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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第10章 俺の後輩は死にたがり
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俺の後輩は死にたがり 15話

※100日チャレンジ36日目

ガタンゴトン……


電車を北へ走らせて南信から中信に差し掛かる頃、広大な川と平野の地域から山と山からなる谷のような景色になり、若干日陰が多くなり涼しさを感じる。


俺達は今辰野という地域を越え、もうすこしで岡谷に到着することになる。


そこからは乗り換えで諏訪まで行けば俺達の旅はいよいよ終わりを迎えることになる。


「せんぱーい。」


このフェイスカバーの変態こと御坂は足を組んでプラプラと動かしながらスマホをいじっていた。


御坂は好奇心は高いけど飽きやすい性格なのでこの自然の景色も飽きてきたのだろう。


「なんだ、御坂。」

「もうこの旅は諏訪湖をみたら終わりなんですか?」

「ああ、そりゃあお前……このわざわざ北に行くルートは帰り道のエンタメのようなものだからな。」

「調べたんですけど……この辺りも中々面白いもののパレードじゃないですか。」


どうしたんだろう、満足行かないのかな。

ヘブンズ園原とか、駒ヶ根の光善寺とか……なかなか詰め込んだ旅立ったので俺はヘトヘトなんだけど。


「例えばどんなのがあるんだ?」

「んー、そうですね!例えば長野の善光寺とか!」

「今から行くと2時間はかかるな。」

「ぐぬぬ……上高地!黒部ダム!」

「いや、車じゃないときついって。」

「キーっ!!白馬!スキー場!」

「今は夏だぞー。」


すると御坂は立ち上がってしまった。


「先輩!なんでそんな事言うんですか!」

「いやいや!現実的にも一日かけて遊ぶ観光地ばっかだからだよ!いつか連れてってやるから、な!?」


どうやらもっと色んな所に行きたかったらしい。

現実的に難しいけど、本人なりに沢山調べてくれていたのだ、そこは労ってやらねば。


「いや、ありがとうな。ここまで調べてくれて……次は中信を一緒に行こう!こっちも色々考えておくから。」

「……本当ですか?」

「ああ、神に誓って。」

「ならいいです。」


すると、御坂はまた座り出す。

そして、また山肌はどんどん狭くなると思うと岡谷駅はもう少しだった。


「あーあ……夏ももう終わりですね。」

「終わりだな。」

「私、実は夏ってあんまり好きじゃないんです。」

「なんで……って聞くまでもないか。」

「だって、暑いし汗かくんですよ。セミだってうるさいし。」

「てっきり日光が指す時間が長いからだと思った。」

「いや、アルビノじゃなくても夏は苦手だったと思います。」


そうか、御坂は夏が苦手なのか。

俺は逆に好きだから少し寂しく感じる。


「でも、先輩と一緒にいたら今年の夏は本当にたのしかったです!知らない世界ばかりでしたもん!」

「そりゃどーも。」

「先輩、こんな私を楽しませてくれて……気を使ってくれて本当にありがとうございます。至らぬ点があまりにも多い私ですが、迷惑かけてないですか?」


御坂はフェイスカバー越しに不安そうに上目遣いになる。

まるで不安な子猫のような、でもいまはフェイスカバーの変態なので特にトキメキはない。


「超迷惑だよ、馬鹿野郎。」

「ちょ!?先輩、お世辞でもそこは迷惑じゃないよとかいうシーンじゃないですか?」

「すまん、忖度ができないもんで。」

「……想像以上に私手がかかりますか?」


御坂は少しショックを受けていた。

まあ、そりゃあそうである。今の受け答えは冷淡そのものだったからな。


「でもな、だからこそ一緒にいるのが楽しいんだよ。これからも沢山迷惑かけてくれ、いくらでもフォローするから。」

「……先輩!」


すると御坂はフェイスカバーを取って俺を強く抱き締めた。

いだだだだ!御坂デカいし骨格はしっかりしてるから結構痛い。


「もー!先輩は……落としてから上げる天才ですね!惚れ直しちゃいましたよ。」

「だー!もう、くっつくな!公衆の面前だぞ!」

「……私、先輩の子どもなら産める覚悟があるかもしれないです。」

「やめろ!この物語R18にしてないから慎め!」


そんなこんなでじゃれついていたら岡谷駅に着いてしまった。

俺達は下車をしてこれから乗り換えをする。


……?

そんな時にひとつの違和感を感じる。


妙に人が多い気がする。

長野県は駅に10人もいないのが普通だったのに、渋谷並みの人数がいるのだ。


しかも、みんな上諏訪駅の方向を目指しているみたいである。

もう17時だと言うのに……一体何があるんだろう?


「なあ、御坂?賑やかだと思わんか?」

「え、先輩知らないんですか?今日は8/15なので諏訪花火の日ですよ。狙ってたんじゃないんですか?」


なにーーーーー!?

え、まじ!?それは完全に想定外だった。

諏訪花火……日本有数の大規模な花火大会で東京の人間が大量に足を運ぶほど評判の花火である。

諏訪湖の湖面から打ち上がる花火はより暗く、より美しく見えるのだそうな。


「え、まさか先輩……知らないで今日のこの場所をチョイスしたんですか?」

「な……ナンノコトデショウ?」

「先輩、目を見て言ってください。そんなに目をそらすとチューしますよ。」

「ごめん、全くの偶然でした!」


いや、まさか夜景を見に行ったら帰り道に花火大会あるなんて思わないじゃん!こちとら夏休みの最後の思い出の予定だったのに。


すると、御坂は腕を組んで俺を引っ張った。

「先輩……よかったら、私と花火……見に行きませんか?」


御坂はフェイスカバーを外し、オネダリの目でこちらを見ている。

ああ、くそう可愛いな。



「わかった、人が多いからはぐれるなよ。」

「ありがとうございます!」


時刻は17時を過ぎようとしていた。

俺達は上諏訪駅を降りて道を歩くと歩行者天国のお祭り状態だった。


「きゃー!先輩、祭り!祭りですよ!」


御坂は興奮のあまり駆け出して言った。

あまり前も見えてないので危険である。


「おい……前向いて……。」


すると、御坂は青年とぶつかってしまい尻もちを着いてしまった。


「ほら、言わんこっちゃねえ。」


俺は青年と御坂の元に駆け寄った。


「すんません、俺のつれが迷惑を……。」


その青年は162位の小柄な青年で、少し癖のある髪と眠そうなクマをつけていた。

というか……とてもよく知る人物だった。


「龍?」

「え、なおっち?」


目の前にいた青年は……天野直輝、クラスメイトで親友の彼が何故かこの場にいた。


「え?知り合いですか?」


祭りの賑わいと、人々の喧騒の中……ほんのりとひぐらしが鳴いていた。

これから、何かが起こることを示唆するように。

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