あ、お取り込み中だった。」
「「ぎゃああああ!!!」」
東京の住宅街の中俺と舞衣の悲鳴が夜風に紛れて響く。
こうして、俺達の夏の最終章は幕を開けた。




